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    韓国の極上の飯泥棒、カンジャンケジャン

    いつ・どこで

    カンジャンケジャンは、ワタリガニで作る代表的な料理の一つだ。ワタリガニの旬は、4~6月と10~11月。春はワタリガニが産卵前の摂餌活動を活発に行うため、卵(正確には卵巣)がぎっしり詰まった雌蟹が美味しい。冬を越すために身を太らせる時期の秋は雄蟹が旬と言われるが、雌蟹の美味しさも引けを取らない。雄蟹も雌蟹も、同程度の栄養分を蓄えるからだ。

    ワタリガニの主な産地は、インチョン(仁川)をはじめ、チュンチョンナム(忠清南)道タンジン(唐津)、ソサン(瑞山)、テアン(泰安)、アンミョンド(安眠島)など、西海岸だ。中でも、インチョン(仁川)ヨンピョンド(延坪島)周辺の「ヨンピョン(延坪)漁場」は国内最大規模のワタリガニ産地として広く知られる。インチョン(仁川)総合魚市場(インチョン広域市チュン区ヨナンブドゥロ33ボンギル37)では、インチョン(仁川)とその周辺の海で獲れた新鮮で身の詰まったワタリガニを味わうことができる。

    カンジャンケジャンは韓国人の間では「ご飯泥棒」とも呼ばれる。ご飯泥棒とは、ご飯と一緒に食べるとあっという間にご飯がなくなるほど美味しいという意味で、ご飯に合うおかずを指すときの慣用表現だ。


    韓国で「ご飯泥棒」と呼ばれる代表的な食べ物には、テナガダコ炒め、プルゴギ、熟成キムチ、肉の煮付け、太刀魚の煮付けなどがある。中でも韓国人が考える最高のご飯泥棒は、何と言ってもカンジャンケジャンだ。新鮮なワタリガニにカンジャンベースで味を付けるカンジャンケジャンは、一見シンプル過ぎて特徴のない料理に思えるが、熱々のご飯と一緒に食べると、独特の塩味とコクのある旨味で、どんどんご飯がすすむ。



    カンジャンケジャンの歴史

    ケジャンは、昔から韓国人が好んで食べてきた。朝鮮後期の実学者、ユアム(流岩)ホン・マンソン(洪万選、1643~1715)先生が著した『山林経済』には、ケジャンの作り方が詳しく記載されている。ホン・マンソン(洪万選)先生は著書でケジャンの作り方をカンジャンで作る方法と、塩で作る方法に分けて紹介している。

    カンジャンケジャンは一般的に知られているが、塩ケジャンはやや馴染みがないように感じられる。塩ケジャンは、塩の浸透圧により身の水分が抜けるため、カンジャンケジャンに比べて身がしっかりしていて歯ごたえのある食感が特徴的だ。現在は塩ケジャンを提供するお店がほとんどないが、地域によっては漁師が塩ケジャンを珍味として自ら作って食べることもある。

    カンジャンケジャンに使われるカニの種類

    韓国の東海、西海、南海沿岸には、地域によって様々な種類のカニが生息している。東海にはズワイガニ、ベニズワイガニ、ケガニが、西海と南海にはワタリガニ、イシガニ(韓国語では「パカジ」、または「トルゲ」ともいう)、トゲクリガニが生息する。中でもワタリガニは、西海岸全域の特産品として扱われるほど多く獲れる。とくにインチョン(仁川)ヨンピョンド(延坪島)周辺で多く獲れ、韓国全体の収穫量の8%に達する。栄養が豊富で味に優れたワタリガニは、主にカンジャンケジャンの食材として使われる。

    ワタリガニの旬は、4~6月と10~11月。春は産卵期を控え、精力的に摂食行動を行って栄養を蓄える時期で、秋は寒い冬を越すために自分の体を太らせる。一般的に春は雌蟹、秋は雄蟹が旬と言われている。だが、この一般常識は事実といくらか違う部分がある。たしかに春は、ワタリガニが産卵の前に活発な摂食行動を行うため、卵(正確には卵巣)がぎっしり詰まった雌蟹は味に優れている。越冬のために栄養を蓄える秋は雄蟹が旬と言われているが、実は雄蟹も雌蟹も栄養を蓄える量はほぼ同じなので、味の優劣を付けるのは難しい。

    カンジャンケジャンの作り方

    カンジャンケジャンを作るとき、何よりカンジャンが重要な要素となる。伝統的な製法で作られたカンジャンを使用することで、より美味しく、より深い味わいのカンジャンケジャンが作れる。伝統的な製法のカンジャンの作り方は次の通りだ。

    まず、大豆でみそ玉麴を作り、そこからテンジャン(韓国味噌)を作り発酵させる。そして、発酵が終わったテンジャンからカンジャンを分離させる(これを韓国語では「チャンガルギ(醤分けという意味)」と呼ぶ)。ちなみにテンジャンとカンジャンは、長年熟成させることで味が深まる)。

    こうして造ったカンジャンに、玉ねぎ、唐辛子、昆布、生姜などを入れて煮る(煮ると、それぞれの食材の味と香りがカンジャンに染み込む)。カンジャンの粗熱を取ってそこによく洗ったワタリガニを入れ、2日から4日間熟成させるとカンジャンケジャンの完成だ。

    カンジャンケジャンを看板メニューにしている飲食店では、韓国の伝統製法のカンジャンや市販のカンジャンで作ったカンジャンケジャンを提供しているが、どんなカンジャンを使うかによってカンジャンケジャンの味と価格が大きく異なる。

    カンジャンケジャンはどうやって食べるの?

    カンジャンケジャンの食べ方は、二段階に分けられる。まず、黄色いカニミソの入ったワタリガニの甲羅に1~2匙ほどの粒立ちのご飯を入れ、よくかき混ぜる。カニミソが混ざったご飯をスプーンいっぱいにすくって口に入れると、ケジャン特有の甘辛さとコクのある風味が口の中に広がる。

    次は、身がぎっしり詰まった胴体部分を味わう番だ。まず、脚の部分を手で持って、親指で押してみよう。殻の内側にたっぷり詰まった身と、雌蟹の場合は卵が溢れ出るが、ここにカンジャンケジャンのタレをかけて食べると、さらに美味しくなる。

    辛いのが好きな人には、味付けケジャンがおすすめだ。味付けケジャンは、唐辛子粉、ニンニクのみじん切り、生姜、カンジャン、コショウなどで作ったタレをワタリガニに和える。カンジャンケジャンは数日間熟成させる必要があるが、味付けケジャンはその場で味付けして食べられるので新鮮なカニ身の味を堪能できる。その味は、スパイシーなタレと柔らかいカニの身の調和が絶品だ。食べやすいサイズに切って提供されるので、ビニール手袋をはめた手で力強く押すと身が出てくる。これにご飯とタレを混ぜて美味しくいただけばOK。

    カンジャンケジャンはどこで食べられるの?

    インチョン(仁川)地域の人は昔から家庭料理としてケジャンをよく作った。そのためか、インチョン(仁川)ではカンジャンケジャンの老舗は観光スポットより、住宅街の周辺に多い。店の中には、伝統的な製法で造るカンジャンを使う店もあれば、市販のカンジャンを使う店もある。伝統的な製法のカンジャンが使われたケジャンは、そうでないものよりやや高いものの、それでもインチョン(仁川)では他の地域よりは比較的手頃な値段で味わえる。

    「カンジャンケジャンの食べ放題の店」もあり、1人当たり2~3万ウォンでカンジャンケジャンをお腹いっぱい食べられる。だが、食べ放題の店のワタリガニは多少小ぶりで、市販のカンジャンを使うケースが多い。

    お店情報

    コッケダムダbyブルーベリーファーム・ナムドン(南洞)店

    ヨンピョンド(延坪島)産ワタリガニだけを使用するカンジャンケジャンの専門店だ。インチョン(仁川)ナムドン(南洞)区の郷土料理専門店から始まってインチョン(仁川)のあっちこっちに支店のあり、ブルーベリーファーム定食、カンジャンケジャン定食、麦熟成の干しイシモチ定食などが人気メニューだ。

    住所:

    インチョン広域市ナムドン区チャヌムルロ21

    電話番号:

    +82-32-463-7377

    看板メニュー:

    ブルーベリーファーム定食19,900ウォン、
    コッケダムダ定食15,900ウォン、
    麦熟成の干しイシモチ御膳21,000ウォン

    アクセス:

    インチョン(仁川)都市鉄道1号線・インチョン(仁川)ターミナル駅3番出口から約2.2㎞ /
    インチョン(仁川)総合バスターミナルから約2.1㎞

    駐車場:

    あり(5台)

    席数:

    52席

    メニュー言語:

    韓国語

    サムデ(3代)インチョン(仁川)ケジャン

    1962年に開店し、60年以上の歴史を持つ老舗で、その名の通り3代にわたって味を受け継いでいる。ヨンピョンド(延坪島)産ワタリガニのみを使用し、伝統的な製法で熟成させたカンジャンでカンジャンケジャンをつくる。低塩熟成製法でつくるので塩分が抑えられており、カンジャンケジャンの旨味をしっかり感じることができる。

    住所:

    インチョン広域市トン区クムゴクロ81ボンギル22

    電話番号:

    +82-32-766-0826

    看板メニュー:

    カンジャンケジャン定食25,000ウォン、
    味付けケジャン定食25,000ウォン

    アクセス:

    首都圏電鉄1号線(キョンイン(京仁)線)トウォン(桃源)駅3番出口から約650m

    駐車場:

    座席数:

    68席

    メニュー言語:

    韓国語、英語、日本語、中国語

    トンタレケジャン定食

    リーズナブルな価格でカンジャンケジャンが味わえる。カンジャンケジャン定食を注文すると、カンジャンケジャンと一緒に魚焼き、豚肉炒め、おかず(チヂミ、チャプチェ、ワカメスープなど)がテーブルいっぱいに並べられる。

    住所:

    インチョン広域市プピョン区ヨルムルロ59

    電話番号:

    +82-32-421-0335

    看板メニュー:

    カンジャンケジャン定食15,000ウォン

    アクセス:

    首都圏電鉄1号線(キョンイン(京仁)線)トンアム(銅岩)駅2番出口から約400m

    駐車場:

    あり(4台)

    席数:

    72席

    メニュー言語:

    韓国語

    皆が大好きな中華風韓国料理、ジャージャー麵

    いつ・どこで

    ジャージャー麵は、季節問わず一年中美味しく食べられる。

    韓国式ジャージャー麵は、インチョン(仁川)チャイナタウン(インチョン広域市チュン区チャイナタウンロ26ボンギル12-17)で誕生した。チャイナタウンには、独自の個性的なレシピを誇る歴史ある中華料理店が集まっているので、好みに合ったお店が選べる。

    艶のある黒いソースを麵に絡めて食べるジャージャー麵は中国を起源にしているが、韓国人の口に合うようにアレンジされた結果、「中華風韓国料理」という新しいジャンルの料理へと発展し、韓国人が最も好きな食べ物のひとつとして定着している。油の味と甘味が調和したジャージャー麵は、どこでも比較的安価で食べられる庶民的な料理であり、一度食べるとまた食べたくなる癖のある味だ。



    ジャージャー麵の歴史

    中国語では炸醬麵(Zhajiangmian、ジャージャンミェン)と表記されるジャージャー麵は、1883年にインチョン(仁川)が開港されてから韓国に伝わった。中でもインチョン(仁川)開港場付近にあった清の租界(外国人が自由に居住し、治外法権を享受できるように指定されたエリア)には清の人々が多く居住し、ここでジャージャー麵を作って食べたのが起源だと言われている。

    初期のジャージャー麵は、小麦と大豆を発酵させた調味料でソースを作り、豚肉や各種野菜、麵などと混ぜて食べる料理だった。ソースの色も、黒というよりは黄色に近かった。

    炸醬麵がジャージャー麵(韓国語ではチャジャンミョン)と名付けられたのは、ジャージャー麵発祥の地であるコンファチュン(共和春、1905年に「サンドン(山東)会館」という看板を掲げてオープンし、1912年に店名を「コンファチュン(共和春)」に変えた)でハングルで「チャジャンミョン(ジャージャー麵)」と記したのが始まりだ。1950年代からカラメル入りの黒い甜麵醤がジャージャー麵の主な調味料として使われた。韓国戦争直後にはアメリカから大量の小麦粉の援助を受けたことで、ジャージャー麵は韓国で本格的に普及し始めた。1960年代以降は、豚の飼育、タマネギの生産量の増加、政府の粉食の奨励政策などの影響で、ジャージャー麵は韓国で簡単に食べることのできる庶民の味方として定着した。

    ジャージャー麵の歴史については、元々は創業時からコンファチュン(共和春)が営業、現「ジャージャー麵博物館」を訪れると、詳しく知ることができる。

    ジャージャー麵の種類

    初期のジャージャー麵は、一般的なジャージャー麵と、ソース別盛りジャージャー麵の二種類しかなかった。二つの違いは、とくにソースと調理法にある。一般的なジャージャー麵はソースを作り置きしておいて、注文が入ったらソースを麵と一緒に軽く炒める。ソースに水溶き片栗粉を入れてとろみをつけるのが特徴だ。ソース別盛りジャージャー麵は注文と同時に玉ねぎと豚肉を炒め、さらにカラメル入りの甜麵醬を油で炒めて作る。ソースを一から作ることで玉ねぎのシャキシャキした食感と豚肉の旨味など、素材本来の味を生かすことができる。また、麵の上にソースをかけて出すジャージャー麵とは違って、麵とソースを別に盛る。

    次第にジャージャー麵は、基本のレシピに具材に変化をつけるなど、多彩に進化してきた。ユニ(ひき肉という意味の中国語に由来)ジャージャーは、肉や野菜を大きくカットする一般的なジャージャー麵とは違い、ひき肉と細かく刻んだ野菜を入れる。ユスル(細切り肉という意味の中国語に由来)ジャージャーは、肉と野菜を小指ほどの長さに細く切って入れる。中国四川料理のように辛い四川風ジャージャー麵、イカや海老などの魚介類を入れた海鮮ジャージャー麵もある。2人前以上のジャージャー麵を大皿に盛り付ける大皿ジャージャー麵もあり、普通、海鮮ジャージャー麵のようにソースに魚介類が入る。

    ジャージャー麵はどこで食べられるの?

    インチョン(仁川)チャイナタウンには、華僑が代々営む老舗の中華料理店が多い。そこでは様々な種類のジャージャー麵を味わうことができ、店によって独自のレシピや看板メニューがあってバラエティに富む。中には、黒い色のカラメル入り甜麵醤ではなく、黄色いソースを炒めてのせる昔ながらの白いジャージャー麵を提供するお店もある。白いジャージャー麵は、カラメル入り甜麵醬の代わりに中国の調味料(豆板醤または黄豆醤)のソースを麵に絡めて食べる料理だ。白いジャージャー麵といっても本当に白いわけではなく、どちらかというと麺と同じ黄色に近い。

    ジャージャー麵と同じく、中華風韓国料理の「ちゃんぽん」も外せない。ジャージャー麵とちゃんぽんは、フライドチキンとヤンニョムチキン、テンジャンチゲとキムチチゲのように、「どちらが好きか」と訊かれると返答に困るほど、韓国人が大好きな料理だ。一つに絞れない嬉しい悩みを解消すべく、ジャージャー麵・ちゃんぽんの半々盛りを出す店もある。器の真ん中に仕切りがあって、片方にはジャージャー麵が、もう片方にはちゃんぽんが入っていて、一度に二種類を味わえるので人気が高い。

    ジャージャー麵の作り方(1人前)

    [一般的なジャージャー麵]

    - 材料:カラメル入り甜麵醬(125g)、豚肉(150g、脂身の少ない部位)、玉ねぎ1個(約130g)、中華風冷凍麵250g(またはラーメンの麵1個)、サラダ油

    ①フライパンにサラダ油と肉を入れて炒める。

    ②さらに玉ねぎを加え、強火にしてさらに炒める。

    ③続いてカラメル入り甜麵醬を加えて炒め、砂糖と塩で味付けをする。

    ④玉ねぎが半透明になるまで炒める。

    ⑤具材を炒めながら、麵を茹でる(あらかじめ茹でておいてもOK)。麵のゆで汁はソースの粘度を調整するのに使う。

    ⑥茹でた麵の上に完成したジャージャーソースをのせ、お好みで千切りのキュウリ、半熟の目玉焼きを添える。

    [ソース別盛りジャージャー麵]

    - 材料:カラメル入り甜麵醬(125g)、豚肉(150g、脂身の少ない部位)、玉ねぎ1個(約130g)、中華風冷凍麵250g(またはラーメンの麵1個)、サラダ油、長ネギ(1本、根っこの方の白い部分)、キャベツ(250g)、にんにくのみじん切り(小さじ1)、砂糖(小さじ1)、カンジャン(小さじ2)

    ①フライパンにサラダ油を入れて中火で加熱する。サラダ油が熱くなったら、ざく切りにした野菜(キャベツ、玉ねぎ、長ネギ)を入れて、嵩が減るまで炒める。

    ②豚肉を入れてきつね色になるまで炒めた後、カラメル入り甜麵醬とニンニクを加えて炒める。

    ③砂糖とカンジャンで味付けをする。

    ④炒める間に麵を茹でるか、ご飯を用意する(麵にかけるとジャージャー麵、ご飯にかけるとジャージャー飯になる)。

    ⑤好みに応じてキュウリの千切りや半熟卵を加え、イカ、エビなどの魚介類を加えても相性が良い。

    お店情報

    テファウォン

    1926年から3代続く中華料理店だ。インチョン(仁川) チャイナタウンの中でもかなり初期段階にオープンした中華料理店のひとつで、今でも昔ながらの味を守り続けていることで広く知られる。手作りカラメル入り甜麵醬と旬の食材を炒めて作るインチョン(仁川)郷土ジャージャーは、市販のカラメル入り甜麵醬で作るジャージャー麵とは一線を画す深い味わいが感じられる。ベジタリアンメニューも用意されている。

