2025/02/20
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一年中いつでも楽しめる。
アンドン(安東)を代表する観光名所の周辺にある食堂をはじめ、アンドン焼酎博物館、名人アンドン焼酎販売場、ノンアムジョンテク(聾岩宗宅)の隣にあるイルヨプピョンジュ(一葉扁舟)醸造所などでアンドン焼酎を購入することができる。
韓国人に最も愛されるお酒といえば、断然「焼酎」だ。韓国人はサムギョプサルのような脂っこい食べ物や温かい汁物に焼酎を添えて飲むことが多い。しかし、このように普段飲んでいる焼酎を伝統酒と呼ぶのは無理がある。このような焼酎は工場で生産された酒精(トウモロコシ、タピオカなどの穀物で造った酒の原料でエタノールに近い)に水を混ぜてアルコール量を調整し、そこに色んな材料を加えて仕上げた希釈式焼酎だからだ。
韓国には歴史と伝統を誇る伝統酒が多いが、その中でも伝統的な製法による焼酎はウイスキーやブランデーのように原酒を蒸留させてアルコール成分を抽出する「蒸留法」で造っており、 原酒を造る際には伝統的な麹菌を使っている。
韓国の伝統焼酎のうち、最も有名なのはキョンサンブク(慶尚北)道アンドン(安東)地域の「アンドン(安東)焼酎」だ。昔ヤンバン(両班)一族が住んでいたアンドン(安東)一帯には、このアンドン(安東)焼酎の酒蔵が多い。
韓国の酒造りは、韓国特有の発酵文化とつながっている。韓国にはキムチをはじめ、テンジャンやカンジャンのような醤類、お酒など、多様な発酵食品がある。醤類の原点が豆で造ったメジュ(みそ玉麹)であるように、お酒は小麦や米で造った麹からはじまる。例えば、この麹を強飯と混ぜて10~15日間発酵させた後、酒粕をろ過したらマッコリ(韓国を代表する伝統酒の一つ)になる。
高級酒とされる清酒はマッコリよりさらに多くの製造工程が必要だ。麹に米や小麦を入れ混ぜて、もろみを仕込むのが第1段階。こうやって造られたもろみに米を加えて1次発酵させ、そこで造られた酒にさらに麹と米を混ぜたものを加え、再度発酵させる。このように発酵させた酒を複数回ろ過させると、ようやく清酒が完成する。アルコール度数15~18度の清酒は気軽に飲むことができ、米の甘味と発酵過程で生み出された芳醇な香りが魅力的だ。この清酒をさらに蒸留させ、アルコールを抽出すると蒸留式伝統焼酎の材料となる。
韓国の伝統焼酎については様々な説があるが、高麗時代に元(モンゴル)より蒸留法が伝来されたことからはじまったというのが定説となっている。13世紀、元は日本を征服するため高麗各地を前哨基地としていたが、その一つが今のキョンサンブク(慶尚北)道のアンドン(安東)一帯だったという。元と連合軍を構成していた高麗軍の指揮官「チュンリョル(忠烈)王」がアンドンに1か月程度滞在した際に、元の焼酎製法が伝わったとされる。この時伝わった蒸留法は、アンドン(安東)地域の主な酒造り製法の一つとして定着した。
アンドン(安東)は様々な家柄が単姓村を形成し、勢力を維持していた地域だった。朝鮮が建国されて以来、国家運営の中心であり、ヤンバン(両班)勢力の中核だったサデブ(士大夫)がアンドン(安東)地域の家門から多く登場したが、家門の規模が大きくなるにつれ、祭祀に使う酒を造る様子をよく見かけるようになった。先ほど言及した通り、焼酎は製法が難しく、一度に造れる量が少ないため、主に祭祀やおもてなしに使われていた。
