2021/12/02
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鎮安には壮快な風景を誇る馬耳山がそびえ立っている。馬の耳に似た雌馬耳峰(陰)と雄馬耳峰(陽)からなる馬耳山の麓に、紅蔘を用いて陰陽五行を具現した鎮安紅蔘スパがある。
全羅北道鎮安地方は、昔から高麗人蔘の栽培地として有名だった。紅蔘の原料となる高麗人蔘は、種蒔きから収穫に至るまでの栽培の全期間にわたり細やかな管理が必要な植物である。一般の作物とは異なり、栽培するのが難しく、土壌や地形によって生産量が違ってくる。鎮安郡は標高300mを超える高原盆地で、一日の気温の差が大きく、他の地域よりも高麗人蔘の生育期間が60日ほど長い。十分に育った高麗人蔘は、サポニンの含有量が高く、組織がしっかりしていて固有の香りをより長く閉じ込める。この品質の良い高麗人蔘で作った紅蔘の優れた薬効を体験できるのが、鎮安紅蔘スパだ。スパでは、鎮安郡の貴重な紅蔘を活用した、品格ある韓方セラピープログラムを用意している。スパは大きく「太極ゾーン」、陰陽五行を成す「テラピーゾーン」、馬耳山の風光を鑑賞しつつ露天風呂を楽しむ「アクアゾーン」に分かれている。中でも一番人気のプログラムは、太極ゾーンの「紅蔘バブルセンステラピー」である。なんと、50人が使えるという円形の温熱台があり、好きな場所に座ると多彩なカラーの照明が次々と輝き始める。程なく、ぶくぶくと音を立てながら泡がたちはじめ、体を覆うほどいっぱいになる。鎮安紅蔘の香りの高密度の泡で体をマッサージするが、こうすることで、皮膚の老廃物や有害物質が排出され、新陳代謝が促進され血行が良くなるという説明が流れる。この効果も魅力的だが、何より面白い。10分ほどバブルバスを楽しんだ後は、天井から降り注ぐレインシャワーで泡を落としていく。さっぱりと心地よい気分になれる。ストレスも吹き飛ぶような体験ができる。
陰陽プログラムには、室内スパとウィンドテラピがある。室内スパは、ウォータージェット、エアバブル、ネックシャワー、マッサージリングなど、水の流れを満喫しつつ陽の気運を補強するというバデプールと、胎児が羊水の中にいるような感じを再現し、陰の気運を補給できる「サウンド・フローティング」とに分けられる。サウンド・フローティングでは、暗くて静かなプールに入り、首と足に浮き輪をつけ、水面に仰向けに浮かび遊泳する。耳を完全に水に浸けたほうが、水の中からより鮮明に美しいクラッシクの旋律が聞こえてくる。超現実的であり、夢幻的ななんともいえない安らぎの時間である。陰陽プログラムの最後のコースはウィンドテラピーで、風を使って体を乾かすが、温かい風と冷たい風が交互に吹き、なんとも心地良い。水、金、木、火、土の象徴に合わせて考えられた五行プログラムもまた素晴らしい。「水」のアロマテラピーは、紅蔘エキスを飲んで個別の浴槽で半身浴を楽しむことができる。「木」のハーブテラピーでは、ヒノキののこくずやクソニンジンを敷き詰めた四角い木の樽の中に横になり、心身を癒すプログラムで、つい眠ってしまいそうな心地良いプログラムである。「金」の気運を補うストーンテラピーでは、温かい砂利の上に横になり、休息する。「火」のハーモニーテラピーは、顔に紅蔘の泥パックをして、石で作られた温熱シートに座り、湿式サウナを楽しむ。陰陽五行テラピーが終わったら、鎮安紅蔘スパの目玉であるアクアゾーンに移動する。屋上に設けられているアクアゾーンには、ウォーターマッサージができる3つのプールがある。青空に浮かぶ綿雲と、その下に聳える馬の耳に似た馬耳山を眺めながら露天風呂を楽しむ趣は体験してみないとわからない。韓方治癒の健やかなエネルギーを感じ、自然の景色が目を楽しませてくれる、五感で満足できるひとときが過ごせるはずだ。新型コロナウイルス感染症の影響で、残念ながら2020年12月から鎮安紅蔘スパは営業を休止している。変動などがあれば、ホームページのお知らせでチェックできる。
鎮安紅蔘スパで真のウェルネスを体験して癒しのひとときを過ごしたなら、一晩ゆっくり休んで余裕をもう少し楽しんでもいいはず。スパに併設して、宿泊施設の紅蔘ヴィルとホステルも営業している。馬耳山を正面に望む3階建ての建物に、44の客室がある。2人で泊まれるワンルームタイプの客室から、12人が泊まれる団体部屋まで様々なタイプが用意されている。