    住所:

    インチョン広域市チュン区チャイナタウンロ59ボンギル10

    電話番号:

    +82-32-766-7688

    看板メニュー:

    インチョン(仁川)郷土ジャージャー9,000ウォン、
    白いジャージャー9,000ウォン、
    ジャージャー6,500ウォン

    アクセス:

    首都圏電鉄1号線(キョンイン(京仁)線)インチョン(仁川)駅1番出口から約270m、チャイナタウン内

    駐車場:

    あり(13台)

    席数:

    240席

    メニュー言語:

    韓国語、英語、中国語

    シンスン飯店

    コンファチュン(共和春)の創業者であるウ・ヒグァンさんの孫娘が経営している。豚の挽肉と刻んだ野菜を入れた甘いソースが魅力的なユニジャージャー麵が看板メニュー。ソース別盛りジャージャー麵のように麵とソースが別盛りで、半熟の目玉焼きも添えられる。もっちりとした食感のもち米酢豚、海鮮おこげのあんかけも人気が高い。

    住所:

    インチョン広域市チュン区チャイナタウンロ44ボンギル31-3

    電話番号:

    +82-32-762-9467

    看板メニュー:

    ユニジャージャー麵10,000ウォン、
    もち米酢豚(小)30,000ウォン

    アクセス:

    首都圏電鉄1号線(キョンイン(京仁)線)インチョン(仁川)駅1番出口から約100m、チャイナタウン内

    駐車場:

    なし(チャイナタウン公営駐車場が利用可能、インチョン(仁川)広域市チュン区チャイナタウンロ44ボンギル28-12)

    席数:

    86席

    メニュー言語:

    韓国語、英語

    マンダボク

    昔ながらの製法で作られた「百年ジャージャー」が味わえる。「白いジャージャー」と呼ばれる昔ながらのジャージャー麵の一種で、豚肉、魚介類、各種野菜とともにカンジャンをベースにしたソースを麵に絡めて食べる。

    住所:

    インチョン広域市チュン区チャイナタウンロ36

    電話番号:

    +82-32-773-3838

    看板メニュー:

    白い百年ジャージャー8,000ウォン、
    白いちゃんぽん10,000ウォン

    アクセス:

    首都圏電鉄1号線(キョンイン(京仁)線)インチョン(仁川)駅1番出口から約320m、チャイナタウン内

    駐車場:

    あり(8台)

    席数:

    110席

    メニュー言語:

    韓国語、英語、中国語

    レビュー

    ジャージャー麵博物館

    1983年にコンファチュン(共和春)が廃業するまで使われた建物を改装し、博物館としてオープン。ジャージャー麵の誕生と変遷について知ることができ、ジャージャー麵の種類や作り方も紹介している。インチョン(仁川)チャイナタウンの歴史やコンファチュン(共和春)の関連資料も展示されている。

    住所:

    インチョン広域市チュン区チャイナタウンロ56-14

    電話番号:

    +82-32-773-9812

    開館時間:

    09:00~18:00/休館日は毎週月曜日(ただし、月曜日が祝日の場合は翌日休館)

    観覧料金:

    大人1,000ウォン、
    青少年700ウォン、
    軍人・警察官500ウォン、
    子供は無料

    駐車情報:

    なし(チャイナタウン公営駐車場が利用可能、インチョン(仁川)広域市チュン区チャイナタウンロ44ボンギル28-12)

    長年韓国人の味覚を魅了してきた牛カルビ焼き、スウォン(水原)王カルビ

    いつ・どこで

    スウォン(水原)王カルビは、味付けした牛カルビが使われるので、季節問わず一年中いつでも美味しく食べることができる。

    スウォン(水原)の各地に、王カルビの老舗が点在している。

    スウォン(水原)を代表する料理の一つ、スウォン(水原)王カルビは、大きな牛の肋骨に薄く切った肉をくるくる巻いて提供する料理で、塩味をベースにしたタレに肉を漬け込んでいるため、柔らかい食感が楽しめる。



    スウォン(水原)王カルビの歴史

    スウォン(水原)王カルビは、1945年にオープンした「ファチュノク(華春屋)」というヘジャンクク(酔い覚ましスープ)屋で誕生した。店がスウォン(水原)牛市場の隣にあったため、ヘジャンククに牛カルビをふんだんに使ったところ、他店に比べて牛カルビがたっぷり入っていると人気を集めた。その後、ファチュノク(華春屋)はヘジャンクク以外にお客さんに喜んでもらえる新メニューを開発しようと考案を重ねた末、1956年から味付け牛カルビの一種のスウォン(水原)王カルビを提供し始めた。

    その後、ファチュノク(華春屋)は、有力政治家も訪れるようになり、全国的に名を馳せた。パク・ジョンヒ(朴正煕)前大統領もファチュノク(華春屋)で王カルビをよく食べたといわれている。

    1980年代初めにファチュノク(華春屋)が廃業すると、そこで働いていた料理人たちがスウォン(水原)のあちこちに散らばり王カルビ専門店をオープンした。その後、スウォン(水原)王カルビはスウォン(水原)を代表する名物料理として定着し、現在スウォン(水原)には30店以上の王カルビの大型専門店があり、賑わいを見せている。またスウォン(水原)歴史博物館には、昔のファチュノク(華春屋)が再現されている。

    スウォン(水原)王カルビの特徴

    スウォン(水原)王カルビは、他の地域のカルビに比べると、2つの面で大きな違いがある。まずは味付けだ。カンジャンの塩味と砂糖の甘さがメインの一般的なカルビの味付けとは異なり、スウォン(水原)王カルビではカンジャンの代わりに再生加工塩(天日塩を水に溶かして不純物を取り除き、再結晶化した塩)を味のベースにする。再生加工塩と砂糖を6:1で入れて基本調味料を作り、さらにコショウ、ごま油、おろしニンニクなどを加えて味を完成させる。

    また、大きさにも特徴がある。スウォン(水原)王カルビの大きさは、他の地域のものとは明らかに違う。スウォン(水原)王カルビと同じ時期に誕生したイドン(二東)カルビは、牛の肋骨が3~5cmしかないのに対し、初期のファチュノク(華春屋)の肋骨は長さが17cmにも及んだという。今はそれよりは小さくなったが、それでも10cmを軽く超えている。「王カルビ」と呼ばれる所以だ。

    赤身と脂身の調和、牛カルビにまつわる話

    牛カルビは、牛の背骨を中心に首から腰まで13本の骨が左右対称に繋がっている。中でもスウォン(水原)王カルビに使われる部位は、中央の骨に限られる。赤身と脂身のバランスがほどよく、最も豊かな味わいが楽しめる部位だからだ。

    スウォン(水原)王カルビには真心が込められている。肋骨の周りの脂肪や筋膜をすべて取り除かなければならないので、他の部位に比べて手間と時間がかかるからだ。スウォン(水原)王カルビは、こうして丁寧に骨の手入れをした後、肉を薄く切ってタレに漬け込み、しっかり味の付いた肉を骨にくるくる巻いて完成させる。

    ちなみに、真ん中の骨を基準に前の方の骨はカルビの蒸し物、後ろの骨はカルビタンに使われる。スウォン(水原)王カルビのお店でカルビの蒸し物やカルビタンがメニューに多いのはそのためだ。

    スウォン(水原)王カルビを美味しく食べる方法

    スウォン(水原)王カルビは、基本的にご飯と一緒に食べるが、水冷麵やビビン冷麺などと一緒に食べるとより一層美味しさが増す。

    韓国固有の食べ物である冷麺は、水冷麵とビビン冷麺に大きく分けられる。水冷麵は、肉を煮込んだ冷たい出汁、またはに大根の水キムチの汁に麺を入れたものだ。ビビン冷麺は、ピリ辛味の麺料理で、調味料にはコチュジャン、酢、唐辛子粉、おろしニンニクなどが入る。

    お店情報

    ファチョンカルビ

    スウォン(水原)王カルビをリーズナブルな価格で味わえるカルビ定食メニューがあるお店。カルビ定食はランチメニューで、王カルビ焼きと一緒にご飯と様々なおかずが並ぶので、ボリューム満点だ。スウォン(水原)ファソン(華城)や、いわゆる「ヘンニダンギル」と呼ばれるヘングン(行宮)洞一帯から近いため、観光の後に訪れるのに適している。

    住所:

    キョンギ道スウォン市パルタル区チャンリョンデロ41ボンギル12

    電話番号:

    +82-31-216-5005

    看板メニュー:

    輸入味付けカルビ定食32,000ウォン、
    輸入カルビ定食35,000ウォン、
    韓牛味付けカルビ定食35,000ウォン、
    韓牛カルビ定食45,000ウォン

    アクセス:

    スインブンダン(水仁盆唐)線メギョ(梅橋)駅6番出口から約2.2㎞、パルタル(八達)区庁の裏(駐車場の入口付近)

    駐車場:

    あり(4台)、近くのパルタル(八達)区庁公営駐車場が利用可能

    席数:

    244席

    メニュー言語:

    韓国語

    ポンスウォン(本水原)カルビ

    50年以上の歴史を持つポンスウォン(本水原)カルビは、スウォン(水原)カルビの3大名店として知られている。肉本来の味を楽しめるカルビと、旨味が凝縮された味付けカルビから選ぶことができる。

    住所:

    キョンギ道スウォン市パルタル区チュンブデロ223ボンギル41

    電話番号:

    +82-31-211-8434

    看板メニュー:

    カルビ(450g)65,000ウォン、
    味付けカルビ(450g)60,000ウォン、
    カルビタン(平日ランチのみ)18,000ウォン

    アクセス:

    シンブンダン(新盆唐)線クァンギョジュンアン・アジュデ(光教中央・亜州大)駅1番出口から約2.4㎞

    駐車場:

    あり(80台)

    席数:

    630席

    メニュー言語:

    韓国語、英語

    サンブジャカルビ・ウォンチョン(遠川)店

    1983年からスウォン(水原)王カルビの伝統を受け継いでいる。堅炭で焼くので豊かな風味と深い味わいが特徴的だ。ケジャンなど色々なおかずも、すっきりとした味わいで美味しいと評判だ。

    住所:

    キョンギ道スウォン市ヨントン区チュンブデロ335

    電話番号:

    +82-31-211-8959

    看板メニュー:

    米国産カルビ(280g) 45,000ウォン、
    米国産味付けカルビ(300g) 43,000ウォン、
    韓牛カルビ(180g) 69,000ウォン、
    韓牛味付けカルビ(200g) 53,000ウォン

    アクセス:

    ヨンイン(龍仁)ソウル高速道路フンドク(興徳)ICから約3.8㎞ /
    シンブンダン(新盆唐)線クァンギョジュンアン・アジュデ(光教中央・亜州大)駅1番出口から約2㎞

    駐車場:

    あり(204台、建物の地下駐車場)

    席数:

    118席

    メニュー言語:

    韓国語、英語、日本語

    ヨンポカルビ

    かつての銭湯や旅館だった場所を飲食店に改装しており、今でも銭湯の名残で煙突が残っている。比較的リーズナブルな価格でスウォン(水原)王カルビを味わうことができ、平日ランチの時間だけ販売されるカルビタンは、数量が限られているため、早めに行かないとすぐに売り切れてしまう。

    住所:

    キョンギ道スウォン市パルタル区チョンジョロ906ボンギル56-1

    電話番号:

    +82-31-255-1337

    看板メニュー:

    カルビ(450g)60,000ウォン、
    味付けカルビ(450g)55,000ウォン、
    カルビ味付け定食31,000ウォン、
    カルビ定食33,000ウォン

    アクセス:

    首都圏電鉄1号線(キョンブ(京釜)線)ファソ(華西)駅1番出口から約3.1㎞、スウォン(水原)ファソン(華城)ファホンムン(華虹門)前

    駐車場:

    あり(3台)

    席数:

    280席

    メニュー言語:

    韓国語、英語、日本語

    西洋の食材と韓国のレシピが融合したプデチゲ

    いつ・どこで

    プデチゲは、季節の食べ物ではないが、主材料の白菜キムチが最も美味しい冬(12~3月)が一番美味しい。寒い冬に体が温まるチゲ類を食べると、心までほっこりした気持ちになるだろう。

    ウィジョンブ(議政府)プデチゲは、米軍の駐屯地で誕生した。ウィジョンブ(議政府)モノレール ウィジョンブジュンアン(議政府中央)駅2番出口の近くに、「ウィジョンブ(議政府)プデチゲ通り」がある。

    プデチゲは、キムチなどを煮込む韓国のチゲに、ソーセージやハムなどを加えた料理で、20世紀半ば、韓国の激動の時代にはじめて作られた。当時としては珍しい西洋の食材と韓国のレシピを融合させたプデチゲは、世界の文化を韓国独自の感性で再解釈するK-Cultureとも通じるところがある。



    プデチゲの歴史

    プデチゲは熟成キムチをよく煮込んだチゲに、米軍基地から流出したソーセージ、ハム、豆の缶詰などを使って作られたことから由来する。韓国戦争の後、キョンギ(京畿)道ウィジョンブ(議政府)には大規模な米軍基地が造られ、ウィジョンブ(議政府)第一市場周辺に1960年代からプデチゲのお店が続々と開店したことでプデチゲ通りが形成されたという。ウィジョンブ(議政府)市はそこに、2008年に「ウィジョンブ(議政府)プデチゲ通り」という大きなアーチ型の看板を設置した。ウィジョンブ(議政府)の他に、米軍が駐屯する地域のピョンテク(平沢)、ソンタン(松炭)などもプデチゲで広く知られるようになった。

    だが、プデチゲが最初からチゲ形式で食べられたわけではない。ソーセージや野菜をはじめ、キムチ、コチュジャン、唐辛子粉を入れてフライパンで炒める形式だったという。このプデ炒めに出汁が加わり、チゲ形式に発展していった。

    プデチゲの材料の相性

    韓国人はキムチが熟し始めると、よくキムチチゲにして食べる。通常は豚肉やツナを入れて一緒に煮込み、好みに合わせて豆腐、餅、春雨などを入れる。キムチには、どんな食材を入れてもすべてを調和させる不思議な力がある。

    キムチはソーセージやハムまでもマッチするほど奥深い食べ物だ。キムチはさっぱりとした酸味と食物繊維が豊富だが、タンパク質と脂肪は少ない。その反面、ソーセージやハムはタンパク質と脂肪が豊富だが、食物繊維が足りない。このようにプデチゲに入る食材は、お互い足りない栄養素を補う役割を果たしている。脂っこくなりがちなハムとソーセージにキムチと韓国の調味料を入れることで、辛さを加えて脂っこさを抑えるのなど、栄養面だけでなく味の面でもお互いを補い合っている。

    元祖プデチゲが味わえる場所

    プデチゲは歴史こそ短いものの、今では全国どこでも食べられる代表的なチゲ料理の一つとなった。それでもなお、「プデチゲ」と言えば、やはりウィジョンブ(議政府)が思い浮かぶ。中でもプデチゲの元祖であり、出発点は「ウィジョンブ(議政府)プデチゲ通り」にある「オデン食堂」だ。1960年創業時は、練り物のおでんを売る屋台だった。その後、米軍基地の食材とキムチを混ぜて煮込んだチゲが人気を集めると、プデチゲ専門店へと変貌を遂げた。

    ウィジョンブ(議政府)にはオデン食堂の他にも長い歴史を誇るプデチゲのお店がたくさんある。昔のように米軍基地から流出したソーセージやハムを使うことはないが、昔ながらの方法で作ったキムチを入れるので、初期のプデチゲのような懐かしい味が楽しめる。

    「追加具材」で完成されるプデチゲ

    様々な具材を次々と追加して食べるのもプデチゲの醍醐味だ。 「追加具材」は韓国の独特な食文化といえるもので、すでに完成した料理に、材料を追加してさらに豊かな味に仕上げることができる。ラーメン、春雨、うどんなどの麺類はもちろん、餃子、餅、挽肉など多彩な具材を好きなだけ注文できる。具材をいろいろと味わいたいなら、少量ずつ具材が揃った「追加具材の盛り合わせ」を注文すると良い。

    プデチゲがある程度煮えたら、麺を先に食べよう。麺は他の具材に比べて伸びやすく、煮過ぎると味が落ちるからだ。その後はピリ辛スープがハムやソーセージによく染み込んだら、具材とスープをご飯と一緒に食べたり、お酒のおつまみにして食べると良い。

    お店情報

    オデン食堂・ウィジョンブ(議政府)本店

    議政府で初めてプデチゲを提供した3代続く老舗店。小さな屋台としてスタートしたが、プデチゲが人気となり、メインメニューをプデチゲに変えて今日に至っている。

    住所:

    キョンギ道ウィジョンブ市ホグクロ1309ボンギル7

    電話番号:

    +82-31-842-0423

    看板メニュー:

    プデチゲ11,000ウォン、
    2人前セット31,000ウォン、
    プデ鉄板炒め(2名様以上注文可能)15,000ウォン

    アクセス:

    ウィジョンブ(議政府)モノレール・ウィジョンブジュンアン(議政府中央)駅2番出口から約70m

    駐車場:

    有(30台)

    席数:

    48席

    メニュー言語:

    韓国語、英語、日本語、中国語

    ホームページ:

    www.odengsikdang.com (韓国語)

    チョントンプデゴギ

    1973年創業のプデチゲ専門店。ピリ辛のキムチと丁寧に煮込んだ出汁が特に美味しい。スープのないプデ炒めも人気が高い。

    住所:

    キョンギ道ウィジョンブ市ホグクロ1102

    電話番号:

    +82-31-872-7814

    看板メニュー:

    プデチゲ(1人前)10,000ウォン、
    プデ炒め(2人前)24,000ウォン

    アクセス:

    ウィジョンブ(議政府)モノレール・フンソン(興宣)駅1番出口から約1㎞

    駐車場:

    あり(6台)

    席数:

    60席

    メニュー言語:

    韓国語

    シルビ食堂

    1965年創業、独自のレシピで調味料を開発しており、特別な味のプデチゲとプデ炒めを提供している。

    住所:

    キョンギ道ウィジョンブ市ホグクロ1123ボンギル12

    電話番号:

    +82-31-872-1269

    看板メニュー:

    プデチゲ10,000ウォン、
    プデ炒め10,000ウォン

    アクセス:

    ウィジョンブ(議政府)モノレール・フンソン(興宣)駅1番出口から約800m

    駐車場:

    あり(4台)

    席数:

    30席

    メニュー言語:

    韓国語

    鉄板でジュージューと焼いて食べる絶品中の絶品、チュンチョン(春川)タッカルビ

    いつ・どこで

    タッカルビは、季節を問わず一年中いつ食べても美味しい。だが、タッカルビに使われる野菜本来の味を存分に楽しみたいなら、野菜が甘みを増す晩冬から春にかけてが最も美味しい季節と言える。

    チュンチョン(春川)は、タッカルビが誕生し、全国的に広まった場所だ。チュンチョン(春川)ミョンドン(明洞)タッカルビ通り(カンウォン特別自治道チュンチョン市クムガンロ一帯)をはじめ、ナムチュンチョン(南春川)駅交差点、ソヤンガン(昭陽江)ダム前の商店街(カンウォン特別自治道チュンチョン市シンセムバッロ一帯)に、タッカルビのお店が密集している。

    カルビ焼きは韓国人の好きな料理のひとつとして常に挙げられる。一般的にカルビ焼きは骨付きの肉を焼く料理として連想される。カルビといえば牛カルビ焼きを真っ先に思い浮かべるのもそのためだ。だが、骨付きのものをそのまま焼く料理でカルビという名が付くものがある。タッカルビがその代表格だ。



    チュンチョン(春川)タッカルビの始まり

    タッカルビは、本来、鶏肉プルゴギという名前だった。1970年、豚カルビを提供していたお店が鶏肉プルゴギのお店という意味で「タクプルゴギジプ」と店名を変えたのがタッカルビの始まりだ。当時、豚肉が手に入らなくなると鶏肉を味付けして炭火で焼いて出すようになったが、それが名物料理となって人気を集めると、店名と看板メニューを変えたのだ。その後、このお店が繁盛しているのを見て多くの人が競って鶏肉プルゴギを売り始めた。

    「チュンチョン(春川)タッカルビ」というと、鉄板でジュージューと焼いて食べるものを思い浮かべるが、実は初期のタッカルビは炭火で焼くものだった。その後、ガスコンロが普及すると、面倒な炭火の代わりに手軽に鉄板で焼く鉄板タッカルビへと変貌を遂げた。また、骨なし鶏肉が登場したことで、当初は骨付きの鶏肉を味付けしていたスタイルから脱却するに至った。鶏の様々な部位の骨なし肉を使うようになり、さらに味と食感を高めるために鶏のもも肉だけを使うようになった。長時間火を通す必要があった骨がなくなると、キャベツや玉ねぎなどの野菜を加えて調理する方法まで生まれた。

    鉄板タッカルビと炭火タッカルビ、どっちが本物のタッカルビ?

    普通、鉄板タッカルビが一般的なタッカルビだと思われがちだが、チュンチョン(春川)では、鉄板タッカルビと炭火タッカルビ、この二つのタイプのタッカルビが共存している。この2つの料理は全く別物だが、チュンチョン(春川)の人々は、両方とも「タッカルビ」と呼ぶ(ただ、炭火で焼くタッカルビは「炭火タッカルビ」という名前で区別して呼ぶこともある)。

    鉄板タッカルビは、コチュジャン味のタレに漬け込んだ鶏肉に、キャベツ、サツマイモ、玉ねぎ、長ネギなどの野菜を入れ、油を敷いた鉄板で炒める。一緒に出てくる包み野菜にこんがり焼かれたタッカルビを包んで食べたり、ニンニクと唐辛子を添えて食べるなど、様々な食材の調和を味わいながら楽しめる。最初はタッカルビだけを、次はタッカルビを野菜に包んで食べてみよう。そしてタッカルビを食べ終わった後に残ったタレにご飯を入れてチャーハンにしてもらうこともできる。食事の後にチャーハンを追加注文するのは、韓国人の間ではある意味、「おきまりのシメコース」だ。チャーハンを注文すると、鉄板に残ったタレとチャーハン専用の調味料を加えてご飯を炒めてもらえる。チャーハンを作る従業員の華麗な手さばきも目を楽しませてくれる。

    炭火タッカルビは、鉄板タッカルビに比べて鶏肉とタレの味を重視した料理だ。味付けは塩、カンジャン、コチュジャンなどがベースとなり、塩は鶏肉本来の美味しさを、カンジャン味付けは甘じょっぱい味を、コチュジャンの味付けはピリ辛な味を楽しませてくれる。いろいろな種類の調味料を一度に味わいたい場合は、塩、カンジャン、コチュジャンの順に焼いて食べるのがおすすめだ。こうすることで、タレを焦がすことなくタッカルビを最後まで楽しむことができる。

    様々な食材と一緒に食べる鉄板タッカルビ

    鉄板タッカルビは、様々な具材を追加して食べる楽しみがある。 餅やサツマイモ、チーズ、麺など様々な追加具材を注文できるので、好みに合わせてチョイスしてみよう。(「追加具材」は韓国の独特な食文化といえるもので、すでに完成した料理に材料を加えることで味がさらに豊かになる)

    鉄板タッカルビでは、鶏肉の次にキャベツが味の決め手になる。キャベツは冬が旬なので、冬に食べる鉄板タッカルビはキャベツの甘みをより濃く感じることができる。

    お店情報

    ウミタッカルビ本店

    1970年創業でチュンチョン(春川)タッカルビ通りの名声を築き上げた名店の一つ。味付けした鶏肉を鉄板で焼いてもらったり、トク(韓国餅)やチーズなど様々な追加具材も注文できる。特に1日50食限定の辛味タッカルビが人気を集めており、カンジャンタッカルビ、ナチュラルチーズタッカルビなど、メニューのバリエーションも豊富だ。

    住所:

    カンウォン特別自治道チュンチョン市クムガンロ62ボンギル4

    電話番号:

    +82-33-253-2428

    看板メニュー:

    元祖タッカルビ 15,000ウォン、
    辛味タッカルビ 16,000ウォン、
    お子様向けカンジャンタッカルビ 15,000ウォン、
    ナチュラルチーズタッカルビ 19,000ウォン

    アクセス:

    キョンチュン(京春)線(ITX)チュンチョン駅1番出口から約1.2㎞

    駐車場:

    なし

    席数:

    120席

    メニュー言語:

    韓国語

    元祖スップルタクプルゴギジプ

    チュンチョン(春川)タッカルビの元祖といわれるお店で、味付けした鶏肉を炭火で焼くという初期の調理法をそのまま受け継いでいる。昔ながらのテンジャンとカタクチイワシで味付けしたテンジャンチゲも常連さんの間では絶品として知られている。

    住所:

    カンウォン特別自治道チュンチョン市ナグォンギル28-4

    電話番号:

    +82-33-257-5326

    看板メニュー:

    骨なしタッカルビ14,000ウォン、
    骨付きタッカルビ14,000ウォン、
    カンジャンタッカルビ14,000ウォン

    アクセス:

    キョンチュン(京春)線(ITX)チュンチョン駅1番出口から約1.2㎞

    駐車場:

    なし(ナグォン路上駐車場が利用可能)

    席数:

    150席

    メニュー言語:

    韓国語

    ケルク

    地鶏で炭火タッカルビを作るお店。塩で味付けしたタッカルビは他にソースが必要なく十分美味しい。地鶏の淡白な味とコクのある風味を存分に楽しめる。チュンチョン(春川)とホンチョン(洪川)の間に位置しているので、両地域を旅する時にとくにおすすめのお店。

    住所:

    カンウォン特別自治道チュンチョン市ナムサン面キムユジョンロ351

    電話番号:

    +82-33-262-8623

    看板メニュー:

    特選塩タッカンマリ(3~4人前)120,000ウォン、
    塩タクパンマリ(2人前)50,000ウォン、
    塩タッカンマリ(3~4人前)87,000ウォン

    アクセス:

    ソウル・ヤンヤン(襄陽)高速道路ナムチュンチョン(南春川)料金所から約2.1㎞

    駐車場:

    あり(15台)

    席数:

    84席

    メニュー言語:

    韓国語

    韓国の名品牛、韓牛

    いつ・どこで

    いつでもスーパーで購入できる牛肉は、味が一定だと思われがちだ。だが、牛肉にもちゃんと旬がある。春と秋は暑くもなく寒くもないため、牛も気楽に餌を食べて栄養を蓄えることができる。したがって、4月~6月、10月~11月は、牛肉の味わいもより豊かになる。

    フェンソン(横城)郡庁(カンウォン特別自治道フェンソン郡テギロ15)とフェンソン(横城)市外バスターミナル(カンウォン特別自治道フェンソン郡フェンソン邑フェンソンロ377)が位置する街にフェンソン(横城)韓牛の専門店が集まっている。



    韓牛の品種と等級

    韓牛には様々な品種がある。かつては毛色で品種を区別していたこともあり、なんと9種類もあったという。(キム・ドンジン、『朝鮮の生態環境史』、プルンヨクサ、60p) 現在は、ざっくりと黒毛、黒とオレンジの毛が混ざったもの、オレンジ色の毛の3種類に分けている。

    でも実は韓牛の味の決め手は、毛色ではなく、飼育期間だ。韓国に輸入される牛は飼育期間が18~24か月だが、韓牛は31~34か月と長い。脂肪の旨味を引き立たせるために飼育期間を伸ばしているのだ。わずか8か月から1年程度の差だがその間に脂肪がつき、味や風味、食感が豊かになるという。

    韓牛は、筋肉の中の脂肪率(霜降り)、きめ、成熟度、肉の色、脂肪の色を考慮して等級(ランク)が分けられる。脂の旨味が際立つ最上級の1++からあっさりとした味とコストパフォーマンスが魅力の3等級まで幅広くランク付けされる(1++、1+、1、2、3等級の順)。

    先人も好んで食べた韓牛

    韓国人のDNAには韓牛の味が刻まれているとよく言われる。それだけ韓国人の食文化に韓牛は欠かせないということだ。朝鮮時代のヨンジョ(英祖)のとき、一日にと殺する牛の数が1000頭に達したという記録がある。(キム・ドンジン、『朝鮮の生態環境史』、プルンヨクサ、72p)当時の人口は約700万人で、現在の人口の1/7の水準だったことを考えると、おびただしい数字といえる。参考までに、2023年現在の韓牛の年間と殺数は約93万頭で、一日平均約2,500頭という計算になる。(『2023年畜産物等級判定統計年報』、畜産物品質評価院、5p)

    また、先人たちは「煖炉会」という集まりで、一緒に韓牛を楽しんだという。主に冬に行われるこの会では、炭火を焚いた火鉢を囲んで、その上にポンチョル(燔鉄、チヂミを焼いたり、肉などを炒めるときに使う、釜の蓋のような形の調理器具)を乗せて熱し、味付けした肉を焼いて食べた。肉を焼いた後、ポンチョルに出汁を注ぎ、そこでスープ料理を作って食べることもあり、これが寄せ鍋やプルコギと呼ぶ料理の原型と言える。

    韓牛はどこで食べられるの?

    韓国では全国どこでも韓牛を味わうことができる。清らかな自然に囲まれたカンウォン(江原)特別自治道フェンソン(横城)郡は、昔から韓牛の里と呼ばれており、韓国で初めて地名が付いた韓牛ブランドを育てた地域でもある。フェンソン(横城)韓牛は、フェンソン(横城)の肌寒い気候で育てられ、脂肪の蓄積率が高く、肉質が柔らかい上に抜群の旨味を誇る。

    フェンソン(横城)で韓牛を専門的に販売する店は大きく3種類に分けられる。精肉食堂、韓牛専門店、そして韓牛食べ放題のお店だ。精肉食堂は精肉店と肉を焼いて食べられる飲食店を組み合わせた、韓国ならではのユニークなタイプのお店だ。お店に入ると、韓牛が部位別に並んでいる冷蔵ケースの中から、食べたい肉を選んで購入し、それを持ってテーブル席に着く。お店によって多少の違いはあるが、一般的に1人あたり3,000~4,000ウォンのテーブルチャージがかかる。テーブルチャージには包み野菜、サムジャン、基本のおかずなどが含まれている。テーブルの真ん中に置かれた鉄板が熱くなったら、購入した牛肉を自分で乗せて焼いて食べる。精肉食堂は、予算に合わせて様々なお肉を自分で選ぶことができ、韓牛専門店に比べてリーズナブルな価格で韓牛を楽しめるのもメリットだ。韓牛焼きの他に、韓牛入りのプルゴギ、コムタン、ユッケビビンバなども味わえる。

    韓牛専門店では、従業員が肉を焼いてくれるなどのサービスが提供され、テーブルに並ぶおかずもさらに豪華だ。金銭的な余裕がある場合や、牛肉をおいしく焼く自信がない場合は、韓牛専門店がおすすめだ。しかも韓牛専門店は、質の良い炭を使った炭火焼きの場合が多い。韓牛を炭火で燻製して焼くと、脂が抜けてさっぱりした味が楽しめる上に、肉にほのかに染みた炭火の香りも絶品だ。

    手頃な価格で韓牛をたっぷり味わいたいなら、韓牛食べ放題のお店を訪れてみよう。韓牛食べ放題のお店では、主に湿式熟成された2、3等級の韓牛が出される。1人当たり3万ウォン台が相場で、韓牛専門店で提供される1人前のロースの値段より安い。入店時に前払いし、案内された席に座ると、炭を入れた火鉢とお肉が提供される。最初だけ肉を用意してくれるお店もあり、包み野菜、薬味などを含む基本的なおかずは、ビュッフェボードから自分で取って来る必要がある。食べ放題のお店では、お肉を好きなだけ取ってきて焼いて食べられる。脂身の少ない2、3等級の牛肉は脂肪が少ないので、表面がこげ茶色になるまでよく焼くと美味しくなる。

    韓牛はどうやって食べれば良いの?

