2021/12/02
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国立長城スプチェウォン(森林浴場)では茂った木々が主役で、人間は脇役となる。目まぐるしい日常からしばらく離れて、元気に満ちた木々と共に自分を取り戻す時間を過ごしてみよう。
丁寧に育てた木々は時間の経過と共により鬱蒼とし、緑の生命力を自慢する。一本の樹木を育てることには、多くの時間と努力がかかる。水と太陽を適切に供給し、枝打ちをしたり病んだ樹木の世話をしなければならないこともある。そうやって根を下ろした木々は、やがて鬱蒼とした森を成す。それから森は、人々の安らぎを与え心身を`元気にしてくれる。国立長城スプチェウォンもそのような場所である。
「国立長城スプチェウォン」は、「山林教育センター」と「山林治癒センター」に分けて運営され、教育センターは方丈山に、治癒センターは祝霊山に位置している。「教育センター」では、生態探訪、関係づくり、工芸など、森の要素を取り入れた体験活動中心のプログラムを運営しており、「治癒センター」では、山林環境因子を通じて心とからだをリラックスさせエネルギーを得ることに焦点を当てている。治癒センターが位置している祝霊山のヒノキの森は、鷲岩イム•ジョングク先生が長きにわたり造成した大切な山林資産である。1956年から荒廃した祝霊山の私有地にヒノキと杉を植え始め、今に至っている。現在、森の広さは約240万m2で、250万株の樹木が育っている。韓国の建設交通部が選定した「韓国の美しい道100選」や、山林庁が選定した「22世紀のために保存すべき美しい森」に選ばれた。
国立長城スプチェウォンで欠かせないスポット、それが「スンヌリム(林)」道だ。その名前も特別といえる。公募を実施し国民投票で付けられた名前で、多くの人々が共感できることを願うスプチェウォンの希望が込められている。スンヌリム道は、スプチェウォン内の砂防ダムを経由して方丈山の麓に差し掛かり、空のデッキまでつながる。方丈山は智異山、無等山と並んで湖南地域を代表する山で、山勢が深いことで有名だ。方丈山という名前も、山が広く大きいため人間をかばってくれるという意味である。スプチェウォンを囲む環境もいろんな意味で自然の懐の深さを感じさせる。スンヌリム道は、20 分程度で歩ける延長 0.6km の散策路。春には青々と芽を出す 華やかさを、夏には緑が濃い樹木 の生き生きとした生命力を感じながら歩いていると、森の活力が全身で感じ取れる。デッキを敷くときも、すでに根を下ろしている樹木を切らずに整備した。一本一本の樹木を尊重することか ら、スプチェウォンの主役は樹木であることが実感できる。道 も広く整備しているが、それは老弱者はもちろん車いすやベビーカーも移動しやすいように配慮したものである。時間と真心で完成した深い森中の山林治癒センターまでのアクセスは、出発地点により異なるが多くの場合、鷲岩村の白蓮洞終点、公営駐車場をスタート点とする。ここを出発して上仙岩を 経由し森道を30分程度歩くと、山林治癒センターに到着する。ヒノキの森は、歩くだけでストレスが吹っ飛んでしまいそうだ。高濃度の酸素とフィトンチッドのほか、雨が降った時の地面の匂いとされるゲオスミン(geosmin)を放出し、心とからだがさわやかになるため、センターへ向かう道自体も山林治癒の一部になる。深い森の奥に入れば入るほど気持ちがすっきりし、固まったからだがほぐれる。治癒センターに入ると、鷲岩イム・ジョングク先生の業績を一目で見渡せる壁面の設置物が訪問客を迎える。事前に予約をした人は、ここからスタッフの案内に 従ってプログラムが体験でき る。健康増進センターでは血圧と体成分分析、心拍変異度をチェッ クし、ストレス指数や血管老 化度を教えてくれる。その結果から自分に合ったプログラムを選択して体験する。外部プログラムの場合、まずは室内でティーセラピーや安全教育を受けて実施することになる。お茶を飲みながら心を落ち着かせ、セミナー室で体験中に遭遇かもしれない虫や毒草、蛇などのリスクについての教育を受けてから外部に出る。森のあちこちすべての活動を止め、じっとして自然を眺めることができるよう、風浴場と座敷椅子、木製台などを設置した。