2021/09/10
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松田カノンさんプロフィール:
カルチャライター・翻訳家・ALL ABOUTガイド(https://allabout.co.jp/gm/gp/219/)。
2006年より雑誌・インターネット・放送などを通じ、韓国文化をはじめ、韓国観光情報を発信。ブログは『カノンの韓国地方便り。』(https://daegu.hateblo.jp)のほか『カノンのわくわくハングル(https://kanon758.hatenablog.com/)』がある。現在大邱を拠点に活動中。
谷城(コクソン)は自然豊かで静かな田舎町。全羅南道北東部にあり、平均高度が500メートルという、全羅南道の中でも最も高い場所に位置しています。郡の中央には蟾津江(ソムジンガン)が流れ、高い空、緑が広がる大地、澄んだ空気、都会では感じられない開放感を味わえるため、ゆったりとスロウな旅行を楽しみたい人々の間で人気があります。
現在は地名のコクソンに、「谷城」という漢字が当てはめられていますが、これまで何度も漢字表記が変わってきた珍しい場所でもあります。山と川が重なり、そびえる城のようにくねくねと連なっていることから、統一新羅時代には「曲城(コクソン)」と表現され、高麗時代には道が険しいあまり、商人らが泣きながら通ったという逸話を元に 「哭聲(哭声/コクソン)」に。その後、泣き声を意味する 「哭聲」は、あまり良い意味ではないということで、「穀城(コクソン)」に変わるも、豊穣の地と勘違いされ租税を多く課されるされるようになったため、現在の「谷城(コクソン)」に落ち着いたと言われています。

谷城で一番人気がある観光スポットが、旧谷城駅に隣接する蟾津江(ソムジンガン)汽車村です。 旧谷城駅は、1933年に全羅線の普通駅として建設されましたが、1999年の全羅線移転に伴い廃駅となりました。谷城郡は、廃駅と廃線を利用して蒸気機関車乗車体験ができる公園を造成しましたが、それが今日ご紹介する汽車村です。
旧谷城駅は昔ながらの木造の駅舎。2004年に登録文化財第122号に指定された近代文化遺産であり、実は映画『ブラザーフッド』にも登場している映画撮影スポットでもあります。撮影に使用された機関車のほか、駅舎内には実際に昔使われていた鉄道信号機などの展示もあります。
汽車村の広い敷地の中にはレールバイク、生態博物館、餌やり体験ができる動物農場、観覧車やバイキングなどがある小規模遊園地ドリームランドなど、様々な施設があります。その中で最も人気があるのがSL型ディーゼル機関車の乗車体験です。



出発前には、昔ながらの木造駅舎と蒸気機関車をバックに写真撮影をお忘れなく。 長年の走行を経て老朽化した汽車は、2020年にニュートロスタイルにリニューアルされたばかり。外観は6.25韓国戦争当時使用されていたミカ3型129号の外観を再現しており、内部も昔懐かしい雰囲気が漂っています。



席に着いたらいよいよ出発。汽車村がある旧谷城駅から、柯亭(カジョン)駅までの約10キロ区間を、時速30キロでゆっくりと往復する約1時間の旅(停車時間含む) です。シュッシュッという蒸気の音と、ガタンガタン走る汽車らしい音をBGMに、車窓の風景を楽しんでください。線路に並ぶように国道17号と 蟾津江が並んで伸びている様子も見ものです。深い緑の山々にのどかな田園風景が望め、眺めていて飽きません。途中なんと車内販売もやってきます! 教練服や昔の学生服などに身を包んだ販売員が、サイダーやゆで卵、駄菓子類でいっぱいのカートを押しながら通路を往復します。車内は和気あいあいとした雰囲気に。そんな様子を眺めていると、束の間の旅ではなく、本当にどこか遠くへ行くかのような気分にさせられます。
※車内での飲食は現在不可のため、車内販売はパフォーマンスのみ。



約25分ほど走行すると 谷城郡とKORAILが観光用に作った柯亭(カジョン)駅で一時停車します。下車して約15分間、蟾津江吊橋を渡ったり、近くの売店で一休みしたり、暫し自然に癒されたら、また汽車に乗車。同じ道を引き返し、汽車村へ帰ります。短距離の走行ですが、ゆったりと流れる時間に身を任せる、ヒーリングの時間がここにあります。