    脂身の少ない牛肉のステーキを食べるときは、レアやミディアムの焼き加減を選ぶことが多いが、これは熟成させた肉に限った話といえる。熟成させた肉は表面だけに火を通す焼き方がよいが、韓国の焼肉店では、熟成させていない肉を提供することが多い。熟成させていない脂身の少ない牛肉は、十分に火を通すことで歯ごたえとコクが引き立つ。

    韓牛焼きを食べるときは、ニンニクと青唐辛子と一緒に食べると良い。特にニンニクは肉と一緒に火で焼くこともあるが、焼くことでニンニクの辛味が和らぎ、甘くて美味しくなる。お店によってはごま油を入れた小鉢にニンニクを入れて焼いてくれるところもある。

    ご飯やククス(素麺)、冷麺、テンジャンチゲなどは肉と相性が良いのでこれらと一緒に食べてみよう。とくにフェンソン(横城)地域の飲食店のメニューにテンジャンチゲがのっていたら、追加注文する価値がある。フェンソン(横城)郡が属するカンウォン(江原)地域は他の地域と違ってテンジャンの色が黒く、これを「マクチャン」と呼ぶ。色が黒いのは、テンジャンを造るときにカンジャンを他の地域より少なく取り除くからだ。このマクチャンで作ったテンジャンチゲは普通のテンジャンチゲより濃厚で深い味が特徴だ。ちなみに、長時間焼いた肉を切ってテンジャンチゲに入れると、スープの味が格段に良くなる。

    お店情報

    フェンソン(横城)畜協韓牛プラザ本店

    フェンソン(横城)畜協直営のお店。フェンソン(横城) 地域で育てられた最高級の韓牛を精肉売り場で購入し、その場で焼いて食べることができるシステムになっている。人数に応じたテーブルチャージを支払うとおかずが提供され、足りない場合はビュッフェ形式で食べられる。プルゴギ、韓牛スープなど、韓牛を使った様々な料理も一緒に販売している。本店のほか、ウチョン(隅川)店、セマル店も運営している。

    住所:

    カンウォン特別自治道フェンソン郡フェンソン邑フェンソンロ337

    電話番号:

    +82-33-343-9908

    看板メニュー:

    ブッシュ盛り合わせ62,000ウォン、
    ワンダフル盛り合わせ49,000ウォン、
    プルゴギ18,000ウォン、
    韓牛スープ15,000ウォン

    アクセス:

    中央高速道路フェンソン(横城)料金所から約3.4㎞ /
    フェンソン(横城) 市外バスターミナルから約600m

    駐車場:

    あり(100台以上)

    席数:

    200席

    メニュー言語:

    韓国語、英語

    サムジョン

    霜降り等級の中で最高等級の1++(BMS, Beef Marbling Score: 9)のフェンソン(横城)韓牛のみを提供するお店。抗生物質なしで育てた韓牛の肉を独自のノウハウで湿式熟成させてから販売する。料理に使われる食材はすべて無農薬で栽培されているので、安心して食べられる。一部屋を丸ごと使える独立した構造になっており、担当の従業員が直接韓牛を焼いてくれる。

    住所:

    カンウォン特別自治道フェンソン郡トゥンネ面キョンガンロ4536-3

    電話番号:

    +82-33-342-3365

    看板メニュー:

    サムジョン韓牛140,000ウォン

    アクセス:

    ヨンドン(嶺東)高速道路トゥンネ(屯内)料金所から約740m

    駐車場:

    有(10台)

    席数:

    28席(4人掛け4室、6人掛け2室)

    メニュー言語:

    韓国語

    韓牛食べ放題ラオニア

    等級の低い韓牛を食べ放題で販売している。様々な部位を一つにまとめて販売する方式なので、色々な部位の牛肉を食べ比べる楽しみがある。

    住所:

    カンウォン特別自治道フェンソン郡トゥンネ面コウォンロ398ボンギル6

    電話番号:

    +82-70-4145-9100

    看板メニュー:

    韓牛食べ放題(1人前)37,000ウォン

    アクセス:

    ヨンドン(嶺東)高速道路トゥンネ(屯内)料金所から約5㎞ /
    キョンガン(京江)線(KTX)トゥンネ(屯内)駅2番出口から約2.7㎞

    駐車場:

    有(20台)

    席数:

    368席

    メニュー言語:

    韓国語

    レビュー

    フェンソン(横城)韓牛体験館

    フェンソン(横城)韓牛を展示・販売し、体験スペースなども備えている。フェンソン(横城)韓牛に関する物語を紹介する子どもたちの目線に合わせたストーリーテリング館やフェンソン(横城)韓牛をテーマにしたボールプールもあり、家族連れにおすすめのスポット。

    住所:

    カンウォン特別自治道フェンソン郡フェンソン邑ムニェロ41

    電話番号:

    +82-33-340-5885

    開館時間:

    09:00~18:00(休館日は毎週月曜日)

    入場券:

    無料

    プログラム(3日前までに電話で予約が必要)

    - 料理体験:

    韓牛プルゴギピザ、韓牛クリームリゾット、好き勝手に作る餃子など

    - 工芸体験:

    革工芸、牛角工芸、ハヌリ工作所(毛糸の額縁作り)など

    駐車情報:

    あり(16台)

    香ばしくて柔らかいチョダンスンドゥブ

    いつ・どこで

    新豆の出荷時期である10~4月が 豆腐の旬だ。

    カンヌン(江陵)のチョダン(草堂)豆腐村は、昔から豆腐で有名な地域だ。村の近くで栽培された大豆を産地直送で調達するとともに海洋深層水で作られたにがりを使っているためだ。今は豆腐やスンドゥブはもちろん、豆乳で作られた様々なデザートも楽しめる。

    韓国と満州一帯は大豆の原産地として知られている。そのため、韓国には大豆を使った料理が多い。


    かつて韓国人は冬になると大豆を茹でてメジュを作り、これを活用してテンジャンを作って食べた。暗所に大豆を置いて水をやると発芽して「豆もやし」になる。豆もやしも韓国人がスープや和え物にしてよく食べる食材の一つだ。煎り大豆を粉にしたミスッカルは、水や牛乳に溶かして飲むと食事の代わりにもなるほどお腹が満たされる。お餅にミスッカルをまぶして黄な粉餅を作って食べたりもする。水に浸しておいた大豆を茹でてすり潰したものを「生呉(なまご)」と言うが、これを冷やして素麺を入れた「コングクス」は夏の珍味と言われる。大豆からタンパク質を取り出して作る豆腐は大豆の香ばしい風味を楽しめる栄養満点の食材だ。



    豆腐はどのように作るか?

    豆腐は、大豆、水、にがり(塩を作る時、海水を蒸発させた後に残った液体)で作る。まず、水を吸った大豆をすり潰した後、こし布に入れてしぼると豆乳になる(ここで水溶性タンパク質は水と一緒に流れ出て、脂溶性タンパク質は大豆の他の成分と一緒にこし布の中に残る。残った副産物をおからと言う)。 その後、豆乳ににがりを混ぜると水溶性タンパク質が凝固して塊になるが、これを型に入れて固めると豆腐になる。ここで豆腐の食感を決めるのが「にがり」だ。にがりはカンヌン(江陵)の豆腐を特別にする秘法でもある。

    最近の豆腐はほとんどが工場で生産されるにがりで作られる。一部の地域のみ海水から取り出したにがりを使うが、 代表的な地域としてカンヌン(江陵)のチョダン(草堂)豆腐村が挙げられる。チョダン(草堂)豆腐村の豆腐は水深200m以深から汲み上げた海洋深層水で作る。この海洋深層水に含まれているミネラルがタンパク質の凝固を促して美味しい豆腐に仕上げる。韓国ではカンヌン(江陵)が海洋深層水で豆腐を作る唯一の地域だ。

    チョダン(草堂)豆腐が有名な理由

    チョダン(草堂)豆腐村は昔から豆腐で名を馳せた。ここの豆腐が有名になった説話がある。朝鮮王朝時代の中期にこの村に許曄(ホ・ヨプ)というソンビ(士人)が住んでいた。彼は当時、最高の詩人として知られていた許蘭雪軒(ホ・ナンソルホン)と、優れたハングルの小説を書いた許筠(ホ・ギュン)の父親だ。彼の家には井戸があり、その水が非常に美味しかった。許曄は井戸の水で作った豆乳と東海の海水で作ったにがりで豆腐を作った。このように作られた豆腐は美味しいと評判になり、村の人々も同じ方法で豆腐を作り始めた。許筠と許蘭雪軒の生家には当時の井戸がそのまま復元されている。一方、「チョダン(草堂)」という村の名前も許曄の号から取ってきたものだ。

    この村が豆腐で有名になったのは1970~1980年代だ。当時、村の住民たちは手作り豆腐をカンヌン(江陵)の市内で販売したが、美味しいという噂が広まり村に人々が集まり始めた。許曄の豆腐の作り方が今もなお受け継がれているかどうかは分からない。しかし、この村ならではの豆腐の作り方がチョダン(草堂)豆腐の名声を上げるきっかけとなったのは確かだ。

    近年、チョダン(草堂)豆腐村はスンドゥブでさらに人気となった。スンドゥブは、豆腐を型に入れて固める前の塊をそのまま食べるもので、柔らかい食感と大豆本来の味を楽しめる。そのため、多くの人々に愛されている。

    スンドゥブを美味しく食べるコツ

    スンドゥブは温かいうちに食べた方が美味しい。豆乳とにがりを混ぜると塊ができるが、これをそのまま汲み上げた後、ヤンニョムカンジャンをかけて食べる。最初からヤンニョムカンジャンをたっぷりかけるとしょっぱくなる場合があるため、スンドゥブの香ばしい風味を楽しむためには、少しずつかけながら食べた方が良い。

    スンドゥブと辛い合わせ調味料を組み合わせて作るスンドゥブチゲは韓国を代表するチゲ料理の一種だ。チョダン(草堂)豆腐村では、スンドゥブチゲを作る時、「チェボク」と呼ばれるカンウォン(江原)道の特産物サラガイを入れて旨味を引き出す場合もある。スンドゥブチゲより辛味がほしい場合は、様々な海鮮がたっぷり入ったピリ辛チャンポンスープとスンドゥブが調和を成すスンドゥブチャンポンをおすすめする。

    最近は、ソフトクリーム、 ジェラート、もち米など、スンドゥブをすり潰して作った豆乳をメイン材料に使ったデザートも相次いで登場し、韓国の若者から人気を集めている。

    お店情報

    カンヌン(江陵)チャンポンスンドゥブ・トンファガーデン本店

    チョダン(草堂)豆腐村で初めてチャンポンスンドゥブを販売し始めた食堂だ。ピリ辛チャンポンスープに香ばしいスンドゥブをたっぷり入れて究極の味を実現したチャンポンスンドゥブが看板メニューだ。豚肉と牛骨をじっくり煮込んだスープにスンドゥブと卵を入れたピリ辛スンドゥブもあるが、朝限定メニューで午前7時から8時まで1時間のみ食べられる。スンドゥブを作る時に出る豆乳で作ったキムチも美味しい。お店で直接作った豆腐とキムチも購入できる。

    住所:

    カンウォン特別自治道カンヌン市チョダンスンドゥブギル77ボンギル15

    電話番号:

    +82-33-652-9885

    看板メニュー:

    元祖チャンポンスンドゥブ 13,000ウォン、
    アン・ソンジャのチョングッチャン 12,000ウォン(2人前から注文可能)

    アクセス:

    京江線(KTX)カンヌン(江陵)駅2番出口より約4.2㎞ /
    東海高速道路のカンヌン(江陵)ICより約11㎞ /
    キョンポ(鏡浦)湖、 キョンポ(鏡浦)海岸、 カンムン(江門)海岸などと隣接、チョダン(草堂)豆腐村の中に位置

    駐車場:

    有(50台)

    席数:

    120席

    メニュー言語:

    韓国語、英語、日本語

    チョダン(草堂)ハルモ二スンドゥブ

    毎朝、伝統的な方法で豆腐を作る食堂だ。ヤンニョムで味付けをせず、出来たての豆腐の香ばしい風味を楽しめる「スンドゥブ定食」が看板メニューで、東海で採れる「チェボク」と呼ばれるサラガイを入れてピリ辛に仕上げたスンドゥブチゲである「ピリ辛チェボクスンドゥブ」も人気だ。

    住所:

    カンウォン特別自治道カンヌン市チョダンスンドゥブギル77

    電話番号:

    +82-33-652-2058

    看板メニュー:

    スンドゥブ定食 11,000ウォン、
    ピリ辛チェボクスンドゥブ 12,000ウォン

    アクセス:

    京江線(KTX)カンヌン(江陵)駅2番出口より約4.1㎞ /
    東海高速道路のカンヌン(江陵)ICより約11㎞ /
    キョンポ(鏡浦)湖、 キョンポ(鏡浦)海岸、 カンムン(江門)海岸などと隣接、チョダン(草堂)豆腐村の中に位置

    駐車場:

    有(30台)

    席数:

    128席

    メニュー言語:

    韓国語、英語、日本語

    カンウォンオクチャプサルトク(大福)

    2023カンヌン(江陵)市観光記念品公募展で大賞を受賞した「チョダンスンドゥブチャプサルトク(大福)」を販売しているカフェ。チョダンスンドゥブチャプサルトク(大福)は、カンウォン(江原)道産もち米で作ったもっちりとした皮の中にクリームチーズと生クリーム、チョダン(草堂)豆腐を入れて作ったデザートだ。コーヒーにチョダンスンドゥブチャプサルトク(大福)を乗せた「オクコーヒー」も人気。

    住所:

    カンウォン特別自治道カンヌン市チョダンスンドゥブギル89-8

    電話番号:

    +82-507-1449-0599

    看板メニュー:

    チョダンスンドゥブチャプサルトク(大福)(1個) 1,400ウォン、
    (1箱) 16,000ウォン、
    (2箱) 30,000ウォン

    アクセス:

    京江線(KTX)カンヌン(江陵)駅2番出口より約4.2㎞ /
    東海高速道路のカンヌン(江陵)ICより約11㎞ /
    キョンポ(鏡浦)湖、 キョンポ(鏡浦)海岸、 カンムン(江門)海岸などと隣接、チョダン(草堂)豆腐村の中に位置

    駐車場:

    有(10台)

    席数:

    50席

    メニュー言語:

    韓国語

    スンドゥブジェラート1号店

    スンドゥブ料理専門店である「チョダン(草堂)ソナムジプ」で運営するスンドゥブジェラートのお店。韓国で初めてジェラートとスンドゥブを組み合わせてデザートを作ったところだ。スンドゥブジェラートは、大豆の香ばしい香りとジェラートと甘味が調和を成して人気を集めている。

    住所:

    カンウォン特別自治道カンヌン市チョダンスンドゥブギル95-5

    電話番号:

    +82-33-653-8344

    看板メニュー:

    スンドゥブジェラート4,000ウォン

    アクセス:

    京江線(KTX)カンヌン(江陵)駅2番出口より約4.2㎞ /
    東海高速道路のカンヌン(江陵)ICより約11㎞ /
    キョンポ(鏡浦)湖、 キョンポ(鏡浦)海岸、 カンムン(江門)海岸などと隣接、チョダン(草堂)豆腐村の中に位置

    駐車場:

    有(20台)

    席数:

    8席

    メニュー言語:

    韓国語

    レビュー

    ソグムガン(小金剛)村

    ソグムガン(小金剛)渓谷に位置している農村体験村だ。昔ながらの田植え、旬の農産物収穫などの農業体験やチョダンスンドゥブ作り、じゃがいも団子スープ作り、大根の水キムチ作りなど、様々な体験プログラムが用意されている。キャンプ場もあるため、家族で1泊しながら体験を楽しむことができる。団体向けの宿泊施設もある。

    住所:

    カンウォン特別自治道カンヌン市ヨンゴク面チンゴゲロ1826-11(ソグムガン(小金剛)村エコセンター)

    電話番号:

    +82-33-661-0401

    開館時間:

    10:00~17:00

    入場券:

    プログラム(前日午後5時までに予約必須)

    - カンヌン(江陵)チョダンスンドゥブ作り体験: 20人以上の団体は1人当たり12,000ウォン(最大100人) / 家族(4人基準)は50,000ウォン

    - カンウォン(江原)道じゃがいも団子スープ作り体験: 1人当たり10,000ウォン(最低3人以上)

    駐車場:

    有(10台)

    ホームページ:

    www.gntour.or.kr (韓国語)

    心に寄り添う懐かしい料理、カルグクス

    いつ・どこで

    カルグクスは、四季を通していつ食べても美味しいが、雨の日や寒い日など、温かいスープ料理がほしい時にぴったりな料理だ。

    韓国の交通の中心地とされているテジョン(大田)にはカルグクスの美味しいお店がたくさんある。

    料理の名前には食材や調理法が入っている場合が多い。例えば、豚肉クッパは豚肉を入れて煮込んだスープにご飯を入れて食べる料理だ。また、豚肉プルゴギは、豚肉をプルゴギの作り方で作って食べる料理だ。このように料理の名前を聞くだけで、味や見た目を簡単に想像できる。しかし、このような名づけ方がいつも通じるわけではない。


    カルグクスは、カル(包丁)で作ったグクス(麺)という意味で、料理の名前に「食材」ではなく「調理器具」が入っている。工場で生産した素麺で作るにゅうめんとは異なり、手作り麺で作った料理だということを強調するために「カルグクス」と名付けられた。



    大田がカルグクスで有名な理由

    カルグクスは、わりとどこでも食べることができる料理だ。スープにご飯の代わりに麺を入れるだけで簡単に作れるためだ。しかし、カルグクスについて話すと、カルグクスの発祥地でもないのにいつもテジョン(大田)が口に上る。それは、テジョン(大田)がカルグクスに本気だからだ。テジョン(大田)にあるカルグクスのお店は700カ所以上と他の地域よりはるかに多く、その中には創業数十年以上の老舗も多い。

    カルグクスの種類

    カルグクスは、だしの種類によって2種類に分けられる。一つは肉だしで、もう一つは海鮮だしだ。肉だしのカルグクスは、牛骨ベースのものが最も多い。ソルロンタン、コムタンなど、韓国人になじみのある味で、調理法も広く知られているためだ。鶏肉もだしを取る時によく使われる食材の一つだ。丸鶏を煮込んで水炊きのように食べた後、スープにカルグクス麺を入れて食べたりもする。

    海鮮カルグクスは、煮干しとアサリでだしを取る場合が多い。伝統市場で味わえるにゅうめんも一般的に煮干しだしで作られる。時々、煮干しだしと牛骨だしを混ぜて作ったカルグクスを見かけることもある。アサリカルグクスは、西海の干潟でよく見かける料理で、大きい鍋に人数に合わせてアサリをいっぱい入れて作るのが特徴だ。

    テジョン(大田)には他の地域にはない特別なカルグクスもたくさんある。代表的な例として豆腐入り野菜炒めのカルグクスが挙げられる。これは豆腐入り野菜炒めの専門店で人々がカルグクス麺を追加して食べたことから由来する。韓国の炒め料理は、豆腐やお肉を辛いヤンニョムで炒めて出すため、スープが多くない。一種の焼きカルグクスだと言える。

    アサリの代わりにシオフキ貝を入れて作るカルグクスもある。小さくて白い角丸三角形のシオフキ貝は、砂抜きの時に噴水のように海水を噴き出すことから「ショウベンガイ」とも呼ばれる。アサリは水に入れて加熱すると旨味成分がスープに溶け込むが、シオフキ貝は旨味が貝殻の中にそのまま残るため、シオフキ貝の身を取って食べるとスープの深い旨味を味わえるのがシオフキ貝入りカルグクスの特徴だ。イカチゲにカルグクス麺を入れて食べるお店もある。その場合、大根の漬物を入れて辛味をプラスすると、旨味を引き立てることができる。

