2021/12/02
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通りの入口から、様々な生薬の香りが漂ってくる。珍しい生薬を見物するのも楽しい。祭基洞ソウル薬令市は、韓国で取引される生薬の70%を扱っている薬材専門市場である。迷路のような路地の中に、立派な瓦屋が建っている。様々な展示を見たり体験ができるソウル韓方振興センターだ。
ソウル薬令市は、1960 年代に清凉里駅を中心に形成されはじめた。中央線の鉄道が通る内 陸の山岳地域で生産される生薬を運んでくるのに有利だったからだ。今でも韓方医院、韓方 薬局、生薬商など専門のお店 1000 店以上が集まっている、韓国最大の韓方関連特区になっ ている。ソウル韓方振興センターは、この巨大で特色ある市場のランドマーク的役割を果たしている。
ソウル韓方振興センターは、朝鮮時代の普済院の伝統を受け継いでいる。普済院は、旅人に無料で宿泊を提供したり、身寄りのない病人を治療したりしていた救援機関である。これを受け 継いだソウル韓方振興センターも、敷居を低くして老若男女問わずリーズナブルに多彩な体験 ができる。コの字型の韓屋の形をした3階建ての建物は、優美で趣のある姿をしている。1階のロビーの一角には、映像体験室と伝統衣装体験室がある。伝統衣装体験は無料でできる。ギャラリーになっている小さなスペースでは、韓方に関する企画展が開かれている。ロビーからつながる廊下を進むと、韓方ビューティーショップと韓方広報ゾーンに出る。生薬、健康食品、化粧品など、多彩な商品を買うことができる。
2 階には、ソウル薬令市韓方医学博物館がある。人と自然の調和を追求する伝統韓方医学の歴史的な理解、生薬と処方をはじめ、ソウル薬令市の発展の過程と現在の位置づけを知ることができる。様々な生薬のサンプルや昔の薬湯器、『東医宝鑑』の筆写本など、様々な所蔵品を見学するのも楽しい。また、博物館の解説プログラムが無料で行われている。
2階のロビースペースには、韓方生活用品作りプログラムが行われる小さなテーブルがある。体質に合わせて生薬を配合し、オリジナルの塩作りができるなど、小さな体験クラスがシーズンごとに楽しめる。塩作りは、自分の体質と好みに合わせて韓方の生薬を選び、塩と混ぜて作るという簡単な体験だ。ここからテラスに通じるドアを開けて外に出ると、伝統韓屋の楼閣の下に足湯体験場がある。適度な温度のお湯に足を入れて瞑想に浸ることができる、美しい野外スペースだ。自分で作った韓方塩をバスソルトに使えば、もっと特別な足湯が楽しめる。ソウル市内に、こんな韓方をテーマに多彩な体験ができる空間があるとは、驚きである。韓方について学び 、直接体験もできるいい機会だ。様々な空間ごとに楽しみが満載で、一日じっくり見たい観光スポットである。
韓方医療体験ができる普済院は3階にある。同じ階には、薬膳料理体験館と多目的ホールがある。普済院は、専門の韓方医の案内にしたがって医療体験が行われる移動診療室(防疫措置に 伴い現在は休止中)と、健康チェウムソに分かれている。健康チェウムソでは、韓方シートパック、ヒーティング韓方ハンドパック、セルフハンド指圧、機械を使ったフットマッサージ、温熱マッサージマットが利用でき、ストレス診断もできる。広くて日当たりのいいスペースにあり、長い時間いても息苦しくない。薬膳料理体験館は、直接薬膳料理を作る体験ができるスペースだ。薬膳料理の研究家が体質に合った料理を推薦してくれ、韓方の生薬を使ったレシピを教えてくれる。最低4人以上のグループで実施される。多目的ホールは56席あり、様々な教育や会議が行われている。2時間単位で貸館を行っている。ソウル韓方振興センターがある韓国最大の生薬市場であるソウル薬令市を観て巡りたいなら、ソウル薬令市歴史ツアープログラム「薬理団通り一巡り」に参加してみよう。約70分かけてソウル薬令市一帯と旧城東駅跡など周辺の歴史スポットを探訪し、瓊玉 膏丸作りなどを体験できる。
ソウル韓方振興センターの中には、独立した別館の形の韓方カフェ「チャムダジョン」がある。韓屋の古き良き趣を生かしたインテリアが、くつろげる雰囲気を演出する。40人まで収容できる広いスペースで、蓮の葉定食、コンドゥレナムルご飯などの食事メニューと、十全大補茶、よもぎ茶、クコの実茶などの韓方茶を販売している。