大田(テジョン)広域市は韓国の真ん中にある大都市。とはいうものの韓国の大動脈で首都ソウルと釜山を結ぶ京釜(キョンブ)線や韓国南西部の全羅道(チョルラド)を結ぶ湖南線の途中駅ということで外国の方々にはあまり馴染みがない都市かもしれません。
しかし、実は大田、知れば知るほど、大田の街にはまってしまう人が多いほど、魅力多いところとして有名です。大田の行く先々ではノスタルジックな気持ちにさせてくれる場所が多く、また科学技術の街としても有名な大田だけあって韓国の現在と未来が垣間見れる、そんな観光スポットもいっぱいです。
今回は過去と現在、そして未来の街・大田を舞台に、さまざまな時代へタイムスリップする旅に皆さんをご招待します。
大田広域市東区貞洞(チョンドン)にある京釜線(キョンブソン)大田駅はいまをさかのぼること114年前の1905年1月1日営業を開始した歴史ある駅です。
駅名の大田の由来ですが、もともと広々とした平地が続く原っぱという意味で、古の時代には大きな原っぱ・畑を意味する韓国語の固有語「ハンバッ(한밭)」と呼ばれており、それを近い意味の漢字表記にしたのが大田という名前のはじまりです。
2017年の鉄道年鑑によると、大田駅の乗降客数は、ソウル駅、東大邱(トンテグ)駅、釜山駅に続く4位となっており、まさに大田・忠清道(チュンチョンド)エリアの交通の要所となっている駅です。
現在はKTXをはじめソウル江南エリアの水西駅を起点とする高速鉄道SRT、 在来線のITX-セマウル(新しい村)号、ムグンファ(無窮花)号が大田駅に乗り入れており、京釜線の中間駅ということもあり、数多くの高速鉄道が停車する駅でもあります。
西大田(ソテジョン/ソデジョン)駅はKORAIL湖南線(ホナムソン)の最も北にある旅客駅で、1936年に営業を開始しました。
2004年4月1日からは韓国南西部の光州(クァンジュ)・木浦(モッポ/モクポ)地域を結ぶ高速鉄道・湖南高速鉄道(KTX湖南線)が営業を開始、駅舎もこれにあわせてガラス張りの駅舎にリモデリング、以来それまでに増してここ西大田駅は京釜線大田駅と並ぶ大田地域の玄関口としての機能を果たす駅となりました。
現在、KTXをはじめ在来線のセマウル号、ムグンファ号が西大田駅に乗り入れています。
西大田駅周辺にはコストコ大田店が駅のそばにあり、五柳市場(オリュシジャン)、五柳洞食い倒れ通り(먹거리골목)など多くの商業施設・商店街があります。
大田駅の最初の時間旅行の行先はカラッククス(カラクククス=うどん)のお店。
昔から大田駅といえばカラッククス、というほど大田の代名詞になっているグルメのひとつです。
大田駅のカラッククスが名物になったきっかけは、日本の植民地下にあった日帝強占期の時代、大田駅が、釜山方面へ流れる京釜本線(京釜線)と全羅道(チョルラド)方面へ向う湖南本線(湖南線)に分岐する交通の要所であったため。
1911年7月に大田駅から連山(ヨンサン)駅まで部分開通し後に木浦(モッポ)方面まで延びた湖南本線へ向う列車は、当時、京城駅(現在のソウル駅)を出発し、湖南本線へ向うため、この大田駅に一旦入線・停車し、スイッチバックをして湖南本線へ向わなければなりませんでした。進行方向を逆向きにするためには大田駅で機関車の付け替えが必要で、そのため湖南地方行きの列車は大田駅での停車時間が長くなりました(この他、京釜本線の鈍行列車が急行などの追い越しのため、大田駅に停車する時間が長かったこともあります)。
この停車時間を利用して湖南地方へ行く乗客がホームに降りて、温かいうどんを食べたことから、大田駅に来たら大田駅のカラッククスをすするというが定番になったのでした。
現在では大田駅の手前で京釜線と湖南線が分かれてしまい、また鉄道も高速化されたことから、昔のように列車の発車待ちで一度列車から降りてホームでカラッククスを食べる光景はなくなりましたが、現在でも大田駅の改札口を出た駅舎内1階出入口そばなどにカラッククスのお店があります。
韓国の伝統市場の本当の姿を知りたければここ、大田中央市場にゴー!