    お店情報

    ソナムジプ

    イカ炒めに小大根と水を入れてチゲのように作ったイカチゲが看板 メニューだ。しかし、ソナムジプを訪れた人は10人のうち9人はイカチゲにカルグクス麺を入れて「イカカルグクス」のように楽しむ。ここのイカチゲこそ、テジョン(大田)の人々がカルグクスをどのようにアレンジしているかを垣間見ることのできる良い例と言える。

    住所:

    テジョン(大田)広域市チュン区テジョンロ460ボンギル59

    電話番号:

    +82-42-256-1464

    看板メニュー:

    イカ基本(イカチゲ) 7,000ウォン、
    カルグクス麺1,000ウォン

    アクセス:

    テジョン(大田)都市鉄道1号線テジョン駅(KTX、一般鉄道)1番出口より約720m

    駐車場:

    無(テフン(大興)洞の公営駐車場利用可能、 テジョン(大田)広域市チュン区テジョンロ452ボンギル27)

    席数:

    72席

    メニュー言語:

    韓国語

    シンドカルグクス本店

    1961年に開業して現在までテジョン(大田)の美味しいカルグクス店として有名な食堂だ。牛骨と煮干しを煮込んで作ったスープにエゴマの粉を入れると、香ばしい風味が口の中にふわっと広がる。ゆで肉または豆腐入り野菜炒めと一緒に食べるとさらに美味しい。

    住所:

    テジョン広域市トン区テジョンロ825ボンギル11

    電話番号:

    +82-42-253-6799

    看板メニュー:

    カルグクス 7,000ウォン、
    豆腐入り野菜炒め25,000ウォン、
    ゆで肉(小) 20,000ウォン

    アクセス:

    テジョン(大田)都市鉄道1号線テジョン駅(KTX、一般鉄道)3番出口より約270m

    駐車場:

    席数:

    86席

    メニュー言語:

    韓国語

    オシカルグクス

    シオフキガイでだしを取ったカルグクス専門店。シオフキガイスープを注文すると、大盛りすぎるシオフキガイの量にびっくりする。煮干しとシオフキガイを入れて煮込んだスープに辛味が加わり、シンプルな味付けだがスープの旨味が一段とアップする。

    住所:

    テジョン広域市トン区イェッシンタンジンロ13

    電話番号:

    +82-42-627-9972

    看板メニュー:

    手作りカルグクス 8,500ウォン、
    シオフキガイスープ14,000ウォン

    アクセス:

    テジョン(大田)都市鉄道1号線テジョン(大田)駅(KTX、一般鉄道)3番出口より約1.4㎞

    駐車場:

    有(30台)

    席数:

    88席

    メニュー言語:

    韓国語

    プサン(釜山)を代表する郷土料理、豚肉クッパ

    いつ・どこで

    クッパは一年中楽しめるが、クッパに欠かせないニラの香りを存分に味わうなら、やはり春が一番だ。

    プサン(釜山)は「豚肉クッパの街」と呼ばれるほど数多くの豚肉クッパ屋が賑わいを見せている。ソミョン駅の近くには、「ソミョン(西面)郷土料理通り(ソミョン(西面)市場の横の路地、プサン広域市プサンジン区ソミョンロ68ボンギル一帯)」が形成されており、豚肉クッパを専門とするお店がたくさんある。

    昔から韓国人がこよなく愛してきたクッパは、一つの料理であり、また料理のジャンルでもある。昔から韓国人は、食事を早く済ませたいときにクッパを食べた。調理法が簡単で、しかも満腹感が得られるのがクッパの人気の秘密といえる。まさに韓国のファストフードだ。


    クッパは、旅人の味方でもあった。昔、全国を旅した行商人や、故郷と都を行き来したソンビ(士人)たちは、必ずと言っていいほどチュマク(酒幕・居酒屋を兼ねた宿)に立ち寄ってクッパを食べた。長い道のりの途中に立ち寄るので、じっくり料理を味わう時間がなく、すばやく簡単に空腹を満たさなければならない人たちにとって、クッパは最高の選択肢だった。だからだろうか。今でもクッパは全国どこに行っても簡単に味わえる料理だ。多くの人に喜ばれる上に、作り方がシンプルで、どこでも簡単に材料が手に入る。クッパが庶民の間で長く愛され続けてきたのも納得だ。


    クッパの「スープ」は、主に牛肉または豚肉を茹でた出汁に様々な材料を加えてじっくり煮込んでつくる。大きな鍋や釜でたくさんの量を煮込むことが多く、これは大量に作る目的とたくさんの様々な材料を使うことで、豊かな味わいを出すためでもある。お店では、営業前または営業終了後にスープをあらかじめ煮込んでおく。そうすれば、注文を受け一回さっと沸騰させればすぐに提供することができるからだ。



    豚肉クッパはどうやって普及したのか?

    最初、クッパの材料に使われた肉は牛肉だった。昔はどこの家でも牛の一頭か二頭は飼っていたこともあり、鶏肉以外に最も手に入りやすい肉類だったからだ。牛肉を使ったクッパ料理には、一般的に使われない部位や骨で出汁をとった牛の頭部肉クッパ、牛テールのコムタン、ソルロンタンなどをはじめ、肉付きのカルビを入れて煮込んだカルビタンもあった。

    1970年代以降になると、産業化を経て全国各地に設備を整えた大型の養豚場が増えた。自然と豚肉の生産量が急激に増加し、牛肉よりも価格が安くなった。輸出量も次第に増え、それに合わせてプサン(釜山)と周辺都市には食肉加工施設が建設され始めた。

    食肉加工施設が増えたことで、プサン(釜山)地域の人は豚肉を加工して残った副産物で肉の出汁を取ったクッパを作り、販売するようになった。プサン(釜山)の人々にとって豚肉クッパが「韓国式ファストフード」であり「ソウルフード」として認知され始めたのもこの頃からだ。

    現在、プサン(釜山)には中華料理屋より豚肉クッパのお店が二倍も存在する。『プサン(釜山)日報』の2019年の調査によると、プサン(釜山)地域の豚肉クッパ専門店は約700店に達したという。

    豚肉クッパにも種類がある

    豚肉クッパは、調理法によって透明なスープと濃いスープの二種類に分かれる。お湯に豚肉を入れて沸騰させると透明なスープになり、豚骨を煮込むと濃厚なスープになる。豚肉だけで出汁を取ったスープはさっぱりとした味わい、豚骨スープは濃厚な旨味が特徴だ。

    豚肉クッパに使われる豚肉の部位は、主に腕肉だ。だが、一般的な豚肉クッパに比べて価格帯が高く設定されている一部の豚肉クッパのお店では、脂身が豊富で香ばしい味がする豚トロ(豚の首から肩の間にある首筋の部位)を使うこともある。

    豚肉クッパのお店でメニューを開くと、独特な表記に多少混乱することがある。メニューに「ネジャン(内臓)のみ」と書かれているのは豚肉を入れずに内臓だけを、「スンデのみ」と書かれているのはスンデだけを入れるクッパのことを指す。「ソッコ」は肉と内臓、あるいは肉とスンデを混ぜたものを指す。豚肉と内臓、スンデをすべて味わいたいなら「盛り合わせ」がおすすめだ。肉だけが入った豚肉クッパは肉本来の味が楽しめるが、内臓が混ざるとモチっとした食感まで味わえる。

    トリョム(退染)とは?

    クッパを注文する時、「トリョム(退染)」という言葉をよく耳にする。トリョム(退染)とは、クッパの伝統的な温め方で、冷たいご飯に熱いスープをくぐらせて温めるという過程を繰り返し、ほどよく食べやすい温度まで温める方法をいう。電気釜のなかった時代にクッパを温かくして食べるための方法でもあった。

    豚肉クッパを美味しく食べるためには?

    豚肉クッパを注文すると、キムチ、海老の塩辛、ニラなどが基本のおかずとして出される。まずはクッパの上にニラを乗せた後、スプーンでスープを味わう。その後、お好みで薬味となるヤンニョム、海老の塩辛、塩などを加えて味を整える。店によっては素麺を入れるところもある。

    豚肉クッパは、スープの種類、肉の構成、味付けの違いによって無数の組み合わせが可能な料理でもある。世の中に同じ豚肉クッパはないと言われる所以だ。プサン(釜山)にある豚肉クッパの人気店を巡って様々な豚肉クッパを味わってみよう。

    *参考資料:『プサン(釜山)日報』プサン(釜山)豚肉クッパロード(porksoup.busan.com)

    お店情報

    ヤンサンジプ

    カントン市場の商人など多くの人に長い間愛されてきた豚肉クッパの老舗。店内が狭く、席が空くまで待たされることも多いが、それでも訪れる常連客が多いほどの人気ぶりだ。スープとご飯、ゆで豚肉を別々に出す「ゆで豚肉定食」が人気メニュー。

    住所:

    プサン広域市チュン区チュングロ47ボンギル30

    電話番号:

    +82-51-245-8294

    看板メニュー:

    ゆで肉定食13,000ウォン、
    ご飯の中に肉10,000ウォン、
    ご飯別盛10,000ウォン、
    ゆで肉 (大)45,000ウォン、
    薄切りゆで肉 (小)30,000ウォン

    アクセス:

    プサン(釜山)都市鉄道1号線・チャガルチ駅3番出口から約570m

    駐車場:

    なし(プピョン(富平)公営駐車場は利用可)

    席数:

    20席

    メニュー言語:

    韓国語、英語、日本語、中国語

    ソンジョンサムデクッパ

    1946年に開店し、これまでプサン(釜山)を代表するクッパ専門店として確固たる地位を築いてきた。豚骨で出汁をとった豚肉クッパを販売しており、豚肉やスンデ、内臓など、好みに応じて豚肉クッパに入れる具材を選ぶことができるのが特徴だ。24時間のうち、午前2時30分から4時30分までの2時間の休憩時間を除き、常に開店している。

    住所:

    プサン広域市プサンジン区ソミョンロ68ボンギル33

    電話番号:

    +82-51-806-5722

    看板メニュー:

    豚肉クッパ9,000ウォン、
    ゆで肉定食11,000ウォン、
    ゆで肉 (小)28,000ウォン、
    スンデ(小)10,000ウォン

    アクセス:

    プサン(釜山)都市鉄道1号線・ソミョン駅1番出口から約200m

    駐車場:

    なし(ソミョン(西面)市場前の路上公営駐車場は利用可)

    席数:

    136席

    メニュー言語:

    韓国語、英語、日本語、中国語

    アンモク

    豚骨を24時間以上煮込んだ出汁で豚肉クッパを作る。豚骨スープにコクがあり、追加で味付けをしなくても素材本来の味が楽しめる。出汁に麺を入れた豚肉ラーメンも絶品だ。

    住所:

    プサン広域市スヨン区クァンナムロ22ボンギル3

    電話番号:

    +82-70-8778-0519

    看板メニュー:

    豚肉クッパ10,000ウォン、
    豚肉クッパ(頭部肉)11,000ウォン、
    豚肉クッパ(ソッコ)10,500ウォン、
    豚肉ラーメン10,000ウォン

    アクセス:

    プサン(釜山)都市鉄道2号線・ナムチョン駅(KBS、水営区庁)1番出口から約320m

    駐車場:

    席数:

    14席

    メニュー言語:

    韓国語

    スビョンチェゴテジクッパ ミンラク(民楽)本店

    豚トロ部位で煮込んだ豚トロクッパが看板メニューで、コクのある豚骨スープが特徴だ。

    住所:

    プサン広域市スヨン区クァンアンヘビョンロ370ボンギル9-32

    電話番号:

    +82-51-754-9222

    看板メニュー:

    豚トロクッパ12,000ウォン、
    肉クッパ10,000ウォン、
    豚ネジャンクッパ10,000ウォン、
    ソッコクッパ10,000ウォン

    アクセス:

    プサン(釜山)都市鉄道1号線・ミンラク駅1番出口から約1.6㎞、ミンラク(民楽)水辺公園近辺

    駐車場:

    なし(水辺子供公園公営駐車場は利用可)

    席数:

    66席

    メニュー言語:

    韓国語、英語、日本語、中国語

    韓国のチキンの都、テグ(大邱)

    いつ・どこで

    いつ食べても、一年中美味しい。

    テグ(大邱)ピョンファ(平和)市場の近くには、「テグ(大邱)ピョンファ(平和)市場タクトンチプ通り(テグ広域市トン区アヤンロ9ギル一帯)」が形成されており、チキン、チムダク、砂肝天ぷらなど様々なチキン料理が楽しめる。

    農村社会を研究する学者であり、作家でもあるチョン・ウンジョンは、著書『大韓民国チキン事情』でチキンを「祭りの料理」と定義している。韓国人にとってチキンは、スポーツ観戦を楽しむときや、年中行事、祭り、祝い事のときに食べる料理の代表格だ。



    韓国におけるチキンの歴史

    1960年、ミョンドン(明洞)に丸鶏の「電気焼き(正確に言うとオーブン焼き)」をメインメニューとする「元祖栄養センター」がオープンした。元祖栄養センターでは、電気オーブンで鶏肉を焼いているので、外はカリッと中はジューシーな味が特徴だ。「栄養センター本店」という商号に改称し、今でも国民から大変愛されている。元祖栄養センターが開店して以来、丸鶏の電気焼きを専門とするお店が全国各地に広まった。1960年代半ばは、まさに丸鶏の電気焼きの全盛期だったといえる。

    1970年代に入ると、丸鶏の電気焼きの人気は、丸鶏のフライへと続いた。1971年、トンバンユリャン(東方油亮、現・サジョ(思潮)ヘピョ)が植物性大豆油の「ヘピョサラダ油」を発売した。これが丸鶏のフライ、つまり今でいうチキンの始まりとなった。サラダ油が普及すると、市場の商人たちは競って生鶏を丸ごと油で揚げて売るようになった。さらに、養鶏産業の規模が大きくなり、粉食の奨励政策により小麦粉が普及したことで、チキンは韓国人が好んで食べる国民食として定着していった。

    1977年、新世界百貨店本店地下1階に「リムスチキン」がオープンし、韓国チキン市場の勢力図に新たな変化が起こった。それ以前は、鶏一羽を丸ごと揚げたものを販売するのが一般的だったが、この時期から切断して揚げたフライドチキンが流行り出した。その後の1981年には「ペリカナチキン」がヤンニョムチキンを発売し、再び市場に変化をもたらしたが、この時にようやく馴染みのある「韓国式チキン」が誕生したと見る人が多い。

    2002年の韓日ワールドカップは、まさにチキンの全盛期をもたらした。それまで1万店ほどだったチキン屋は、韓日ワールドカップ後にはなんとその2倍以上の2万5千店まで増えたからだ。サラダ油の登場がチキンの大衆化に貢献したとすれば、2002年の韓日ワールドカップは、韓国をチキンの国にした立役者だと言える。

    チキンの種類

    一般的にチキンはヤンニョムチキンとフライドチキンの二種類に分けられると思われがちだが、実はそうではない。衣(鶏肉にからめる生地で、小麦粉、片栗粉、天ぷら粉、水、塩などを混ぜて作る)の厚さによって二分され、分厚い衣のクリスピーチキンと薄い衣のエンボチキンがベースとなった。韓国人がよく食べるチキンは、この2種類から発展したものだ。

    クリスピーチキンは、鶏肉に厚い衣をつけて揚げるもので、私たちが知っているヤンニョムチキンとカンジャンチキンは、ほとんどがこの方法で作られる。クリスピーチキン特有の分厚い衣は、タレを絡めてもサクサクとした食感をキープできるというメリットがある。さまざまなソースが使えるからか、クリスピーチキンは色々な流行りをいち早く取り入れることができる。一時期、チーズをふりかけたチキン、長ねぎの千切りを乗せたチキンなどが人気を博した。人気のお菓子の味をチキンに取り入れるなど、コラボメニューもしばしば登場する。

    エンボチキンの代表格は「ハンマリトンダク(一羽丸鶏)」だ。サムゲタンにできそうな小ぶりの鶏に薄い衣をつけ、一羽丸ごと揚げる。サイズが小さい鶏なので、手頃な価格で味わえるのも嬉しいポイントだ。クリスピーチキンの一羽の値段で2羽を提供する「トゥマリトンダク(2羽の丸鶏)」メニューを前面に押し出す店もある。エンボチキンは、鶏皮のパリッとした食感が特徴で、揚げたてを食べやすいサイズにカットして、タレや塩につけて食べるとより一層美味しい。エンボチキンは、ソースを絡めるヤンニョムチキンの方法ではなく、ソースを別に提供するのはそのためだ。

    テグ(大邱)では「砂肝天ぷら」もチキンから生まれた料理の一つとされている。砂肝は鶏類が持つ胃の一部で、食べられるように下処理をして使う。ちょっと聞き慣れない部位の砂肝は、鶏などの鳥類では歯のような役割を果たす器官だ。鶏は歯がないため、餌を丸のみするしかなく、食べたものが砕かれていない状態で消化器まで運ばれる。つまり胃の一部の砂肝が食べたものを砕くことになる。鶏は普段から土や砂を飲み込んでこの砂肝に貯蔵し、食べ物が入ってくると、土や砂の入った砂肝が栄養分を摂取しやすくする。