さて、汽車マウルでもう一つとても有名な場所が、40,000平方メートル規模のバラ園です。世界の美しい品種を収集し、5月~11月の間になんと1004種ものバラを鑑賞できるのです。なるほど、散策していると、色も形も大きさも、様々なバラが咲きほこっています!バラ園の中には、噴水や迷路、池などがあり、どこも綺麗に飾られているので、のんびりと歩きながら美しい景観を楽しめます。毎年5~6月には世界バラ祭りも開催されるので、その時期にあわせて訪れるのもよさそうです。
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汽車は1日5回決まった時間に運行しているので、乗車までの待機時間を利用して、旧谷城駅付近を少し歩いてみましょう! 小規模ではありますが映画のセット場と、80年代の雰囲気を再現した路地裏があります。映画セット場は映画『アイスケーキ』撮影のために建設されたもので、60年代の風景を再現しています。当時の学校、写真館、映画館、銭湯などの前で記念撮影してはいかがでしょう。

谷城で撮影されたドラマや映画は数多くあり、セット場向かいの家屋の塀に紹介パネルがあります。
日本の俳優國村隼さんが出演したことでも知られる韓国映画『哭聲(コクソン)』も、まさに谷城で撮影された映画。この映画は、冒頭で紹介した地名の由来のように、泣き喚くという意味の哭聲(コクソン) と、地名谷城(コクソン)をひっかけたもの。撮影地となった建物の多くが、谷城のあちこちに今もそのまま残っています。


「あの時、あの時代の思い出遊び1988」というテーマで、道路や塀に子供たちが遊ぶ様子など、80年代の風景が描かれた路地裏は、角を曲がるたびに楽しい世界が広がっています。表通りからはさほど目立たないので、気づかず通りすぎてしまう人も……。映画セット場道向こうに壁画が見えたら、そこを目印に路地裏を進んでください。



汽車乗車前、乗車後の腹ごしらえは、映画セット場から道を隔ててすぐの場所にある韓国式素麺の店で!お店でだしをとったスープと、こしのある自家製麺が自慢の店。一番人気は、ごく細麺のちゅるちゅるした食感と、コクのあるスープが美味しいセンミョングクス(生麺を使った韓国式素麺)。小さな子供にも人気の看板メニューです。
夏だけの限定メニューですが、大根の葉がたっぷり入ったヨルムキムチグクスも美味。冷たい野菜とスープがさっぱりとしていて、しばし暑さを忘れます。麺以外のメニューもいくつかありますが、おすすめはパジョンとマッコリ! 海鮮と野菜入りのパジョンはカリカリに焼けていて、特製ソースをつけるとさらに美味しさアップ。パジョンに合うのはやっぱりドンドン酒。汽車マウルのラベル付きドンドン酒は、谷城で製造されているここでしか飲めないもの。爽やかだけれどパンチのある味わいに満足です。
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最後に汽車村すぐ近くにある、韓国でもまだほとんど知られていない隠れたお楽しみスポットをご紹介します! その名も「6070浪漫映画路」。現在谷城郡が地域活性化の為に開発中の観光者向けストリートで、 谷城駅から徒歩約10分、汽車村の中心部バラ園からは徒歩約20分の位置にあります。通りの中央部には、谷城で撮影された映画の出演俳優たちの名前と、名台詞が刻まれた銅板が埋め込まれた広場があります。誰の名前があるかな……と見てみると、 映画『哭聲 (コクソン)』にも出演しているファン・ジョンミン、『ブラザーフッド』のウォン・ビン、チャン・ドンゴン、『アイスケーキ』のパク・ジビンなどを発見。ハンドプリンティングではありませんが、名台詞入りなので是非撮影しておきたいスポットです!
この通りは、「浪漫工房通り」とも呼ばれており、 陶磁器、木工品販売及び作業体験、地域特産物販売店などが並んでいます。通り自体はまだ造成途中のため店舗も少なくまだ静かな印象ですが、今後少しづつその規模が拡大してくようで、あちこちで建物の改築作業などが行われています。あと数年たつと、汽車マウルに続く観光地に成長しているかもしれません。
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※本コラムは執筆者の個人的見解であり、弊社・韓国観光公社の公式見解を示すものではありません。
※上記の内容は2021年9月現在の情報です。今後変更されることがありますのでお出かけ前に必ずご確認ください