2025/05/30
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韓国の精進料理・寺刹料理(提供:鉢盂供養)
韓国の精進料理(寺刹料理・寺刹飲食)がいま、ウェルネスの分野や自然にやさしい持続可能な食文化をリードする新たなK-フードとして脚光を浴びています。
自然にやさしい食材を用いて調理された韓国の精進料理は、健康にも環境にも配慮しているばかりでなく、味わいもピカイチで、世界中のグルメな人々から人気を博しています。寺で修行する人々が古の時代から引き継いできた韓国の精進料理はその価値を高く評価され、近年では国家無形遺産への登録を検討・推進しています。
世界的な名シェフであるエリック・リパート氏をはじめ、フランス・パリを本拠とする権威のある料理菓子専門学校ル・コルドン・ブルー関係者、今年2025年のミシュランガイドソウル&釜山で韓国で唯一三ツ星を獲得したminglesのシェフであるカン・ミング氏をも魅了した韓国の精進料理。今回はそんな魅力ある韓国の精進料理を味わい満喫できる様々な方法を詳しくご紹介したいと思います。
韓国の精進料理(写真:韓国観光公社PHOTO KOREA-ALEXBUNDO)
韓国では寺刹飲食(サチャルウムシク)または寺刹料理(サチャルヨリ)と呼ばれる精進料理は、仏教の教えに基づいた、お寺で引き継がれてきた料理です。
仏教の戒律である不殺生に則り、修行に妨げとなる動物由来の食べ物や、長ネギ・ニンニク・ニラ・ノビル(野蒜またはヒメニラ(小蒜))、アギ(興渠(フンゴ)・阿魏・アサフェティダ)といった辛味のある野菜・五辛菜(オシンチェ)は用いられません。
このほか、化学調味料の代わりに椎茸や昆布、荏胡麻(エゴマ)など自然の恵みを用いた調味料で味付けするので、健康的で体に負担の少ない料理に仕上がっているのも長所に挙げられます。
仏教文化が広がる国や地域でも様々な精進料理がありますが、韓国の精進料理は発酵食品を中心にした調理方法や地元で採れた食材を用いているという点が特徴と言えます。
僧侶の修行食ということもあり、一般の人々はなかなか食する機会がありませんでしたが、韓国の精進料理に対する関心が高まるにつれて数あるグルメのひとつとして認識されるようになり、近年では韓国の精進料理を気軽に味わうことができるレストランや施設が増えてきています。
│ソウル特別市 鉢盂供養

曹渓寺境内にある鉢盂供養の店内(写真:鉢盂供養)

曹渓寺境内にある鉢盂供養の店内(写真:鉢盂供養)

旬の食材を用いた春の精進料理(写真:鉢盂供養)
鉢盂供養(パルゴンヤン)は韓国で最大の宗派・大韓仏教曹渓宗直営の精進料理専門店。
精進料理の大家として知られる大安(テアン)和尚が総責任者であっただけあって、韓国正統の精進料理を味わうことができます。
真理を悟る過程からその名を取り、四つのコースのメニューは禅食・願食・念食・喜食と名付けられ、食材本来の味を生かした素朴で体にもよい料理を提供しています。
代表的な献立は、様々なキノコの唐揚げに甘酸っぱいコチュジャン風味のヤンニョムだれが絡まったモドゥムキノコカンジョン(모듬버섯강정)で、衣をつけてからっと揚げた柔らかな食感のキノコの風味が抜群で、食欲をそそるヤンニョムだれも絶品です。
アメリカの名優リチャード・ギアがここを訪れたことでも有名で、過去にはミシュランガイドで一つ星を獲得したこともあり、味・サービスともにお墨付きです。韓国の精進料理に初めて挑戦される方におすすめのお店がここ、鉢盂供養です。
■鉢盂供養(발우공양)
👞お食事の後は近くのお寺を散策:曹渓寺

曹渓寺の境内(左写真:韓国観光公社PHOTO KOREA-キム・ジホ氏)

奉納した燃灯の下で拝む信徒の人々(右写真:韓国観光公社PHOTO KOREA-イ・ソンサム氏)