    このような働きをする砂肝は、筋肉質になるので、歯ごたえのある食感を楽しむことができる。肉に比べて値段も安く、気軽に食べられるおつまみとしても人気が高い。砂肝天ぷらは、鶏肉のように揚げた後、様々な調味料を混ぜて作る料理だが、テグ(大邱)ピョンファ(平和)市場の横、タクトンチプ通りには砂肝料理を専門とするお店が集まっている。

    チキンにはやはりビールが一番

    チキンともっとも相性の良いお酒は、何と言ってもビールだ。中でも、韓国で主に販売されている清涼感のあるアメリカンラガースタイルのビールがチキンによく合う。韓国人はチキンとビールの組み合わせをそれぞれの頭文字を取って「チメク」と呼ぶ。テグ(大邱)では、トゥリュ(頭流)公園がチメクの聖地として数えられる。広い芝生が広がるトゥリュ(頭流)公園は、昔からテグ(大邱)の人々にとって定番のピクニックスポットでもある。

    チキンの都・テグ(大邱)で開催される「テグ(大邱)チメクフェスティバル」

    現在、全国各地に広がっているチキン店のフランチャイズのほとんどは、テグ(大邱)とキョンサンブク(慶尚北)道地域から発祥している。メキシカンチキン、メキシカーナ、チョガッチプヤンニョムチキンなど、1970~1980年代に人気を集めたブランドが代表格だ。今もキョチョンチキン、タンタンチキン、チョングギドゥマリチキン、ホシギドゥマリチキンなど、テグ(大邱)やその周辺地域で始まった数多くのフランチャイズ会社が全国を舞台に独自のレシピをもって多彩なチキンを提供している。

    チキンの未来を見たいなら、テグ(大邱)に行ってみよう。夏ならなおよい。毎年夏になると、トゥリュ(頭流)公園一帯でテグ(大邱)チメク祭りが盛大に行われるからだ。テグ(大邱)チメク祭りは、夏を盛り上げるテグ(大邱)の代表的な祭りの一つだ。祭り期間中、トゥリュ(頭流)公園を中心に、テグ(大邱)発祥のチキンブランドが総出で、リーズナブルな価格で、なおかつ多彩な種類のチキン料理を販売する。チキンをより一層美味しく感じさせる冷たいビールも一緒に味わえる。

    レビュー

    チキン体験テーマパーク「タンタンチキンランド」

    「タンタンチキン」を運営するフランチャイズ会社㈱フランフードが設立した世界初のチキンテーマパーク。チキン作り体験プログラムを運営しており、老若男女誰でも気軽に参加できる構成になっており、自分で作ったチキンを食べることも可能だ。ただ、チキンを揚げる作業だけは、危険を伴うため、料理人が代わりに行う。その代わりに、揚げる過程をガラス越しに見ることができるようにデザインされているため、体験者の好奇心を満たしてくれる。

    住所:

    テグ広域市トン区パルゴンロ220-2

    電話番号:

    +82-53-721-7599

    開館時間:

    火~日曜日10:00~18:00

    入場券:

    入場料10,000ウォン(チキン、飲み物を提供)
    ※体験プログラムを決済した場合、入場料は無料

    プログラム:

    - チキン体験:

    大人20,500ウォン、小人17,500ウォン

    - チキン+バーガー体験:

    大人26,500ウォン、小人22,500ウォン

    ※1回に体験できる最大人数は60人(36ヶ月以上のお子様のみ体験可能、13歳以下のお子様は保護者の同伴が必要)

    駐車情報:

    有(20台)

    ホームページ:

    ttland.co.kr (韓国語)

    テグ(大邱)ピョンファ(平和)市場タクトンチプ通り

    1972年、ピョンファ(平和)市場の「サマトンダク」が鶏肉料理を販売して残った砂肝を揚げ、貧しい労働者のためにマッコリのおつまみとして出したのが砂肝天ぷらの始まりだ。その後、この一帯には砂肝天ぷらを販売する飲食店が多いに増え、現在のタクトンチップ通りが形成された。

    住所:

    テグ広域市トン区アヤンロ9ギル一帯

    テグ(大邱)チメクフェスティバル

    毎年夏、韓国のチキン産業の中心地であるテグ(大邱)で開催される食の祭典だ。ピクニックスポットとして広く知られるトゥリュ(頭流)公園周辺で開催され、様々なチキンブランドが参加する。

    開催時期:

    毎年7月

    開催場所:

    テグ広域市タルソ区コンウォンスンファンロ36 トゥリュ(頭流)公園一帯

    入場券:

    入場無料
    *一部のプログラム(公演など)は予約・事前購入が必要

    プログラム:

    チキン・ビールの販売、公演、チメクプレイゾーン、フォトスポットの運営など

    ホームページ:

    www.chimacfestival.com (韓国語、英語、日本語、中国語)

    韓国人の胃袋を鷲づかみしたアンドン(安東)発祥の鶏肉料理、アンドンチムダク

    いつ・どこで

    チムダクは一年中いつでも楽しめる料理だ。

    アンドンチムダクは、アンドン(安東)旧市場内の店で始まった料理。今もアンドン(安東)旧市場のアンドンチムダク通りでは色んなアンドンチムダク料理が味わえる。

    アンドンチムダクは、ぶつ切りにした鶏一羽に色んな野菜と春雨を加えて煮込んだボリューム満点の鶏肉料理。一見昔ながらの伝統料理に思われがちだが、アンドンチムダクが初めて登場したのは1980年代のこと。アンドン(安東)市内のアンドン(安東)旧市場内で鶏肉を取扱っていた店が調理法を考案し、販売し始めたのがアンドンチムダクの始まりだ。



    アンドンチムダクの始まり

    1980年代のアンドン(安東)地域は若者で賑わっていた。市内にアンドン(安東)教育大学(現在の国立アンドン(安東)大学の一部)と陸軍アンドン(安東)訓練所(当時の36師団)があったためだ。しかし、当時の軍人やその面会客、大学生は懐事情が厳しく、それがアンドン(安東)市内に安くてボリュームたっぷりのおつまみや軽食を提供する店が増えるきっかけとなった。アンドンチムダクも懐が寂しい若者客を呼び込むために開発された料理のひとつだった。

    アンドンチムダクはチキンやタッカルビが知られる前の1980年に鶏をさばいて販売していた市場から誕生した。今のアンドンチムダク通りがあるアンドン(安東)旧市場がまさにその発祥の地だ。当時アンドン(安東)旧市場の店ではお客のニーズに合わせて、丸鳥を捌いて販売していたが、単にぶつ切りにするか、丸ごと揚げるのがほとんどだった(「昔ながらの市場トンダク(丸鶏のフライ)」と呼ばれるもの)。そんな中、ある店でカンジャンベースのタレに鶏肉と色々な野菜、じゃがいも、餅、春雨などを入れ、売り始めたのが人気を呼んだ。それが今私たちが食べているアンドンチムダクの原点だ。

    アンドンチムダクはカルビの蒸し物と似ている!

    アンドンチムダクとカルビの蒸し物は、その調理法も味も似ている。いずれもカンジャンやニンニク、砂糖などを入れたタレをベースにした蒸し物で、甘しょっぱい味付けが特徴だ。ニンジンやじゃがいも、玉ねぎなど、色んな野菜を入れ、ボリュームたっぷりに楽しめるのも同じだ。その起源が異なるにも関わらず、カルビの蒸し物は牛肉を、アンドンチムダクは鶏肉を主材料とすることを除けば、ほぼ全てが似ていて面白い。

    アンドンチムダクの食べ方

    アンドンチムダクは人数分ではなく、「大・中・小」のサイズから選べるようになっている。その基準は店によって異なる場合があり、サイズごとの量が明確に決まっているわけではないが、普通2名までは「小サイズ」、3~4名は「中サイズ」、4名以上であれば「大サイズ」を頼めば十分だ。

    アンドンチムダクは大きなお皿に盛られて出てくるが、なかでも春雨を真っ先に食べるのがおすすめ。時間が経つと汁タレを吸い込み伸びてしまうからだ。アンドンチムダクを食べる際には、ご飯を頼んで鶏肉と野菜、旨みが凝縮したタレと一緒に食べるとさらに美味しい。

    またアンドンチムダクのタレはカンジャンベースだが、やや甘辛い。唐辛子、または唐辛子粉が入っているためだが、その甘辛さが程よく味のバランスをとってくれる。アンドンチムダクを頼むと韓国人の間で「チキン大根」と呼ばれる大根の甘酢漬けもついてくるが、甘酸っぱい味付けとシャキシャキとした食感がまた魅力的だ。

    「チョリムダク」について

    アンドン(安東)には「チョリムダク」という料理もある。「チョリム(煮付け)」は時間をかけて煮詰めることで水分を飛ばし、具材にタレを染み込ませる調理法だ。アンドンチムダクが完成した状態から、汁が煮詰まるまでさらに火をかけるとチョリムダクが仕上がる。この過程で汁に残っていた水分が飛ばされ、具材に味がしっかり染み込み、アンドンチムダクよりさらに濃厚でコク深い味付けとなる。辛さもさらに引き立てられる。

    お店情報

    元祖アンドンチムダク本店

    アンドンチムダクを初めて考案したオーナーとその息子が営んでいるお店。1980年代若いお客たちにもお手頃な価格でお腹いっぱいたっぷり食べられるようアンドンチムダクの調理法を開発し、今も昔ながらの調理法で元祖の味を守り、愛され続けている。アンドンチムダク本来の味を楽しめるのが魅力。

    住所:

    キョンサンブク道アンドン市ポニョン1ギル47

    電話番号:

    +82-54-855-8903

    看板メニュー:

    アンドンチムダク中サイズ(2~3人前)32,000ウォン、
    大サイズ(4~5人前)48,000ウォン

    アクセス:

    中央線アンドン(安東)駅(KTX・一般鉄道)1番出口から約5.5㎞ /
    中央高速道路西安東トールゲートから約11㎞/アンドン(安東)旧市場内に所在

    駐車場:

    なし(アンドン(安東)旧市場内の公営駐車場利用可能)

    席数:

    44席

    メニュー言語:

    韓国語

    アンドン(安東)新世界チムダク

    長年に渡り、数々のグルメ番組で紹介されてきた人気店。アンドン(安東)新世界チムダクではアンドンチムダクやチョリムダク、トンダクを全部味うことができる。注文する際に辛さを調整できるので自分好みの味わいで楽しめる。チョ・オッカ名人のアンドン焼酎も販売している。

    住所:

    キョンサンブク道アンドン市ポニョンギル10

    電話番号:

    +82-54-859-5484

    看板メニュー:

    アンドンチムダク中サイズ(2~3人前)32,000ウォン、
    大サイズ(4~5人前)48,000ウォン

    アクセス:

    中央線アンドン(安東)駅(KTX・一般鉄道)1番出口から約5.5㎞ /
    中央高速道路西安東トールゲートから約11㎞/アンドン(安東)旧市場内に所在

    駐車場:

    なし(アンドン(安東)旧市場内の公営駐車場利用可能)

    席数:

    60席

    メニュー言語:

    韓国語

    ヒョジャトンダク

    チムダクをさらに煮詰めて作る「チョリムダク」が有名。汁がなくなるまで時間をかけて煮詰め、濃厚なタレを鶏肉にしっかり染み込ませるのが特徴。

    住所:

    キョンサンブク道アンドン市タンブッキル54

    電話番号:

    +82-54-853-8890

    看板メニュー:

    チムダク32,000ウォン、
    チョリムダク29,000ウォン、
    マヌルダク20,000ウォン

    アクセス:

    中央線アンドン(安東)駅(KTX・一般鉄道)1番出口から約4.5㎞ /
    中央高速道路西安東トールゲートから約10㎞

    駐車場:

    席数:

    20席

    メニュー言語:

    韓国語

    五色燦然たる味覚の調和、チョンジュビビンバ

    いつ・どこで

    一年中いつでも楽しめる。ただし、ビビンバの具材となる野菜が美味しくなるのは春と秋だ。

    チョンジュ(全州)の至る所にチョンジュビビンバ専門店が点在している。チョンジュ(全州)の代表的な観光地であるチョンジュ(全州)韓屋村でもチョンジュビビンバ専門店がよく目につく。

    ビビンバは様々な具材が調和した多彩な彩りを楽しめる料理だ。炊き立ての白ご飯にほうれん草、ワラビ、豆もやしのナムルや卵、牛肉などを乗せ、コチュジャンやゴマ油などを入れ混ぜて食べるのが定番だ。



    チョンジュビビンバの由来

    チョンブク(全北)特別自治道のチョンジュ(全州)一帯は、昔からビビンバで知られていたが、その明確な歴史や由来は定かではない。宮廷料理から庶民へと伝わったという説や祭祀の際のお供え物を参列者たちが入れ混ぜて食べていたことから始まったという説がある。また高麗時代中期からチョンジュビビンバを食べていたという説や朝鮮時代後期の料理書『是議全書』に紹介された調理法がその起源だという説もある。

    1945年の光復直後に開業したという「オムパンジプ」はチョンジュ(全州)で有名な韓定食の店であったが、イシモチチゲやコノシロ焼きなどのおかずとともに、白ご飯ではなく、ビビンバを出したことで有名になったという。

    現存する最古のチョンジュビビンバ専門店は「ハングクチプ(韓国の家)」だ。1952年に餅屋として開業したが、1953年からビビンバを売り始めたという。当時チョンジュ(全州)南門市場ではビビンバの店が流行っていたが、 ハングクチプがビビンバの高級化に取組み、それが現在のチョンジュビビンバの原点とされている。

    1970年代に入ってからはソウルでも知られるようになり、次第に全国に広まった。今日では韓国を代表する料理のひとつとして、世界でも位置付けられている。

    チョンジュビビンバの特徴

    一般的には水でご飯を炊くが、チョンジュビビンバは牛肉のだし、もしくは豆もやしの野菜だしで炊いたご飯を使う。だし炊きご飯を入れると風味が良いだけでなく、飯粒がくっつかず、野菜とかき混ぜてもつぶれない特長がある。

    ファンポムクも他の地域のビビンバと区別される具材のひとつだ。緑豆でこんにゃくを作る際に天然色素である黄色の「クチナシ」で色を付けるとファンポムクになるが、キレイな ファンポムクが盛り付けられたチョンジュビビンバは、他のビビンバにはない特別な高級感を味わえる。

    チョンジュビビンバにはどんな材料が入る?

    ビビンバの具材にはまずナムルがある。ビビンバには豆もやし、ほうれん草、ワラビ、桔梗の根、ズッキーニ、ヒカゲミツバゼリ、シイタケなど、色んな種類のナムルが盛り付けられる。

    ナムルは各材料の特徴に合わせた最適な調理法で調理してこそ、それぞれの味と風味を最大限に引き立てることができる。豆もやしはやや透明になるまでゆで、ズッキーニは千切りにして油に炒めておく。シイタケは茹でてからゴマ油に和えるか、フライパンに油をひいて炒める。ヒカゲミツバゼリは水に浸してから茹で、油に炒めておく。

    牛肉も欠かせない具材のひとつだ。一般的には火を通した牛肉を入れるが、生の牛肉に味付けした「ユッケ」を入れて「ユッケビビンバ」にするのも美味しい。ちなみにビビンバに入れるユッケは、その日にと畜した牛肉を食べやすいサイズに切ってコチュジャンとニンニク、ゴマ油で味付けする。

    最後に乗せるのは卵だ。白身は錦糸卵にして、黄身はそのまま生で乗せる場合が多いが、好みによっては目玉焼きにして乗せたりもする。

    チョンジュビビンバの美味しい食べ方

    チョンジュビビンバは、全ての具材を彩りよく一皿に盛り付ける料理だ。ビビンバが出てくると、盛り付けられた具材とご飯をかき混ぜてから食べる。混ぜるときは普通スプーンを使うが、お箸を使っても構わない。スプーンは各具材の風味をよく混ぜ合わせるように、お箸はタレがよく絡まるようにする。片手にスプーンを、もう片手にお箸を持ち両手で混ぜるとさらに混ぜやすくなる。ある程度混ぜたら、味見してコチュジャンで塩加減を調整する。

    全部かき混ぜたら、最初とはすっかり見た目が変わっているはず。しかし心配ご無用!多彩な具材が見事に調和し、「味のハーモニー」を生み出しているに違いない。

    お店情報

    カプキ会館本店

    7~8種類の韓方材を浸した水で炊いた「薬用ビビンバ」が看板メニュー。薬用ビビンバは、一般的なビビンバの具材だけではなく栗やナツメのように味はもちろん、身体にもよい韓方を具材として使っている。ビビンバに入れるコチュジャンから直接作っていて、りんごや梨、玉ねぎを入れて発効させたため、ナチュラルな甘みが感じられる。

    住所:

    チョンブク特別自治道チョンジュ市トクチン区サンニロ50

    電話番号:

    +82-63-212-5766

    看板メニュー:

    薬用ビビンバ19,000ウォン、
    ユッケビビンバ17,000ウォン

    アクセス:

    チョンジュ(全州)市外バス共用ターミナルから約3.9km /
    チョンジュ(全州)駅(KTX・一般鉄道)から約6.1km /
    スンチョン(順天)ワンジュ(完州)高速道路東全州トールゲートから約9.1km

    駐車場:

    有(20台)

    席数:

    120席

    メニュー言語:

    韓国語

    ハングクチプ

    1952年に開業し3代にわたって受け継がれてきたチョンジュビビンバの老舗。韓屋をリノベーションした店内には綺麗に整備された庭も。チョンジュ(全州)韓屋村、 慶基殿(キョンギジョン)など、有名な観光スポットとも隣接した好立地。

