2023/11/03
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景福宮を中心に、東側が北村、西側が西村と呼ばれています。北村が高官顕職の大きな瓦屋根が並ぶエリアなら、景福宮西側の西村は、それに比べて素朴な文化を嗜んだ庶民の町でした。このような雰囲気は日帝強占期を経て独立後も続き、今でも西村一帯にはかつての庶民の文化を垣間見ることのできるスポットがあちこちに残っています。


本格的な庶民文化めぐりをするなら、花より団子、まずは腹ごしらえから。飲食店がずらりと並ぶ世宗村飲食文化通りに行ってみましょう。地下鉄3号線2番出口から20メートルほどのところに、「世宗村飲食文化通り」という看板とチョンサチョロン(青紗燭籠)が掛かった通りがあります。元々ここは「クムチョンギョ(禁川橋)市場」と呼ばれていましたが、2011年に鐘路区がこの地域一帯を「世宗村」と命名し、「世宗村飲食文化通り」になりました。実際ここは、世宗大王が生まれた町でもあります。世宗大王は、父のテジョン(太宗)がまだ王子だったとき、景福宮西側にあった私邸で生まれました。
世宗村飲食文化通りは、その名前とは違って王様や上流階級よりは庶民の文化が息づく通りです。禁川橋市場だった時代から数十年間続いてきた老舗や、若者が新しくオープンさせた人気スポットがそれぞれ個性的なグルメを打ち出していて、注目を集めています。おかげで、さびれていた商店街が元気を取り戻しました。今では、メイン通りだけでなく裏路地のあちこちにも店ができていて、好みに合わせて選ぶ楽しさがあります。


日帝強占期に創業したポアン旅館では、昔の庶民の住居文化を垣間見ることができます。1930年代に創業したとされるポアン旅館は、旅人の宿であり、文人たちのアジトでした。20代前半の若き詩人ソ・ジョンジュ(徐廷柱)がここに滞在しながら、キム・ドンニ(金東里)、オ・ジャンファン(呉章煥)、キム・ダルジン(金達鎮)らと共に同人誌『詩人部落』を発行したのが、ここポアン旅館でした。
80年以上庶民のための宿として営業していたポアン旅館は、現在ではかつての面影を残したまま、展示スペースに生まれ変わっています。入口の古い看板をはじめ、小さくて古びた部屋、きしむ階段、タイルが剥がれた共同風呂など、歳月の重みが感じられます。そんな空間で行われる展示は、独特の雰囲気を演出します。無料で1階と2階の展示を自由に観覧することができます。ブリッジで繋がっている隣の建物「ポアン1942」は、カフェ、書店、ゲストハウスなどのある複合文化スペースとなっています。


テオ書店は、1951年にオープンした古本屋です。本が貴重だった時代に、古本屋は庶民たちが読みたい本を安く買って読むことのできる文化空間でした。その後、60年以上町の本屋としてこの場所を守ってきたテオ書店は、かつての姿をそのまま残したカフェを併設する文化スペースとなっています。創業者のお爺さんが亡くなってからも、昔の思い出を残したいというお婆さんの強い意向によって現在まで店の一部が残っています。
古びた引き戸を開けて中に入ると、本がうず高く積まれている小さなカウンターがあります。四方の壁一面に並ぶ古本の間に、本屋の昔の姿が写った写真もあります。生活空間となっていた小さな部屋と居間、甕置き場のある小さな中庭も、昔の写真そのままの姿です。こうした風景が、一時流行ったレトロな感性と一致して、たくさんの人々が訪れました。テオ書店はIUのアルバムジャケットの撮影で使われたことがあり、また、BTSのリーダーRMが訪れたスポットとしても知られています。
テオ書店の向かいの通りの奥にある通仁韓薬局は、地元の人々に開かれている町の韓方薬局です。2人の専門韓方薬剤師が意気投合して始めた薬局で、数年で西村の名所になりました。今では町の人々が気軽に立ち寄って韓方茶を飲み、健康に関する相談をし、おしゃべりをしながらゆっくりくつろぐ場となっています。もちろん、西村を訪れた観光客も大歓迎です。
小さな前庭を通って店内に入ると、壁一面に並ぶ生薬が目に飛び込んできます。高麗人参、甘草、芍薬、当帰などのおなじみのものから、珍しいものまでずらりと並んでいます。カウンターを兼ねる茶室に腰かけて、双和茶や十全大補湯を頼めば、簡単な無料健康相談に乗ってもらえます。本格的なカウンセリングは、ここでアンケートに答えてから地下のカウンセリングルームで行われます。