奉納した燃灯の下で拝む信徒の人々(右写真:韓国観光公社PHOTO KOREA-イ・ソンサム氏)
曹渓寺(チョゲサ)はソウルの中心・鐘路(チョンノ)にある大韓仏教曹渓宗の総本山。
今ではビルの谷間に身を屈めるかのように建つ曹渓寺の建物は、都会の喧騒に囲まれながらも、ほっと一息つける静けさが宿る場所でもあります。
曹渓寺の中を歩いていると、境内中央には朝鮮時代の正宮・景福宮の勤政殿を彷彿とさせるほど大きな建物でソウル特別市有形文化遺産に指定されてい本堂・曹渓寺大雄殿があり、その大雄殿の中には同じく有形文化遺産に指定されている曹渓寺釈迦仏図や曹渓寺木仏座像(釈迦仏)など仏教文化の美しさを実感する数々の文化遺産があり必見です。
お寺の近くには、仁寺洞文化の通りや益善洞韓屋通り、北村韓屋村など韓国ならではの趣ある風景が広がる観光名所も歩いてすぐのところにあり、ぐるっと散策がてら探訪してみるのもおすすめです。
■曹渓寺
│慶尚北道慶州 蓮花鉢盂

韓屋の趣が素晴らしい精進料理専門店・蓮花鉢盂(写真: 蓮花鉢盂)

蓮花鉢盂の山菜ビビンバ(写真: 蓮花鉢盂)
韓国南東部・慶尚北道(キョンサンブクド)にある悠久の古都・慶州(キョンジュ)。ここ慶州にも素晴らしい精進料理を味わうことができるお店があります。それは蓮花鉢盂(연화바루)。地元慶州の人々のみならずお坊さんも足繁く通うという老舗の精進料理のお店です。
地元産のみずみずしい食材を用いて調理した料理は、一切、肉類が使われていないにもかかわらず、大変美味しく満足の行くものばかり。
お店自慢の献立は、キノコを揚げて甘酸っぱいたれで和えたタンスイ、旬のナムルを添えたドングリのデンプンを固めてつくったトトリムク、六つの山菜が入った山菜ビビンバなど様々な菜食料理をコースで味わえる鉢盂特定食。
近くには大陵苑、瞻星台、皇理団キルなど慶州の観光名所もあり、精進料理を味わった後は散策がてら、新羅千年の歴史が宿る慶州の古(いにしえ)と今を巡る探訪に出かけてみてはいかがでしょうか。
■蓮花鉢盂(ヨンファバル=연화바루)
👞お食事の後は近くのお寺を散策:仏国寺
仏国寺の境内(写真:慶州市庁)

石窟庵如来坐像本尊仏(写真:韓国観光公社)
仏国寺は、石窟庵とともに1995年「石窟庵と仏国寺」としてユネスコ世界遺産に登録された韓国を代表する古刹です。創建当時でも信じがたいほど緻密に設計され建立された仏国寺はどこを見ても仏教建築の美しさを感じる、そんなお寺です。
吐含山(トハムサン)の南西の麓にある仏国寺の境内には「慶州仏国寺蓮華橋及び七宝橋」など国宝に指定されている文化遺産が数多くあるほか、極楽殿の前には願いを叶えてくれるという福を呼ぶ金色の豚の像もあり、訪れる人々が像を撫でて幸せを願う姿が見受けられます。
また同じ吐含山の山中には東洋一の傑作として知られ、瞑想を行う結跏趺坐(けっかふざ)の姿勢を取る「如来坐像本尊仏」が中央に鎮座する石窟庵もあり、仏国寺を訪れる機会があれば合わせて拝観していただきたい場所です。
■仏国寺


寺で食事・鉢盂供養を行うテンプルステイの参加者(写真:Gettys Image Bank)
精進料理は、修行を行う僧侶にとって、なくてはならない食事であり、食べる行為そのものが修行のひとつとなっています。ゆえに真の精進料理を理解したい方には、僧侶の日常を自ら体験してみるのがいいかもしれません。
韓国の寺院の中には、一般の人々にお寺を開放し韓国の仏教文化を体験できるテンプルステイを行っていることもあります。
テンプルステイには様々なコースがあり、仏教文化全般を体験できる体験型プログラム、お寺でいくつかの活動を行いそれ以外の時間はゆっくり過ごす休息型プログラム、3時間程度の短時間お寺の生活を体験できる当日型プログラムなどがあります。
■テンプルステイ
│全羅南道長城 白羊寺

