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第9回
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ソウルに留学や駐在経験のある方たちに聞いてみると、ほとんどが「地方への旅」に出る機会がなかったとおっしゃいます。「せっかく韓国にいたのに、残念なことをした」と後になって思うのですが、私も「ご多分にもれず」です。遊びにいっているわけでなく、勉強や仕事のために行っているのですから案外皆そんなもののようです。
ワールドカップが終わると、私はようやく自分の視点に立ち返り本格的に地方巡りをはじめることにしました。さてどこから始めたものかと考えたとき、「州巡り」を思いたったのです。
韓国の行政区域「○○道」という名称は、その地域の主立った都市名から由来しています。 例えば、
忠清道 (チュンチョンド)は忠州(チュンジュ)と清州(チョンジュ)
全羅道 (チョルラド)は全州(チョンジュ)と羅州(ナジュ)
※ リエゾンの為に「チョルラ」という発音になる
慶尚道 (キョンサンド)は慶州(キョンジュ)と尚州(サンジュ)
江原道 (カンウォンド)は江陵(カンヌン)と原州(ウォンジュ)
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つまりこれら主に「州」の付く都市は昔ながらの都でしたので、必ずや歴史や名所旧跡があると踏んで、まずこれらの都市とその周辺を制覇してみることにしました。更にルート上に温泉などがあればできるだけそこに宿を取るようにしました。おかげで韓国にはさまざまな温泉や面白いお風呂があることを発見しました。
「気まま旅」とはいうものの、「どうせなら皆さんにも紹介できる所を探したい」というのが、もう私の「習性」のようになっているのです。
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「州」を巡りつくした後は、いわゆる「名刹」を目指しました。韓国を代表するお寺とその周辺を探訪したのです。韓国のお寺は日本のお寺と違って山中にあり、お寺を巡るということはほとんど「登山する」という感覚なのです。
またある時は李舜臣(イ スンシン)将軍という豊臣秀吉軍と戦って武勲をたてた名将にスポットを当て、戦場やゆかりの地などを巡ってみたりもしました。
韓半島の南海岸沿いが激戦地となったところでありますが、このあたりは実に風光明媚です。
こんなふうに韓国の田舎を巡り始めると、会う人ごとに印象的だった旅の話しを聞いたり、機内誌に取り上げられているような地方都市の記事が目に付くようになりました。
また長距離バスに乗るたびに運転手さんにお勧めのポイントやルートなどを尋ねるのが習慣になったのです。バスの運転手さんは本当に親切。これまでに随分いろいろなことで助けていただきま した。
地方巡りをするときは、まずはソウルや釜山のホテルに一泊。翌日持参のリュックに必要最小限の荷物を詰め、スーツケースをホテルに預けて二泊から三泊放浪して戻ってくるということを繰り返していきました。
旅に出る前には夜ごと地図を睨み、どこをどう回ろうかと思いを馳せるのが常。
そんなとき、とても参考になったのが韓国観光公社から出ている「韓国 ソウルマップ」でした。 この地図には韓国全土の地図に鉄道路線や国道・高速道路は勿論のこと、名刹(有名なお寺)、○○塚、古墳、楼閣などの名所旧跡、また民族村、博物館、洞窟、温泉などの観光スポットがさりげなく記載されています。これを穴のあくほど眺めていると、どこで泊まって、どこに寄り道するかという旅の行程が見えてくるのです。
この地図によって私は是非皆さんにも紹介したい「穴場」をいくつ見つけたかわかりません。
正直に言えば、このような無料配布の地図など当てにしていなかったのですが、実際に歩いてみて、その概念が一変しました。
「これを編集した方はスゴイ!!」と。
地図には始終チェックしながらマークを付けたり、メモを書き込んだりしました。後になってみるとその走り書きの一つ一つがその時の旅をまざまざと思い出させてくれる「痕跡」になっていて想い出の品になっています。
ところで、このような旅を続けていると次第に「身繕い」や「荷物を少なくまとめるコツ」にも長けてゆきました。
ここでちょっと私の「旅のいでたち」をご紹介いたします。
<ちなみにこの写真は慶尚道の直指寺(チクチサ)を丁度紅葉の素晴らしい11月に訪れたときの旅姿です>
まず、肝心なのは荷物を軽くすることです。荷物が重いと旅を楽しむ気力もなくなります。その為には余分なものを持ち歩かないことが第一です。
