2021/12/02
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標高518mの億仏山の下にぎっしりと伸びたヒノキの地、正南津ヒノキ森ウッドランドは、ふんわりと穏やかに旅行者を迎える。緑の木々と虫の音、ヒノキの森が放つフィトンチッドが、疲れた心身を癒してくれる。
正南津ヒノキ森ウッドランドに足を踏み入れる瞬間、都市とは一味違う空気が感じられる。空気に色があるとしたら、澄んだ緑ではないだろうか。新鮮で澄んだ空気を深く吸い込むと、全身が緑に染まるような気がする。フィトンチッドを放つヒノキが茂っている場所だから、こんな感覚を覚えるのも当然。森で元気をもらうような気がするのは、樹木が放つ揮発性物質のフィトンチッドのためだという。葉の広い樹木より針葉樹がより多くのフィトンチッドを放つのだが、中でも一番はヒノキだ。フィトンチッドは抗菌作用でも有名。新型コロナを完璧に予防する方法はないが、健康や免疫力を重視する時期にピッタリの旅先といえる。また、ストレスを減らしてアトピーなどの肌疾患の緩和にも役立つといわれている。
今から60年前、孫錫演先生は奇岩怪石の多い億仏山の麓にヒノキを植えて育てた。120haの大地が育てたヒノキはおよそ47万本。孫錫演先生は死去したものの、緑の森はいまだに多くの人々の慰めとなっている。正南津ヒノキ森ウッドランドは木材文化体験館、伝統韓屋、生態建築体験場、木工芸体験場、ヒノキ塩部屋(チムジルバン)など、多様な施設を整備している。よどみなく続く3.8kmのマレギルは、億仏山頂上に至る。木製パネルを敷いて老弱者でも歩きやすい道の上に立つと、ヒノキの葉が足の下にいっぱい。樹木が風に触れると世界はしばらく止まる。誰もいない青い海に独り漂っているように、静かで穏やかになる。それだけで十分。今年4月には散策路に花路を整備した。ヤブラン7万5000本とヒガンバナ9万7000本を植え、初夏から秋にかけては美しい花の群落を成す。ヤブランはユリ科の多年生植物で、5月から8月まで花開く紫のつぼみが美しい。ヒガンバナは、秋の山登りに強烈なロマンを足してくれるはずだ。
山林の癒し要素を活かした山林治癒プログラムも、年齢別に用意している。会社員には、健康をチェックしてから森中のレクリエーションで体を動かし、ヨガと瞑想をしながら心を落ち着かせる「ヒーリングランド山林治癒プログラム」がおすすめ。「活力ランド山林治癒プログラム」は、活力を出す気体操と森中での日光浴、アロマオイルマッサージなどで構成される。チョウセンカクレミノの茶を飲んでヒノキの森で足湯を楽しんでから、ヒノキののこくず道を素足で歩きながら免疫力を高める「回復ランド山林治癒プログラム」もある。ウッドランド施設の中で、最も高い場所にあるチムジルバンである「ヒノキ塩チムジルバン」では、デトックス効果が期待できる。ミネラルが豊富なきれいな天然塩を使い、洞窟のように仕立てた。洞窟の他にも塩のデトックス部屋、塩のマッサージ部屋、ヒノキの半身浴の部屋、黄土部屋など新陳代謝を促進し、老廃物を排出させる空間が満載である。ヒノキの酵素のこくずチムジルは、最も人気の高い体験でもある。ヒノキの酵素浴槽に入り、微生物を培養させたのこくずで体を覆い、酵素が発酵する熱でチムジルをするというやり方である。生きた生命体が活動することにより発散する熱、微生物に体を任せのこくずの中にいると、生命の力がそのまま伝わってくる。開いた毛穴から体に良い酵素が皮膚の中に浸透していく。15分のチムジルで、しっかり汗を流せば、体もすっきり生き返ったようである。生態建築体験場と塩部屋、展示館などの屋内施設はソーシャルディスタンス確保のために利用できない場合があるので、訪問に先立ちホームページで確認した方が良い。木材文化展示館は子供たちが好むような場所である。体験館では自分で木材の笛と昆虫の模型などが作られる。
正南津ヒノキ森ウッドランドは、しばらく留まるだけではもったいない場所。もう少し長く泊まりながらヒーリングを得て治癒プログラムに参加したいなら、森中の生態体験ペンションを訪問しよう。土や木など自然にやさしい材料を使って建てた宿がある。韓屋伝統室は、なかなか接することのできない伝統韓屋の粋がある場所で、内部は現代風に飾られている。ソーシャルディスタンス確保のため休館することがあるので、事前にお知らせを確認しよう。