通仁韓方薬局の処方の原則は、「簡易朴略」という言葉に要約できます。「処方は簡潔に、服用は易しく、値段は素朴に、手順は簡略で細やかに」という意味が込められているそうです。病院がなかった時代、韓国の人々の健康を担っていた町の韓方薬局の想いが込められています。
通仁市場は、西村で最も古い伝統市場で、庶民の文化を象徴するスポットです。週末になると、伝統市場の文化を楽しむために全国からやって来たお客さんで賑わいます。全国的に有名になったのは、「葉銭弁当」のおかげです。市場の2階にある「お弁当カフェ」で葉銭の束(10枚5,000ウォン)を買って、小さなトレイを持って市場を巡りながら葉銭で食べ物を買ったら、またお弁当カフェに戻ってきておいしくいただきます。葉銭数枚でトッポッキや天ぷらといった市場ならではのグルメを買えば、朝鮮と韓国の庶民の文化を一度に体験した気分になれます。
通仁市場の中には、有名なお店もたくさんあります。韓国を訪れたアメリカの国務長官も食べたという元祖チョンハルモニ油トッポッキ、変わらぬ味が自慢のソンマッキンパプ、一度味わったら他の焼き鳥は食べられなくなるというヒョジャドン・ダッコチの他にも、個性的な味が自慢のお店がたくさんあります。この他にも、思い出のものを扱うお店が並んでいるので、見ているだけでも時間があっという間に過ぎてしまいます。
アクセス情報
[地下鉄] ソウル地下鉄3号線キョンボックン駅2番出口から世宗村飲食文化通りまで徒歩1分
周辺の飲食店・カフェ
ヘジャングク・サラムドゥル:酔い覚ましスープ、豚の胃袋/ソウル特別市チョンノ区チャハムンロ50-1/+82-2-736-6088
ヒョジャベーカリー:アーモンドせんべい、洋菓子くるみタルト/ソウル特別市チョンノ区ピルンデロ54/+82-2-736-7629
ヨングァン・トンダク:昔ながらの丸鶏、砂肝のフライ/ソウル特別市チョンノ区ピルンデロ55-1/+82-2-723-8200
ソンカルグクス:手打ちカルグクス/ソウル特別市チョンノ区ピルンデロ55-3/+82-2-736-1560
ヨンファル:ジャージャー麺(ソース別盛り)、酢豚/ソウル特別市チョンノ区チャハムンロ7ギル65/+82-2-738-1218
元祖ジョンハルモニ・ギルムトッポッキ:コチュジャントッポッキ、カンジャントッポッキ/ソウル特別市チョンノ区チャハムンロ11ギル40/+82-2-735-7289
ヒョジャドン・ダッコチ:辛味鶏肉の串焼き、ワインチーズ焼き鳥/ソウル特別市チョンノ区チャハムンロ15ギル17/+82-10-6336-1490
ソンマッキンパプ:チーズキンパプ、ツナキンパプ/ソウル特別市チョンノ区チャハムンロ15ギル20/+82-2-722-8389
テチュンユウォンジ・イヌァンサン:カフェラテ、巨峰緑茶/ソウル特別市チョンノ区ピルンデロ46/+82-70-7807-5640
ma chance:カフェラテ、ストロベリーミルクティー/ソウル特別市チョンノ区チャハムンロ36/+82-2-737-8537
※上記の内容は2023年5月現在の情報です。今後変更されることがありますのでお出かけ前に必ずご確認ください。