服装は気温の変化にすぐ対応できるよう、脱ぎ着のしやすい「前あき」のものを重ね着するのが良いようです。11月ですと冷え込むこともあるので、リュックのなかにはニットのベストが一枚入っています。
基本は「着た切り雀」。二、三日着替えなかったからといってどうということはありません。せいぜいインナーのTシャツを余分に持って行くくらいに留めましょう。最悪必要が生じれば旅先でいくらでも買えるのですから。
靴下などは「捨てる寸前」のようなものを持っていって、はき捨てにするという手もあります。
リュックはそれ自体が軽量で、たたむと小さくなるようなものがいいですね。
「手袋」は寒い時期でなくても、持っていると安心です。防寒の為にはもちろんのこと、山道を歩くときなど手袋をはめていると躊躇無く樹木や手すりにつかまることができますし、転んだりしても怪我をしなくてすみます。私は春や秋にも薄手のものを用意します。
帽子も必帯です。夏の陽射しはもちろんのこと、冬でも直射日光を遮れると楽です。防寒対策としても頭が暖かいことで随分と寒さがしのげます。
こういう小物は脱いでいる時に荷物になったり、置き忘れたりすることが多いので、私は襟と帽子のツバを留めておくクリップを利用して写真のようにリュックに留められるように工夫しています。(茶色く見えているがの帽子です)
ブローブホルダーも欠かせません。普通は女性がハンドバッグの持ち手のところに付けて使用するものですが、私はジーンズのベルト通しにつけていて、すぐに手袋を付けたり外したりできるようにしています。(ジャケットの右すそからチラリと見えているのが手袋)
このようにしておけば、山道を歩くときも両手を空けておけるので安全ですし快適です。
同じように携帯電話やカメラなど、取り出す機会の多い機器類はビニールのコイルクリップをつけてポケットの渕のところに留めておきます。こうするとポケットから滑り落ちても大したことにはなりませんし、紛失する心配もありません。
もう一つ、絶対に便利なのは首に掛けておけるボールペン(写真では胸元に赤いペンを下げています)、そして小型のメモ帳です。
旅に出ると急いでメモを取らねばならないことが多くあります。(例えばどこそこ駅何時何分発の○○号とか、ホテルの電話番号とかね)そんなとき決まってペンが見つからなくて慌ててしまうのですが、こうして首からかけておけばいつでもサッとメモをとることができます。メモは100円ショップで手頃なものがありますし、ペンさえあれば、それこそ地図に書き込んだりもします。
持っていると便利なものの一つに「手拭い」またはインド綿などの薄手の「綿スカーフ」があります。寒いときは首にまいたり、手拭きや風呂敷のかわりにもなります。寝る前に洗濯しておけば翌朝には渇いているのでいつも清潔です。なんといっても、枕カバーとかが「ちょっと不安」な宿に泊まってしまった時など、これが一枚あればへいちゃらです。
今回の記事をご覧になった方は私がこんな風にタフな旅をしていることを知ってビックリなさったのではないでしょうか。
けれどそれは韓国の皆さんも同じみたいです。
観光地でもないようなところを日本人女性が一人で歩いていたり、バスに乗ったり、食堂に入ったりするものですから皆さんとても不思議そうに私を見るのです。
旅行といえば、「親しい仲間同士でわいわいと」という韓国人にとって、「女性の一人旅」はまだまだ珍しいからです。
ですがこうして不案内な土地を一人で旅しているからこそ、「見えてくるものが沢山あった」のかもしれません。
もしも二人旅だったら「お互いに相談しながら適当にやるんだろう」と周辺の人も思ったことでしょう。けれど「外国人が一人で一体どうするのだろう」と、出会った人達が心配してくれ、親身になってくれたのです。
一人旅をしてこそ、いままで知らなかった「韓国人の人情味」に深く触れることができたと思っています。 |
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女優・エッセイスト
東京都出身。映画・テレビドラマなどで女優として活躍する一方、芸能界きっての韓国通として知られる。
テレビコメンテーターや日韓関連のイベントにも数多く出演、講演活動なども活発におこなっている。
韓国観光名誉広報大使、日韓交流おまつり2009実行委員も務め、著書に『ソウルマイハート』『ソウルの達人 最新版』(講談社)などがある。
韓国地方の魅力を紹介したDVD『Ryu・黒田福美が行く韓国四季の旅』も好評発売中。
09年は『ビバリーヒルズチワワ(吹き替え)』(Disney)、『ゼロの焦点』(東宝)に出演。
黒田福美さんのブログ http://ameblo.jp/kuroda-fukumi/
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