大量生産システムが整備されたのは1990年代に入ってからだった。キョンサンブク(慶尚北)道無形文化財に指定されたチョ・オクファ名人は昔ながらの製法にこだわってアンドン(安東)焼酎を造っていたが、チョ名人の後を継いだキム・ヨンバク名人が造る「チョ・オクファ民俗酒アンドン焼酎」がその代表といえる。アンドン(安東)地域の由緒ある家柄「潘南パク氏」秘伝の製法で焼酎を作るパク・チェソ名人の「名人アンドン(安東)焼酎」も人気だ。パク名人は特にアンドン(安東)焼酎を全国的に有名にした「チェビウォンピョ焼酎」の大量酒造技術(現代式大型蒸留設備および瓶充填機材を導入)を受け継いで、現在の工程システムを整えた人物でもある。
伝統的な製法のアンドン(安東)焼酎は強飯(通常のご飯より水の量を少なめにし、粘りがないのが特徴)に麹と水を加えたものを発酵させ、蒸留させる蒸留酒だ。蒸留した直後は45度以上とアルコール度数が高いが、水を加えることでアルコール度数を調整することができる。その他の副原料は一切入らない。
原料がほぼ同様であれば、味の決め手となるのは製法になる。酒蔵によって伝統的な製法の「常圧蒸留」を守り続けるか、蒸留の際に圧力を下げて沸点を引き下げる「減圧蒸留」を採用して焼酎を造る。これはアンドン(安東)焼酎だけの特徴ではないが、最近アンドン(安東)地域で造られた焼酎は蒸留法で味わいや香りを区分することもある。
常圧蒸留(Atmospheric Distillation)は通常の大気圧で蒸留することをいう。最も一般的に使われている蒸留法で、焼酎やウイスキーなどの伝統的な製法としても知られている。アルコールとともに色んな香気成分が一緒に蒸留され、独特な香りと芳醇な味わいを生み出す。しかし高温で蒸留するため、一部の香りが採取できなかったり、変わってしまう恐れがある。伝統的な製法を守り続けているキム・ヨンバク名人の「チョ・オクファ民俗酒アンドン(安東)焼酎」も常圧蒸留の製法で造られた酒だ。
減圧蒸留(Vacuum Distillation)は圧力を下げて、沸点を引き下げた状態で蒸留する製法だ。香り高さを保つことができ、温度に敏感な原料を効果的に蒸留することができる。この製法で造られた酒は、軽やかでやさしい口当たりに仕上がり、材料本来の香りを損なわないのが特徴だ。パク・チェソ名人の「名人アンドン(安東)焼酎」が減圧蒸留で造られた酒の代表格だ。
最近はアンドン(安東)焼酎の製法と原料、味の多様化が進み、愛酒家の注目を集めている。「ミルグァノニルダ」のチンメク(真麦)焼酎、ノンアムジョンテク(聾岩宗宅)の宗婦が造るイルヨプピョンジュ(一葉扁舟)がその代表格だ。チンメク焼酎は、直接栽培した有機全粒粉100%を原料とする小麦焼酎だ。小麦焼酎は1540年アンドン(安東)地域に住んでいたキム・ユ(金綏)が著述した韓国最古の料理書籍『需雲雜方』にも登場するほど、アンドン地域のヤンバン(両班)の間で広く造られていた酒だったが、その命脈が途絶えていた。それを現代になってチンメク焼酎が受け継いでいるわけだ。『需雲雜方』に記載された通りの製法ではないが、アンドン(安東)焼酎の一種だった小麦焼酎が再現されたことは意義深い。
ノンアムジョンテク(聾岩宗宅)のイルヨプピョンジュ(一葉扁舟)も面白い。ノンアムジョンテク(聾岩宗宅)は、朝鮮チュンジョン(中宗)時代の文臣で詩人として知られている イ・ヒョンボ(李賢輔)の宗宅で、代々この家を守ってきた宗婦が2020年から伝統酒を造り始めたのがイルヨプピョンジュのはじまりだ。イルヨプピョンジュ(一葉扁舟)は伝統製法を追求している。水と米、伝統的な麹菌のみ使用し、全ての工程は手作業で行われる。ノンアムジョンテク(聾岩宗宅)の前で麹を作っている様子をよく見かけるのは、そういう背景によるものだ。少量しか造らないため、販売直後に売り切れることが多い。その歴史はまだそこまで長くないが、伝統製法にこだわったアンドン焼酎を味わうために多くの人が訪れている。