双渓楼と白岩山の風景(写真:韓国観光公社PHOTO KOREA-キム・ジホ氏)

白羊寺の境内(写真:韓国観光公社PHOTO KOREA-IRスタジオ)
白羊寺(ペギャンサ)は内蔵山国立公園内にある名刹で、朝鮮八景のひとつとして数えられるほど風光明媚なところとして有名です。
特に参道入口にある楼閣・双渓楼(サンゲル)や、その手前に流れる薬水川(ヤクスチョン)が淀み池のようになっているところが、周囲の屏風絵のような素晴らしい奇岩奇石の山々と調和し、まさに一枚の東洋画のような風景を織りなし、訪れる人が感嘆の声を上げるほどです。
春夏秋冬、いつでも素晴らしい景色ですが、特に木々が赤や黄色など色とりどりに染まる紅葉の秋の時期が最高です。
ここ白羊寺は精進料理に特化したお寺としても有名で、一年を通じてテンプルステイを体験しようとする人々がひっきりなしにやってくるお寺でもあります。
白羊寺のテンプルステイプログラム

僧侶との茶談(写真:白羊寺)

僧侶との茶談(写真:白羊寺)

正寛和尚料理講演(写真:白羊寺)
白羊寺で行われているテンプルステイには次のようなプログラムがあります。
1.真人間・加行精進テンプルステイ(体験型テンプルステイ)
こころの中の仏を探究する真人間の精神に基づき、禅瞑想を通じてこころの修行を行うプログラム。
瞑想に耽りながら、白羊寺そばにあるカヤの木の並木道を散策し、身も心も癒しましょう。
2.正寛和尚の精進料理修行と禅瞑想(体験型テンプルステイ)
正寛(チョングァン)和尚の講演を聴講し、真心こめて調理した精進料理を味わうプログラム。
白羊寺の正寛和尚は料理の世界のアカデミー賞とも言える『ジェームズ・ビアード賞』を受賞、またNetflixドキュメンタリー『シェフのテーブル』にも出演した韓国の精進料理の第一人者でもあります。
世界中から正寛和尚の精進料理を味わってみたいと大人気で予約もなかなか難しい状況。是非味わってみたいという方は、余裕を持って予約をすることをおすすめします。
3.『立ち止まる』そして、なすがままに(休息型テンプルステイ)
寺の雰囲気や自然の風景を満喫し憩いのひと時を過ごすプログラム。
すべては参加者次第で、忙しない日常から離れ、自然の中でゆっくり休みたい方におすすめです。
■白羊寺
│大邱・桐華寺

桐華寺の境内

桐華寺薬師如来大仏(写真:韓国観光公社PHOTO KOREA-ジホ氏)
大邱(テグ)広域市にある名刹・桐華寺(トンファサ)は韓国南東部・嶺南(ヨンナム)地方で最も由緒あるお寺のひとつで、大邱では最も大きなお寺です。
八公山にあるカッパウィ(慶山八公山冠峰石造如来坐像)や願いを叶えるという大きな岩・所願(ソウォン)パウィなどと共に、霊験あらたかな桐華寺は、願いを込めて拝観する人々でいっぱいです。
2008年中国で行われた第5回東アジア国際観光博覧会で八公山桐華寺が東アジア十大観光名所に指定されるだけあって数多くの文化遺産があり、その中でも高さ33mにも及ぶ薬師如来大仏は桐華寺を代表する石仏です。
大邱市内からはバスなど公共交通機関を利用して訪れることができアクセスも抜群、テンプルステイの名所として、また精進料理に特化した寺としても有名です。
桐華寺のテンプルステイプログラム

僧侶との茶談(写真:桐華寺)

精進料理作り体験(写真:桐華寺)

