2022/12/26
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ソウル
整形外科
ソウル特別市ポラメ病院の形成外科パク・ジュンホ教授は、指尖部切断患者を対象とするハイブリッド腹部皮弁術(Hybrid Abdominal Flap、HAF)を開発し、その効果を確認した研究結果をSCI級の国際学術誌「medicina(メディチーナ)」10月号で発表した。筋や骨の露出を伴う指尖部切断は、日常生活で最も起こりやすいケガの一つで、一般的に切断部位に移植を行う方法によって治療する。だが、切断部位の損傷や、吻合できる血管や骨の損傷が激しい場合は移植が難しくなる。「腹部皮弁術」は自家組織を用いて欠損部位を再建する手術法で、切断部位を血流が良い腹部に移植することで欠損部を再生させた後、それを再び分離する治療が行われる。だが、骨を除いた皮膚や軟部組織しか再生できず、指の元の長さを保ったり機能の回復における限界が存在する。
そこでソウル特別市ポラメ病院の形成外科パク・ジュンホ教授の研究チームは、2019年3月から2021年4月まで指尖部切断患者を対象に切断部位に骨移植と腹部皮弁術を同時に施行する「ハイブリッド腹部皮弁術」を行った。その結果、従来の腹部皮弁術を施行した指より、手術後の関節の稼動範囲が統計的にも有意義に広くなり、手術患者の整容・機能面での満足度も2倍以上高まったことが分かった。手術後、時間の経過とともに再生部位の機能全般が大きく向上し、手術時間も平均30分前後と非常に短く、罹患リスクも低い上、従来の手術とは異なり局所麻酔だけでも手術を迅速かつ簡単に行える。
ソウル特別市ポラメ病院の形成外科でハイブリッド腹部皮弁術を希望する外国人患者は、英語ホームページの案内の通り、電話または訪問による受付をしてから、受診・相談することができる。その後、ケガの経緯や時期、既往歴、手術歴などを総合的に判断し手術時期と手術適応を決めることになる。以後、手術前の簡単な血液検査を受け、手術日に来院して手術を受ける。手術費用は医療保険が適用される場合は90万ウォン(約9万円)、適用されない場合は150万ウォン(約15万円)となっている。
ホームページ(英語)はこちら https://en.brmh.org/
思ったより頻繁に起こる指尖部切断事故、その救急処置は?
一般的に指尖部切断事故は、手のケガの中で最も頻繁に発生する。日常生活の中で料理中に包丁で切ってしまったり、ドアに指を挟むというケースから各種事務用品や工場・作業場などで仕事中に機械によって手にケガをするケースが多い。指尖部切断事故が発生したら、まずは切断された指の止血が最優先で、切断された指尖部をガーゼやタオル等を当て軽く圧迫する。切断により指の動脈が損なわれると一時的に大量の拍動性出血が起こりうるので、指尖部と指関節の真ん中を同時に圧迫して止血を行えば一層効果がある。
切断事故に遭うと慌てて真っ先に病院に来る患者が多いが、切断された指を必ず探して持って来なければならない。一般的に24時間以内に切断された指を持参し来院することが求められ、切断の程度や傷口の状態などによって様々な方法で指の再建ができるため、なるべく早めに冷たい生理食塩水に浸したガーゼに包んで来院するのが望ましい。病院までの移動時間が長くなる場合は、アイスボックスや保冷剤を同封して持参することを薦める。
一般的な指尖部切断事故の治療法
指尖部切断事故の場合、切断部位の状態によって多様な治療法がある。切断部位が微小だったり薄い場合には、専門の医療スタッフによる傷口の消毒だけで治療できる。切断部位の皮膚欠損が激しい場合には皮膚移植により欠損した皮膚を再建することができる。しかし、切断部位が比較的、深かったり骨や指を動かす腱(tendon)が露出している場合は切断された指を利用して接合手術が可能で、指の内側、手の平、そして腹部といった身体部位の皮膚や組織を利用して皮弁術による欠損部位の再建方法も考えられる。
ハイブリッド腹部皮弁術とは?
大学病院の形成外科では救急室または外来診療で指尖部切断によって来院する患者が多い。年齢や性別、職業群も多岐に渡り、ケガをした経緯も患者ごとに千差万別だ。ソウル特別市ポラメ病院の形成外科パク・ジュンホ教授は、たくさんの手部損傷患者を診療しながら、治療時期を逃したり、過去の手術による壊死の副作用などで苦しんでいる指尖部切断患者のために、全身麻酔なしで短時間で行えるもっとも簡単な手術は何かと悩んだ末に、ハイブリッド腹部皮弁術を考案することになった。
一般的に機能や整容面で最も最善の手術法は、切断された指を利用した再接着術だ。だが、損傷の機序によって切断された指組織の血管や骨などの挫滅または損傷がひどい場合には、再接着術が難しく、もし行ったとしても良い手術結果を得られないため、追加手術が必要になる。このような患者のために切断された指骨があった部位は患者本人の骨を移植すると同時に、切断された指の皮膚や軟部組織の場合、腹部の皮膚や軟部組織を用いて指尖部を再建する「ハイブリッド腹部皮弁術」を考案した。
一般的な腹部皮弁術の限界を乗り越える
従来の腹部皮弁術は1900年代前半から皮膚欠損患者を対象に広く行われている手術法だ。ハイブリッド腹部皮弁術は、欠損した指の皮膚や軟部組織のみを腹部から移植する一般的な腹部皮弁術の機能・整容面での限界を乗り越えたことに意義がある。同手術法は解剖学的に最も理想的な再建方法であり、実際に損傷した指の構造を全て再建することができる。指の切断片または肘の骨の一部を精巧に採取し骨格を創り出してからその外側の部分を皮膚や軟部組織で覆うことで、指尖部切断が起こる前の状態に最も近い形で再建することができる。また、切断された骨を固定した後、血流が良い腹部組織に移植することも安定的な骨癒合に繋がる。
ハイブリッド腹部皮弁術の副作用とは?
ただし、ハイブリッド腹部皮弁術を受けると、腹部の色が指とは異なる場合があり、皮膚色が一部相異することがある。手術後、約2週間は指を腹部に付着したまま過ごさなければならないため、患者の行動習慣および生活によっては腹部皮弁術を施行した部位が癒着できないこともある。また、姿勢が固定されるため、手首や肩など関節に一時的な痛みをもたらしかねないが、手術後の一般的な運動やリハビリ治療で日常生活が可能になる。
手術時間は30分程で全身麻酔なしで行われる。切断された指尖部を腹部に移植する手術の後、2週間は腹部組織が切断された指尖部と結合する時期を経てから分離手術を行うことになる。手術から1週間くらい経てば軽い物を持ったり触るなどの日常生活を始めることができる。手術経過に年齢差は認められないが、血管状態や腹部の皮膚状態が良くない患者は比較的良い結果を期待しがたい。
ハイブリッド腹部皮弁術のプロセス
※ 上記の内容はソウル特別市ポラメ病院(https://www.brmh.org)の治療事例です。
監修 ソウル特別市ポラメ病院の形成外科パク・ジュンホ教授
作成 キム・ジョンユン記者