    住所:

    チョンブク特別自治道チョンジュ市ワンサン区オジンギル119

    電話番号:

    +82-63-284-2224

    看板メニュー:

    チョンジュビビンバ15,000ウォン、
    ハングクチプ定食(2人前から注文可能)35,000ウォン

    アクセス:

    チョンジュ(全州)市外バス共用ターミナルから約2.8km /
    チョンジュ駅(KTX・一般鉄道)から約4.8km /
    順天完州高速道路東全州トールゲートから約6. 6km

    駐車場:

    有(30台)

    席数:

    本館120席、別館80席

    メニュー言語:

    韓国語、英語、日本語、中国語

    コグンチョンジュ(全州)本店

    50年以上の歴史を誇るチョンジュビビンバの専門店。盛り付けの食器を鍮器と石釜のいずれかで選ぶことができる。チョンジュビビンバには欠かせない具材である緑豆こんにゃくを和え物にして提供している。2階にはチョンジュビビンバの歴史を紹介する展示室を運営している。

    住所:

    チョンブク特別自治道チョンジュ市トクチン区ソンチョンジュンアンロ33

    電話番号:

    +82-63-251-3211

    看板メニュー:

    チョンジュ伝統ビビンバ12,000ウォン、
    石焼ビビンバ14,000ウォン

    アクセス:

    チョンジュ(全州)市外バス共用ターミナルから約2.7km /
    チョンジュ(全州)駅(KTX・一般鉄道)から約4.9km /
    順天完州高速道路東全州トールゲートから約7.8km

    駐車場:

    有(50台)

    席数:

    200席

    メニュー言語:

    韓国語、英語

    レビュー

    チョンジュビビンバ祭り

    ビビンバの名所であるチョンジュ(全州)地域で開催されるビビンバをテーマとした祭り。ジャイアントビビンバ作りをはじめ、クッキングクラスなど、チョンジュ(全州)ならではの食文化を体験できる様々なイベントが用意されている。

    開催時期:

    毎年10月

    開催場所:

    チョンブク特別自治道チョンジュ市トクチン区キリンデロ451、チョンジュ(全州)総合競技場一帯

    入場券:

    プログラム:

    ジャイアント・ビビンパ・パフォーマンス、チョンジュ(全州)グルメテーマゾーン、チョンジュ(全州)韓定食パレード、フリーマーケット、ビビンフォトゾーン、ビビンマダンノリ、 チョンジュ(全州)名人クッキングクラスなど

    ホームページ:

    bibimbabfestival.com (韓国語)

    キム・ミョンオクキムチ・ビビンバ体験館

    キム・ミョンオクキムチ伝統料理研究所が運営し、伝統料理作りが体験できる場所。チョンジュビビンバをはじめキムチ、油菓作りなどの伝統料理作り体験や黄な粉餅つき、韓服体験、陶芸体験など、様々な体験プログラムを運営している。

    住所:

    チョンブク特別自治道チョンジュ市ワンサン区カンナプノ14-15

    電話番号:

    +82-10-3652-4662

    開館時間:

    09:30~17:00

    プログラム:

    ビビンバ作り、キムチ作り、黄な粉餅つき、油菓作り、チョコパイ作り、韓服体験、陶芸体験など

    駐車情報:

    あり(2台)

    ホームページ:

    www.kimmyongok.com (韓国語)

    清乙伝統文化院

    チョンジュビビンバ、黄な粉餅、キムチなどの韓国料理体験プログラムと伝統文化体験プログラムを運営している。

    住所:

    チョンブク特別自治道チョンジュ市ワンサン区ウンヘンノ22-6

    電話番号:

    +82-63-232-6679

    開館時間:

    09:30~15:30

    プログラム:

    韓国料理体験(チョンジュビビンバ・ 黄な粉餅・キムチ作り)、伝統文化体験(基本型/一般型)など

    駐車情報:

    ホームページ:

    www.etiedu.co.kr (韓国語)

    心が込められた高級料理の精髄、 タミャン(潭陽)粗挽きカルビ焼き

    いつ・どこで

    粗挽きカルビ焼きは、四季を通して楽しめる料理だ。

    チョンラナム(全羅南)道タミャン(潭陽)は、竹と粗挽きカルビ焼きで有名な地域で、市内の至る所に粗挽きカルビ焼きの専門店がたくさんある。



    粗挽きカルビ焼きはいつから食べ始めたのか?

    韓国で高級料理の一種とされている粗挽きカルビ焼きは、いつから、どのように、誰が食べ始めたのか正確に知られていない。諸説あるが、以下の3つの説が語り継がれている。

    1つ目は、朝鮮王朝時代の王室の宴会に関する内容が記録されている『進饌儀軌』からその由来を見つけることができる。この本には、今の粗挽きカルビ焼きに似ている「ソプサンジョク」に関する内容がある。ソプサンジョクは、ひき肉とつぶした豆腐を混ぜて作った生地を四角い形にして焼いた料理だ。2つ目は、朝鮮王朝時代の初期の文官である宋希璟(ソン・ヒギョン)がタミャン(潭陽)に定着した後、粗挽きカルビ焼きの調理法を開発して伝承したという説があるが、正確な記録は残っていない。3つ目は、1900年代初めに宮女と尚宮たちが宮中料理の一つとして粗挽きカルビ焼きを作って庶民に普及したという説がある。この3つの説の中で、はっきりとした粗挽きカルビ焼きの由来はないが、ここで重要なポイントは全て「宮殿」と関連があることだ。

    作り方から複雑な高級料理「粗挽きカルビ焼き」

    タミャン(潭陽)の粗挽きカルビ焼きは手間をかけて丁寧に作る必要がある。まず、牛カルビを切って骨と肉を分離した後、包丁で肉を細かく刻む。機械で細かく刻むと便利だが、肉汁が逃げてしまうため昔ながらの方法通り包丁で刻んだ方が美味しい。続いて、細かく刻んだ肉を成型した後、分離しておいた骨を付けると我々が知っている粗挽きカルビ焼きの形になる。タレをまんべんなくつけながら焼くと、肉汁があふれるもっちりとした食感の粗挽きカルビ焼きが仕上がる。ここで、タレはカンジャン、ごま油、胡椒、にんにく、生姜などを入れた後、甘さをつけるために蜂蜜や砂糖を加える。

    粗挽きカルビ焼きを美味しく食べるコツ

    タミャン(潭陽)では粗挽きカルビ焼きをグリルで焼くか、寄せ鍋にして食べるかの2つの方法で食べるが、一般的には焼いて食べる。予め火を通したものが出てくるため、温める感覚で焼いて食べれば良い。ナムド(南道)料理らしく様々なおかずや包みご飯用の野菜が一緒に出てくる場合が多い。

    粗挽きカルビ焼きの寄せ鍋は、ジューシーな霜降りロースが入ったプルゴギの寄せ鍋と近い味がする。寄せ鍋の甘いスープに粗挽きカルビ焼きの風味が溶け込み、より豊かな味わいを楽しめる。

    韓国最大規模を誇る竹の生産地のタミャン(潭陽)では、竹筒にお米や様々な食材を入れて蒸した「竹筒ご飯」を食べることもできる。タミャン(潭陽)の粗挽きカルビ焼き専門店はほとんど竹筒ご飯を販売しているため、粗挽きカルビ焼きと一緒に竹筒ご飯を注文して食べてみることもお勧めする。

    お店情報

    トクイングァン(徳仁館)

    1963年に「徳仁飲食店」という名前で開業、60年以上営業している店だ。大韓民国食品名人第82号で肉類(カルビ焼き)製造分野の名人として指定されたパク・ギュワンさんが運営する。初期には、伝統カルビをメインにした韓定食を販売していたが、今は粗挽きカルビ焼きの専門店として定着した。名人の秘訣で作ったタレにメスの韓牛カルビを寝かして使うのが特徴だ。

    住所:

    チョンラナム道タミャン郡タミャン邑チュキャンデロ1121

    電話番号:

    +82-61-381-7881

    看板メニュー:

    名人伝統粗挽きカルビ焼き37,000ウォン、
    韓牛LA 粗挽きカルビ焼き 33,000ウォン、
    韓牛粗挽きカルビ焼き 29,000ウォン、
    韓牛薬膳粗挽きカルビ焼き 22,000ウォン

    アクセス:

    タミャン(潭陽)共用バスターミナルより約1.1㎞ /
    クァンジュ(光州)- テグ(大邱)高速道路の潭陽(タミャン)ICより約3.2㎞

    駐車場:

    有(100台)

    席数:

    324席

    メニュー言語:

    韓国語、英語、日本語、中国語

    シンシクタン(申食堂)

    1932年に創業、現在は4代目が継いでいる店だ。メジュ、朝鮮カンジャン、コチュジャンなどを直接作るため、料理からコクのある味がする。

    住所:

    チョンラナム道タミャン郡タミャン邑タムジュ2ギル18-13

    電話番号:

    +82-61-382-9901

    看板メニュー:

    申食堂粗挽きカルビ焼き35,000ウォン、
    竹の子入り粗挽きカルビ焼きの寄せ鍋 40,000ウォン

    アクセス:

    タミャン(潭陽)共用バスターミナルより約800m /
    クァンジュ(光州)-テグ(大邱)高速道路のタミャン(潭陽)ICより約5.5㎞

    駐車場:

    有(30台)

    席数:

    168席

    メニュー言語:

    韓国語、英語、日本語、中国語

    タミャン(潭陽)アプチプ

    タミャン(潭陽)の粗挽きカルビ焼きに麺が付いて出てくることで有名な食堂だ。地元の農産物を活用するのはもちろん、食材本来の味と風味を活かして調理することが特徴だ。ここで粗挽きカルビ焼きを注文すると、洋食のように大きいプレートにサラダ添えの粗挽きカルビ焼きが出てくる。そばとタミャン(潭陽)の竹の葉を使った自家製麺も逸品だ。

    住所:

    チョンラナム道タミャン郡タミャン邑チュキャンムンファロ22

    電話番号:

    +82-61-381-1990

    看板メニュー:

    ハーフ&ハーフ炭火粗挽きカルビ焼き15,500ウォン、
    そば付きタミャン(潭陽)粗挽きカルビ焼き17,000ウォン、
    竹の子とエゴマ油入りそば 14,000ウォン、
    竹の子入りサクサク餃子 12,000ウォン

    アクセス:

    タミャン(潭陽)共用バスターミナルより約980m /
    クァンジュ(光州)- テグ(大邱)高速道路のタミャン(潭陽)ICより約3.1㎞

    駐車場:

    有(10台)

    席数:

    104席

    メニュー言語:

    韓国語、英語、日本語、中国語

    韓国人の慶事と弔事に欠かせない料理、牛肉のチヂミ

    いつ・どこで

    牛肉のチヂミは、四季を通して楽しめる料理だ。ただ、チヂミは焼きたてのものが最も美味しい。

    光州(クァンジュ)には牛肉のチヂミで有名な食堂がたくさんある。



    おもてなしの料理、チヂミ

    かつて、韓国人にとってチヂミはお年寄りの誕生日やソルナル(旧正月)、チュソク(旧盆)、祭祀、葬儀など慶事と弔事の時のみ食べられる料理だった。昔は小麦粉や油、卵など、チヂミの材料が高価だったためだ。特に、油は手に入りづらかったため豚の脂身を溶かして使ったと言われる。

    今は昔に比べてチヂミの材料を手に入れやすくなった。しかし、お客さんのために作るおもてなしの料理だという位置づけは今も変わらない。チヂミは依然として重要な日に作って食べる料理の一つで、今もソルナル(旧正月)や秋夕(チュソク)になるとチヂミを作る家庭がたくさんある。

    韓国でチヂミが慶事と弔事の時に欠かせない料理となったもう一つの理由は、簡単で早く作れるためだ。薄切りにした肉や魚に小麦粉やでんぷんをまぶした後、卵の衣をつけてきつね色になるまで焼けば完成だ。

    クァンジュ(光州)で牛肉のチヂミが有名になった理由

    韓国の伝統市場に行くと、チヂミのお店をよく見かける。しかし、牛肉のチヂミを専門として、その場で焼いてくれる食堂はほとんどクァンジュ(光州)市に集まっている。

    クァンジュ(光州)の牛肉のチヂミの専門店で牛肉のチヂミを注文すると、従業員が材料をテーブルの方に持ってきて上手にチヂミを焼き始める。お客さんはどのような材料で、どのようにチヂミを作るかを目の前で見ることができる。また、焼きたての温かいチヂミを食べることができて、厨房で作られたチヂミをもらうより一段と美味しく食べられる。

    クァンジュ(光州)の牛肉のチヂミは主に韓牛の前すねで作る。前すねは牛の希少部位の一つで、700㎏級の牛1頭から600~700gの塊が4つぐらいしか取れない。肉汁が豊かで脂肪が少ないため人気のある部位の一つでもある。また、 前すねはロイシンを多く含んでいるが、これは体内でタンパク質の合成を促し筋肉分解の抑制にも役立つ。

    牛肉のチヂミを美味しく食べるコツ

    繰り返しになるが、牛肉のチヂミは焼きたての温かいものが最も美味しい。クァンジュ(光州)で牛肉のチヂミが有名になったのは、お客さんのテーブルの前で焼いて出す方法を採択したためだ。

    こんがりと焼けた牛肉のチヂミはねぎの和え物と一緒に食べるのが一般的だ。ピリ辛のねぎの和え物は食欲をそそるとともに牛肉のチヂミの脂っこさも和らげてくれる。牛肉のチヂミの固有の風味を楽しみたいなら、塩をつけて食べることもお勧めする。食堂によっては、淡水エビの塩辛(きれいな淡水でのみ採れるエビで作った塩辛)を出すところもあるが、これも珍味だ。一部の食堂ではカプサアオノリ入りトッククも販売するが、牛肉のチヂミを食べた後のシメにお勧めだ。

    お店情報

    テグァン食堂

    チュンジャンノ(忠壮路)で牛肉のチヂミの美味しい店として有名だったところで、今はサンム(尚武)地区に拡張移転して運営している。高級感のある内装が印象的で、すべてのおかずを直接作っているのが特徴だ。牛肉のチヂミと一緒に食べるメニューとしてはカプサアオノリ入りトッククをお勧めする。

    住所:

    クァンジュ広域市ソ区サンムデロ695ボンギル15

    電話番号:

    +82-62-226-3939

    看板メニュー:

    牛肉のチヂミ29,000ウォン、
    カキのチヂミ 27,000ウォン、
    カプサアオノリ入りトックク6,000ウォン

    アクセス:

    クァンジュ(光州)都市鉄道1号線 金大中コンベンションセンター駅(マルク(馬勒))3番出口より約200m

    駐車場:

    有(50台)

    席数:

    130席

    メニュー言語:

    韓国語、英語、日本語、中国語

    ミミウォン

    クァンジュ(光州)で牛肉のチヂミのお店として最近注目されているところで、様々な番組で紹介され人気を集めている。韓屋風の建物が落ち着いた雰囲気を醸し出す。

    住所:

    クァンジュ広域市トン区ペクソロ218

    電話番号:

    +82-62-228-3101

    看板メニュー:

    牛肉のチヂミ29,000ウォン、
    テナガダコのチヂミ 28,000ウォン、
    ニベのチヂミ 35,000ウォン、
    カプサアオノリ入りトックク 6,000ウォン

    アクセス:

    クァンジュ(光州クァンジュ)都市鉄道1号線 文化殿堂駅(旧都庁)4番出口より約790m

    駐車場:

    有(15台)

    席数:

    80席

    メニュー言語:

    韓国語

    ヨナ食堂

    様々な全羅道(チョンラド)のおかずとともに牛肉のチヂミを食べられる食堂だ。牛肉のチヂミを野菜や熟成キムチに包んで食べると一風変わった味を楽しめる。特に、エゴマ油を入れて混ぜた熟成キムチの香ばしい香りと酸味が食欲をそそる。

    住所:

    クァンジュ広域市ソ区マルッボッケロ147

    電話番号:

    +82-62-384-1142

    看板メニュー:

    牛肉のチヂミ 29,000ウォン、
    イシモチスープ 25,000ウォン

    アクセス:

    クァンジュ(光州)都市鉄道1号線 サンム(尚武)駅(スマート貯蓄銀行駅)1番出口より約430m

    駐車場:

    有(60台)

    席数:

    28席

    メニュー言語:

    韓国語、英語

    もっちりとした脂身とジューシーな赤身の調和、 チェジュ(済州)黒豚

    いつ・どこで

    黒豚は、豚が過ごしやすい季節の春と秋に栄養価が高くて最も美味しい。

    チェジュド(済州島)では至る所で黒豚の専門店をよく見かける。

    韓国の最南端にあるチェジュド(済州島)は、ハルラサン(漢拏山)を中心として恵まれた自然環境やエキゾチックな風景、様々な郷土料理を楽しめる場所だ。韓国最大の島だけに多種多様な海鮮を食べられるところでもある。


    それにもかかわらず、多くの韓国人はチェジュド(済州島)の特産物として迷わず「黒豚」を挙げる。黒豚が島のチェジュド(済州島)を代表する特産物になったのにはどのような背景があるのだろうか。