精進料理作り体験(写真:桐華寺)
桐華寺で行われているテンプルステイには次のようなプログラムがあります。
1.百八拝数珠作り(体験型テンプルステイ)
身を屈め煩悩の数と同じ108回、仏様にお辞儀をし合掌する百八拝の修行。謙虚さを学び、心を入れ替えるのがこのプログラムです。
仏様にお辞儀をするたびに数珠玉をひとつずつ糸に通し、家族など身近な人々の幸せを祈りながら数珠を作っていきます。
2.こころを込めて『精進料理作り』(体験型テンプルステイ)
精進料理を自ら調理し味わう楽しい癒し体験プログラム。
新鮮な素材を用いヘルシーな精進料理の作り方を学び、その後は清々しい森の中を散策、身も心も満たされた安らかな気分になれます。
3.安らかな休息(休息型テンプルステイ)
身も心もなすがままに、心身のバランスを取り戻すプログラム。
忙しない日常で疲れた身体を癒し、自分だけの活力を取り戻す時間を持つことができます。
■桐華寺
・修行前に各自準備するもの:洗面道具、タオル、綿のTシャツ、靴下、シューズ、水筒、常備薬など個人で使うもの
(※註:各寺により持込できるものは異なります。詳しくは修行する寺に直接お問合せください)
テンプルステイ中のマナーについて
これまで何かと硬く権威主義的なイメージが強かった韓国の仏教文化ですが、ここ数年MZ世代をターゲットにした今どきのHIPなグッズが登場したり、若者に人気のイベントが行われるなど、宗教という枠を越え一つのトレンドにもなっています。
これに歩調を合わせるように、精進料理も若いMZ世代の間でヘルシーな菜食メニューとしてSNS上で大人気となっています。
また、その流れで精進料理の作り方を学ぶ様々な料理講座も続々誕生するなどその勢いは衰えることはありません。
│韓国寺刹飲食文化体験館

寺の台所・供養間を再現した展示スペース(写真:韓国寺刹飲食文化体験館)

精進料理クラスに参加した実習生(写真:韓国寺刹飲食文化体験館)
ソウル都心の真ん中、ソウル地下鉄3号線安国(アングク)駅近くには、およそ1700年もの間受け継がれている精進料理の真の姿を体験できる場所があります。それは、韓国寺刹飲食文化体験館。
韓国寺刹飲食文化体験館では精進料理をテーマに様々な展示や体験プログラムを行っており、開設されている料理講座では韓国の精進料理の作り方も学ぶこともできます。料理講座は月ごとに行われる講座のほか、観光で短期間韓国に滞在の方も受講可能な単発の講座もありますので、お気に入りの精進料理を作る講座を選んで受講も可能です。
日頃から体のことを考えてヘルシーで環境にも負荷をかけないメニューはないかとお悩みの方には、ここ韓国寺刹飲食文化体験館で行われる講座に参加して韓国の精進料理のレシピを学んでみてはいかがでしょうか
■韓国寺刹飲食文化体験館(한국사찰음식문화체험관)
✅ TIP. 韓国の仏教文化をもっと体験したい方におすすめ!
【国際禅瞑想地域大会】
韓国全国各地方の寺では、韓国の仏教文化への理解を深め、禅瞑想をより身近に感じてもらう様々な行事が行われています。禅瞑想をテーマにした様々なプログラムに参加して、身も心も安らかになってみてはいかがでしょうか。
【寺刹飲食大祝祭】
精進料理(寺刹飲食・寺刹料理)の名料理人が一堂に会し行われる大規模な精進料理のお祭り。
4回目を迎える今年は『一杯に生命を盛る:無形遺産として輝く寺刹飲食』をテーマに命の尊さや自然との調和を加味した展示や体験プログラムが行われます。
【津寛寺水陸斎】
水陸斎は水辺や陸をさまよう諸霊や餓鬼に食べ物を施し供養する法会(儀式)で、日本の仏教で行われている施餓鬼の一種です。その中でもソウル特別市恩平区(ウンピョング)の恩平韓屋村すぐそばにある津寛寺(チングァンサ)で行われる国行水陸斎は国家無形遺産にも指定されており、由緒ある仏教行事を体験できます。
※上記の内容は2025年5月現在の情報です。今後変更されることがありますのでお出かけ前に必ずご確認ください。