大田中央市場は大田駅広場から歩いておよそ5分の距離にあり、大田・忠清道を中心とした韓国の中部圏最大の伝統市場として有名です。
このエリア最大の市場(シジャン)だけあってさまざまなものが手に入る市場です。
中央市場には中央総合市場、中央商街市場、自由都売市場(卸売市場)、新中央市場、中央都売市場などさまざまな市場があり、いろんな市場を巡るだけでも楽しい場所です。
大田中央市場のグルメもまた大変充実しており、スンデ、ホットク、オムク(練り天・練りかまぼこ)、マンドゥ、キムパプ、温かいそうめんでお祝い事のときによく出されるチャンチククス、ヌルンジなどのお店が市場中にたくさんあります。
いま大田で一番ホットな場所といえばここ、大田青年球団。
地元・忠清南道(チュンチョンナムド)出身で、飲食チェーンなどを経営する傍ら、料理研究家・タレントとしても近年大活躍中のペク・ジョンウォン(白鍾元)さんが街中の小さな食堂を訪れ、専門家の目から指導し食堂の建て直しを図っていくドキュメンタリー風バラエティ番組『ペク・ジョンウォンの路地食堂』(SBS・2018年~)でこの大田青年球団が取り上げられ、一躍有名になりました。
青年球団は大田中央メガプラザにある若者たちが切り盛りするショッピングモールです。野球をテーマにしたスポーツパブ形態のモールで、食堂以外にも地元大田をホームグラウンドとする韓国のプロ野球球団ハンファイーグルスのグッズのお店やハンファイーグルス関連のフォトゾーンなどもあります。
『路地食堂』の番組を通じて、料理専門家のペク・ジョンウォンさんから叱咤激励されながら厳しいトレーニングを受け、このモールに出店する食堂のメニューがパワーアップ。
モンキーバーガーや、とろサーモン(鮭を韓国語でヨンオ/ヨノ)の刺身をご飯(同パプ)にのせて食べるとろサーモン丼・ヨンパプは行列に並んでも食べる価値ある一品です。
海老とズッキーニのように細長い韓国カボチャ・エホバクが入ったチヂミ・セウホバクジョンも絶品で、醸造学を本格的に学んだ店主自らが作る手作りマッコリと一緒に飲めば最高です。ちなみにこのチヂミは小麦粉の代わりに乾燥海老を粉にした海老粉を使っているため、つなぎのグルテンが入っていない分、小麦粉のような粘り気がありませんが、海老とエホバクの風味が素晴らしいハーモニーを醸し出すチヂミです。
最近ではテレビの露出が多くなり青年球団の人気が急上昇したために、営業終了時刻午後9時を待たずに当日準備した食材がなくなると店じまいせざるを得ない状態とのことなので、できるだけ早い時間帯に訪れるのが賢明なようです。
大田を訪問したらオススメした場所のひとつがここ、ハンバッ樹木園。
大きな野原を意味する大田の古名・ハンバッが付いたこのハンバッ樹木園は、大韓民国最大規模を誇る人工的に作り上げた樹木園で、自然環境の学習にもってこいの場所です。
ハンバッ樹木園はエキスポ市民広場を中心に、東園と西園に分かれています。東園には岩石園、水生植物園、床噴水、展望台などが、西園には松の森、柳の森、楢の森、潅木園などがあります。
近年、憩いの場や文化スペースまで完成し、年間90万人の人々が訪問する、ピクニックコースとしてもおすすめの樹木園です。
大田は官民学の研究機関や企業、大学などが集結する「科学の都市」として有名。そんな大田を訪れたら是非おすすめしたいのが国立中央科学館です。
国立中央科学館には創意ナレ館、クムアッティ体験館、天体館、磁気浮上列車体験館の入場料が必要な有料館4つがありますが、それ以外の施設はすべて無料で観覧することができます。
磁気浮上列車体験館ではリニアモーターカーの原理について詳しい解説や展示を観覧し、実際にリニアモーターカーに試乗することができます。
特に自然史館ダイノホールに展示されているトリケラトプスの骨格は模型ではなく実物の骨格展示となっています。6800万年前の白亜紀後期の地球で生きていた生命体の化石に出会うことができ大きな感動を感じます。
ちなみにこの科学館にある恐竜関連の展示物が本物かレプリカかを一目で見分ける方法があります。骨格標本を複雑な形で鉄骨などで支えていれば本物、自立してそのまま建っているものがレプリカです。
韓国北東部の江原道(カンウォンド)江陵(カンヌン)に草堂(チョダン)スンドゥブがあれば、大田にはこれです!平壌スムドゥブ。
現在の店主で三代目となる平壌平壌スムドゥブは地元の数多くの人がすすめる隠れた名店。
スムドゥブという言葉は現在北韓側にある黄海道(ファンヘド)の方言でスンドゥブ(純豆腐)のことを意味します。豆腐を作る過程で豆腐ににがりを入れますが、このことを「スムチュンダ」といい、そこから由来した名前となっています。
このお店のおすすめはスムドゥブに白いご飯が付いたセットで、白いおぼろ豆腐にお好みに応じて入れる醤油にトウガラシなどが入ったヤンニョムジャンの加減によって味わいが変わってきます。
キュウリの漬物・オイジ、白菜の浅漬け/即席和え・ペチュコッチョリ、カクトゥギ(カクテキ)などのおかずもシンプルながらも箸がすすむおいしさです。
知る人ぞ知る大田の街並みが一望できる隠れた名所といえばここ、大洞(テドン)ハヌル公園。
公園のある丘に上がると、北の方角に聳える鶏足山(ケジョクサン)の山々から南の方向にある宝文山(ポムンサン)まで大田の街を囲む大自然のパノラマが目の前に広がります。
昼夜問わず大田の素晴らしい風景を眺めることができることでも有名で、また公園のあちらこちらには魅力ある楽しいスポットもいっぱい。街の高台の傾斜地に数多くの家々が軒を連ねる、通称・タルトンネ(月の町)に住むカップルが愛をはぐくんだ「サランパウィ(愛の岩)」や、丘の広場にはこじんまりとした風車があり、ここをバックに写真を撮ればSNS映え間違えなし。近くには壁画村もあり、ハヌル公園を回った後に静かな雰囲気のカフェで一息つくのもおすすめです。
※ 上記の内容は2019年9 月現在の情報です。今後変更されることがありますのでお出かけ前に必ずご確認ください。