2025/02/20
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カンジャンケジャンは、ワタリガニで作る代表的な料理の一つだ。ワタリガニの旬は、4~6月と10~11月。春はワタリガニが産卵前の摂餌活動を活発に行うため、卵(正確には卵巣)がぎっしり詰まった雌蟹が美味しい。冬を越すために身を太らせる時期の秋は雄蟹が旬と言われるが、雌蟹の美味しさも引けを取らない。雄蟹も雌蟹も、同程度の栄養分を蓄えるからだ。
ワタリガニの主な産地は、インチョン(仁川)をはじめ、チュンチョンナム(忠清南)道タンジン(唐津)、ソサン(瑞山)、テアン(泰安)、アンミョンド(安眠島)など、西海岸だ。中でも、インチョン(仁川)ヨンピョンド(延坪島)周辺の「ヨンピョン(延坪)漁場」は国内最大規模のワタリガニ産地として広く知られる。インチョン(仁川)総合魚市場(インチョン広域市チュン区ヨナンブドゥロ33ボンギル37)では、インチョン(仁川)とその周辺の海で獲れた新鮮で身の詰まったワタリガニを味わうことができる。
カンジャンケジャンは韓国人の間では「ご飯泥棒」とも呼ばれる。ご飯泥棒とは、ご飯と一緒に食べるとあっという間にご飯がなくなるほど美味しいという意味で、ご飯に合うおかずを指すときの慣用表現だ。
韓国で「ご飯泥棒」と呼ばれる代表的な食べ物には、テナガダコ炒め、プルゴギ、熟成キムチ、肉の煮付け、太刀魚の煮付けなどがある。中でも韓国人が考える最高のご飯泥棒は、何と言ってもカンジャンケジャンだ。新鮮なワタリガニにカンジャンベースで味を付けるカンジャンケジャンは、一見シンプル過ぎて特徴のない料理に思えるが、熱々のご飯と一緒に食べると、独特の塩味とコクのある旨味で、どんどんご飯がすすむ。
ケジャンは、昔から韓国人が好んで食べてきた。朝鮮後期の実学者、ユアム(流岩)ホン・マンソン(洪万選、1643~1715)先生が著した『山林経済』には、ケジャンの作り方が詳しく記載されている。ホン・マンソン(洪万選)先生は著書でケジャンの作り方をカンジャンで作る方法と、塩で作る方法に分けて紹介している。
カンジャンケジャンは一般的に知られているが、塩ケジャンはやや馴染みがないように感じられる。塩ケジャンは、塩の浸透圧により身の水分が抜けるため、カンジャンケジャンに比べて身がしっかりしていて歯ごたえのある食感が特徴的だ。現在は塩ケジャンを提供するお店がほとんどないが、地域によっては漁師が塩ケジャンを珍味として自ら作って食べることもある。
韓国の東海、西海、南海沿岸には、地域によって様々な種類のカニが生息している。東海にはズワイガニ、ベニズワイガニ、ケガニが、西海と南海にはワタリガニ、イシガニ(韓国語では「パカジ」、または「トルゲ」ともいう)、トゲクリガニが生息する。中でもワタリガニは、西海岸全域の特産品として扱われるほど多く獲れる。とくにインチョン(仁川)ヨンピョンド(延坪島)周辺で多く獲れ、韓国全体の収穫量の8%に達する。栄養が豊富で味に優れたワタリガニは、主にカンジャンケジャンの食材として使われる。
ワタリガニの旬は、4~6月と10~11月。春は産卵期を控え、精力的に摂食行動を行って栄養を蓄える時期で、秋は寒い冬を越すために自分の体を太らせる。一般的に春は雌蟹、秋は雄蟹が旬と言われている。だが、この一般常識は事実といくらか違う部分がある。たしかに春は、ワタリガニが産卵の前に活発な摂食行動を行うため、卵(正確には卵巣)がぎっしり詰まった雌蟹は味に優れている。越冬のために栄養を蓄える秋は雄蟹が旬と言われているが、実は雄蟹も雌蟹も栄養を蓄える量はほぼ同じなので、味の優劣を付けるのは難しい。
カンジャンケジャンを作るとき、何よりカンジャンが重要な要素となる。伝統的な製法で作られたカンジャンを使用することで、より美味しく、より深い味わいのカンジャンケジャンが作れる。伝統的な製法のカンジャンの作り方は次の通りだ。
まず、大豆でみそ玉麴を作り、そこからテンジャン(韓国味噌)を作り発酵させる。そして、発酵が終わったテンジャンからカンジャンを分離させる(これを韓国語では「チャンガルギ(醤分けという意味)」と呼ぶ)。ちなみにテンジャンとカンジャンは、長年熟成させることで味が深まる)。
こうして造ったカンジャンに、玉ねぎ、唐辛子、昆布、生姜などを入れて煮る(煮ると、それぞれの食材の味と香りがカンジャンに染み込む)。カンジャンの粗熱を取ってそこによく洗ったワタリガニを入れ、2日から4日間熟成させるとカンジャンケジャンの完成だ。
カンジャンケジャンを看板メニューにしている飲食店では、韓国の伝統製法のカンジャンや市販のカンジャンで作ったカンジャンケジャンを提供しているが、どんなカンジャンを使うかによってカンジャンケジャンの味と価格が大きく異なる。
カンジャンケジャンの食べ方は、二段階に分けられる。まず、黄色いカニミソの入ったワタリガニの甲羅に1~2匙ほどの粒立ちのご飯を入れ、よくかき混ぜる。カニミソが混ざったご飯をスプーンいっぱいにすくって口に入れると、ケジャン特有の甘辛さとコクのある風味が口の中に広がる。
次は、身がぎっしり詰まった胴体部分を味わう番だ。まず、脚の部分を手で持って、親指で押してみよう。殻の内側にたっぷり詰まった身と、雌蟹の場合は卵が溢れ出るが、ここにカンジャンケジャンのタレをかけて食べると、さらに美味しくなる。
辛いのが好きな人には、味付けケジャンがおすすめだ。味付けケジャンは、唐辛子粉、ニンニクのみじん切り、生姜、カンジャン、コショウなどで作ったタレをワタリガニに和える。カンジャンケジャンは数日間熟成させる必要があるが、味付けケジャンはその場で味付けして食べられるので新鮮なカニ身の味を堪能できる。その味は、スパイシーなタレと柔らかいカニの身の調和が絶品だ。食べやすいサイズに切って提供されるので、ビニール手袋をはめた手で力強く押すと身が出てくる。これにご飯とタレを混ぜて美味しくいただけばOK。
インチョン(仁川)地域の人は昔から家庭料理としてケジャンをよく作った。そのためか、インチョン(仁川)ではカンジャンケジャンの老舗は観光スポットより、住宅街の周辺に多い。店の中には、伝統的な製法で造るカンジャンを使う店もあれば、市販のカンジャンを使う店もある。伝統的な製法のカンジャンが使われたケジャンは、そうでないものよりやや高いものの、それでもインチョン(仁川)では他の地域よりは比較的手頃な値段で味わえる。
「カンジャンケジャンの食べ放題の店」もあり、1人当たり2~3万ウォンでカンジャンケジャンをお腹いっぱい食べられる。だが、食べ放題の店のワタリガニは多少小ぶりで、市販のカンジャンを使うケースが多い。