    海に囲まれたチェジュド(済州島)の特産物が「豚肉」になった理由

    かつて、チェジュド(済州島)は僻地そのものだった。今とは異なりチェジュド(済州島)は大罪を犯したソンビ(士人)を閉じ込める流刑地だった。朝鮮王朝時代の中期以降は、仁祖7年(1629年)にチェジュド(済州島)に下された出陸禁止令のため陸地との往来が一層難しくなった。新たな人生を目指して僻地のチェジュド(済州島)を離れる人々が増えると、彼らを流民とみなして閉じ込めたのだ。200年以上続いた孤立政策はチェジュド(済州島)に独特な食文化を根付かせた。その中でも陸地と差別化される食べ物が黒豚だ。

    チェジュド(済州島)は海に囲まれているが、出陸禁止令によって大きい船を作ることができなかったため、人々は漁業よりは農業や牧畜で生計を立てた。農業の場合、玄武岩のため用水を閉じ込めることができなかったため、水田よりは畑での農業が主力だった。

    そのため、人と同じものを食べる豚を大量に飼育しようとは考えもしなかった。ほとんどの家で1~2頭ほど飼う程度だった。このように飼った黒豚は家の慶事や弔事など特別な日に食べるものとされていた。慶事の時に黒豚を屠畜して様々な料理を作った後、町の人々にお裾分けをする文化は今も尚続いている。

    黒豚で作る多種多様な料理

    チェジュド(済州島)の黒豚の脂身は白豚より水分が少なくてもっちりとした食感が特徴だ。また、肉の組織を構成する筋繊維が白豚より細くて歯ごたえがあり、赤筋が多くて赤身がさらに赤く見える。チェジュド(済州島)の人々は、このような黒豚の特性を最大限に活かして様々な調理法で黒豚の料理を作って食べる。

    「ゆで黒豚」は、茹でた塊の豚肉をそのまままな板にのせて食べやすく切って食べる料理で、「豚の前足の付け根スープ」は豚の肉と骨を長時間煮込んだ濃厚なスープにそば粉を入れ、とろみをつけて煮た料理だ。豚の腸の中にそばとソンジ(牛血)を入れて作ったスンデはチェジュド(済州島)でしか食べられない珍味だ。他に、豚の骨でダシをとったスープに麺を入れて食べる「肉素麺」とホンダワラ(海藻)で作った「豚肉入りホンダワラスープ」もある。最近は、黒豚を叩いて平たくした後、小麦粉や卵、パン粉をつけて揚げる黒豚豚カツも人気を集めている。

    しかし、人々に最も愛されている黒豚の料理はやはり「黒豚肉焼き」だ。炭火で直焼きして、または、鉄板で焼いて食べる黒豚の焼肉はチェジュド(済州島)に行くなら絶対食べてほしい料理だ。野菜に包んで食べるのも美味しいが、黒豚特有の風味を楽しみたいなら、塩をつけて食べることをおすすめする。一緒に出てくるピリ辛い「カタクチイワシの塩辛(ソグィポ(西帰浦)一帯で採れるカタクチイワシを塩に漬けて作ったもの)」につけて食べると豚肉の旨味が一段とアップする。

    黒豚の専門店だけでなく、 チェジュド(済州島)の伝統市場に行っても様々な黒豚料理を味わうことができる。チェジュ(済州)市の東門市場、ソグィポ(西帰浦)市の毎日オルレ市場には黒豚の具が入った焼き餃子、黒豚のキムチ巻き焼き、黒豚の鉄板焼きなど黒豚を使った多種多様な食べ物がいっぱいある。

    在来種の黒豚が残っているところ

    実は、チェジュド(済州島)の食堂で販売される黒豚はほとんど改良種だ。チェジュド(済州島)で在来種の黒豚を販売するところはチェジュ(済州)市ハンギョン(翰京)面にある「連理枝(ヨンリジ)ガーデン」が唯一だ。ここは、約33万平方メートル規模の農場で育てる在来種の黒豚を1日30人前ほどしか販売しない。黒豚の飼育期間を一般的な豚の飼育期間である6か月よりも3倍長い18か月としているため、もっちりとした食感が絶品だ。世界中見ても18カ月間も育ててと畜する豚はチェジュ(済州島)の黒豚とスペインのイベリコ豚以外は見つけられない。

    お店情報

    オンドッジプグクス(丘の家素麺)

    チェジュド(済州島)の昔ながらの方法で丁寧に作られた肉素麺が食べられる。チェジュ(済州)産の豚骨で52時間じっくり煮込んだスープによる濃厚な味が特徴で、具の肉はチェジュ(済州)産の黒豚を真空調理法で7時間調理していてしっとり柔らかい。

    住所:

    チェジュ特別自治道チェジュ市エウォル邑エウォルヘアンロ494

    電話番号:

    +82-70-8657-3107

    看板メニュー:

    肉素麺10,000ウォン、
    混ぜ素麺 10,000ウォン、
    豚肉クッパ 10,000ウォン、
    餃子 6,000ウォン、
    ゆで肉 12,000ウォン

    アクセス:

    イルチュソロ(1132番 地方道)シノム三叉路より約1.5㎞

    駐車場:

    有(6台)

    席数:

    30席

    メニュー言語:

    韓国語、英語、日本語、中国語

    シンチャン黒豚炒め

    済州(チェジュ)産の黒豚を鉄板で炒めた料理を専門とするお店だ。鉄板炒めを注文すると、厨房で一度火を通したものが出てくる。テーブルでは自分の好みに合わせて豆もやしやねぎの和え物を入れてもう一度火を通して食べる。

    住所:

    チェジュ特別自治道ソグィポ市テジョン邑トンイルハモロ182

    電話番号:

    +82-64-792-2292

    看板メニュー:

    黒豚炒め(2人前から注文可能) 10,000ウォン、
    イイダコ炒め(2人前から注文可能) 17,000ウォン、
    ヤリイカ炒め 20,000ウォン

    アクセス:

    テジョン(大静)邑事務所より約290m /
    イルチュソロ(1132番 地方道) テジョン(大静)女子高校前の交差点より約440m

    駐車場:

    有(8台)

    席数:

    30席

    メニュー言語:

    韓国語、英語、中国語

    ヨンリジ(連理枝)ガーデン

    チェジュド(済州島)で在来種の黒豚を販売する唯一の食堂だ。直接、在来種の黒豚を飼育しており、原則として1日に30人前のみ販売する。

    住所:

    チェジュ特別自治道チェジュ市ハンギョン面トゥジョロ190-20

    電話番号:

    +82-64-796-8700

    看板メニュー:

    黒豚(500g) 60,000ウォン

    アクセス:

    ハンギョン(翰京)面事務所より約2.9㎞ /
    イルジュソロ(1132番 地方道)トゥモ三叉路より約2.3㎞

    駐車場:

    有(10台)

    席数:

    24席

    メニュー言語:

    韓国語

    オルレアントゥル

    チェジュド(済州島)の伝統家屋を改装した食堂で、特大の黒豚豚カツで有名だ。手のひら4つくらいの大きさで、2~3人で食べてもお腹がいっぱいになるほどボリューム満点だ。ハンバーガーを作って食べられるようにディナーロールとキャベツサラダなども一緒についてくる。

    住所:

    チェジュ特別自治道ソグィポ市ポパンロ24

    電話番号:

    +82-507-1318-7720

    看板メニュー:

    特大黒豚豚カツ29,000ウォン、
    ピリ辛特大黒豚豚カツ29,000ウォン

    アクセス:

    ソグィポ(西帰浦)バスターミナルより約1.7㎞

    駐車場:

    無(短時間路上駐車可能)

    席数:

    32席

    メニュー言語:

    韓国語

    地域の旬の食材

    五感で楽しむ多彩な春の味、山菜

    いつ・どこで

    雪解けとともに新芽が芽吹き始める春は山菜の季節だ。春が過ぎると山菜独特の香りと味は薄くなる。

    ピョンチャン(平昌)郡内の観光地(スキー場、リゾート、お寺など)付近には、山菜定食を提供する店が多い。伝統市場や農協が運営するハナロマートに行けば、自然のままの無農薬の山菜を買うことができる。

    韓国を初めて訪れた外国人が驚くことのひとつに、どこからでも山がとても近くに見えるという点だ。高層ビルが立ち並ぶソウルはもちろん、海外沿いから近いエリアでも山々が連なる姿を見渡すことができる。このように、山と共存し自然環境を整えてきた韓国において「山菜」が食べ物として発達したことは、至極当然だと言える。



    山菜とは?

    山菜はナムルの一種だ。ナムルは茎や葉を食べる野菜の中でも「調理して食べる植物」のことを指すが、さらに人が栽培するものと自然から採取するものに分けられる。前者は栽培ナムル、後者を山菜という。山菜は「野山に自生する野生植物のうち食べられるもの」を意味する。山菜は栽培ナムルに比べ自然本来の独特な香りと風味が強く、決まった時期にしか採取できない。

    韓国人が山菜を好んで食べる理由

    昔からの伝聞や記録によると、食用山菜の種類は約800種類にも及び、韓国人は昔から野山から草や木を採って食材としてきた。それぞれ独特な香りと味がする山菜は、冬の間に眠っていた味覚を目覚めさせる。

    昔の韓国では、冬場になると青菜が手に入らなかった。春夏秋冬の四季が明確なため、寒い冬には畑を耕したり、山菜を採ることができなかったからだ。キムジャンキムチだけが冬の間に食べられる唯一の野菜だった。そうやって厳しい冬をしのぐと初々しい新芽が生えてくるのだが、真っ先に芽を出すよもぎではスープや餅を作って食べていた。冬の間に不足していたビタミンCをよもぎで補ったわけだ。

    ナズナとヒメニラも初春の山の幸だ。ナズナとヒメニラは軽くゆで、水気をしっかり切ってからゴマ油とカンジャン、おろしにんにくを入れ和え物にするのが一般的だ。テンジャンククに入れる場合には、ひと煮立ちした後、ナズナかヒメニラを入れ、さらに2分程度煮ると出来上がる。ナズナとヒメニラは一緒に調理しても構わない。

    山菜の季節、春

    毎年春が訪れると伝統市場はもちろん、大手スーパーの販売台は様々な種類の山菜で埋め尽くされる。続々と届く旬の山菜が春の訪れを告げる。山菜は暑くなるにつれて徐々に硬くなり、香りと味も薄くなるので、春の間に楽しんでおくのが良い。

    様々な種類の山菜があるが、そのうち代表的なものには行者にんにくの葉、ノアザミ、ニガナ、タンポポ、カノコソウ、ユキザサ、オオバコ、ヒカゲミツバゼリ、ヤマブキショウマなどがある。中でも初春の3月初めに食べられる山菜には「フキ」がある。赤い茎に小さな葉がついているフキは、テンジャンに和えて食べると甘味とともにほのかな苦味がする。茎だけを料理して食べても良いが、手のひらサイズの葉っぱを軽くゆでて野菜包みにすることもでき、真夏になる前まで楽しめる。

    タラの芽も春の味覚の一つで、高麗人参のようにサポニン成分が多く、口に入れると口の中に苦味が広がる。主には枝の先に生えた新芽を採って茹でたり、揚げ物にして食べる。タラの芽はサムギョプサルとも相性が良い。サムギョプサルと一緒にタラの芽を焼いて食べるのもおすすめだ。タラの芽に火を通すと特有の香りが立ち、ほのかな苦味がサムギョプサルの脂っこさを中和してくれる。ウコギ科の植物で「ハリギリの芽」という山菜もあるが、これもまた苦味が魅力的だ。

    エゾウコギの新芽はタラの芽やハリギリよりさらに苦味があり、ほのかな甘味もある。毒性がある漆は、その危険性を知った上で食べる人も多いほど、魅力的な山菜だ。漆にかぶれない人なら、漆の新芽を是非味わってもらいたい。

    山菜が楽しめる所

    国土の70%が山地である韓国では、どこに行っても山菜を味わうことができる。しかし色々な種類の山菜を同時に楽しむにはカンウォン(江原)特別自治道ピョンチャン(平昌)郡が最適だ。ピョンチャン(平昌)にはオデサン(五台山)国立公園をはじめ、テベク(太白)山脈の峰々が連なっている。また2018年平昌冬季オリンピックが開催された地域で、KTX駅があり、ソウルから1時間30分でアクセスできる。ピョンチャン(平昌)の伝統市場やスキー場周辺、オデサン・ウォルチョンサ(月精寺)入口付近には色んな種類の山菜が味わえる食堂がたくさんある。

    山菜の美味しい食べ方

    山菜は冬の終わりごろから春までが旬の時期だ。春を迎え、雪が解けはじめると初々しい新芽が芽生えてくる。韓国人はその新芽に味を付けて和え物にして食べる。テンジャン、カンジャンなどで山菜ナムルを作るが、この時、山菜本来の独特な香りや風味を損なわないように調理するのが重要だ。

    「山菜ビビンバ」や「山菜定食」は山菜料理の定番で、特に山菜ビビンバは山菜料理を取り扱っている店ならどこにでも食べられる。一部の店ではカンウォン(江原)道風テンジャンの「マクジャン (メジュで漬けたジャンを数か月後分離する際にカンジャンの割合を高くしたもの。テンジャンより色が濃く、コク深いのが特徴) 」を添えるところもあるが、その場合には大きい器にご飯とジャンを入れて混ぜて食べればいい。山菜本来の味と香りを楽しむためには、薄味にするのがおすすめだ。山菜定食は多彩な山菜を同時に味わえる料理だ。店によっては、カンウォン地域のもう一つの特産品である蔓人参や干しスケトウダラを味付けして焼き物にした料理も出てくる。

    ちなみに韓国人は山菜が採れない時期に備えて、ナムルを茹でたり、干したりして保管する。それを「ムンナムル」という。新鮮な山菜に比べれば香りは劣るが、うま味が増すのが特徴だ。

    お店情報

    サンドゥンイネ・カビョスル食堂

    鶏肉の水炊きや鶏肉の炒め煮のような鶏肉料理がメインだが、マクジャン(カンウォン(江原)道風カンテンジャン)とコンドゥレナムルを入れ混ぜて食べるコンドゥレナムルご飯も人気。長年愛されてきた店で多くの有名人が訪れ、2018年平昌冬季オリンピックの開催当時は多くの外国人選手が訪れていた店でもある。

    住所:

    カンウォン特別自治道ピョンチャン郡ポンピョン面イヒョソクギル118-8

    電話番号:

    +82-33-336-0609

    看板メニュー:

    コンドゥレナムルご飯 10,000ウォン、
    ハリギリ入り鶏肉の水炊き(4人前)70,000ウォン、
    熟成キムチ入り鶏肉の水炊き(4人前)90,000ウォン、
    地鶏肉の炒め煮(4人前)70,000ウォン、
    漆鶏肉の水炊き(4人前)90,000ウォン

    アクセス:

    ヨンドン(嶺東)高速道路ピョンチャン(平昌)トールゲートより約7.4㎞

    駐車場:

    有(10台)

    席数:

    80席

    メニュー言語:

    韓国語、英語、日本語、中国語

    五台山民俗食堂

    季節によって数十種類の山菜が出てくる山菜定食で有名な店。社長自ら山に登り、山菜やキノコを採取して料理している。自家製のメジュでテンジャンを作ることもある。ウォルチョンサ(月精寺)入り口付近にあるため、ウォルチョンサ観光前後に立ち寄りやすい。

    住所:

    カンウォン特別自治道ピョンチャン郡チンブ面オデサンロ152,9棟1,2階1号

    電話番号:

    +82-33-333-4497

    看板メニュー:

    山菜定食22,000ウォン、
    コンドゥレナムルご飯定食25,000ウォン、
    コンドゥレナムルご飯13,000ウォン、
    干しスケトウダラ焼き定食17,000ウォン

    アクセス:

    ヨンドン(嶺東)高速道路チンブ(珍富)トールゲートより約9.9㎞

    駐車場:

    なし(山門公営駐車場利用可能)

    席数:

    80席

    メニュー言語:

    韓国語

    フンドゥル岩

    ナムルを100余りの調理法で料理し、色んな味を同時に楽しむことができる。刺激的な味付けより、ナムル本来の味と香りを引き立てる調理法で料理している。

    住所:

    カンウォン特別自治道ピョンチャン郡ポンピョン面テギロ1

    電話番号:

    +82-33-334-6788

    看板メニュー:

    フンドゥル岩山菜定食23,000ウォン、
    松葉サバ山菜定食28,000ウォン、
    松葉カンジャンケジャン山菜定食33,000ウォン

    アクセス:

    ヨンドン(嶺東)高速道路ミョノン(錦温)トールゲートより約6.9㎞

    駐車場:

    有(10台)

    席数:

    68席

    メニュー言語:

    韓国語

    レビュー

    ハナロマート

    農協が運営するスーパーで、主に地域内で生産された農畜産物を販売している。ピョンチャン(平昌)の各地にハナロマートがあり、地域内で栽培したナムルや野山で採れた山菜などを買うことができる。

    <テグァンリョン(大関嶺)農協本店>

    住所:

    カンウォン特別自治道ピョンチャン郡テグァンリョン面テグァンリョンロ66

    電話番号:

    +82-33-335-5961

    営業時間:

    08:30~20:00

    駐車情報:

    専用駐車場あり


    <ピョンチャン(平昌)農協本店>

    住所:

    カンウォン特別自治道ピョンチャン郡ピョンチャン邑ペゴロ68

    電話番号:

    +82-33-332-2533

    営業時間:

    08:00~20:00

    駐車情報:

    専用駐車場あり


    <チンブ(珍富)農協中央支店>

    住所:

    カンウォン特別自治道ピョンチャン郡チンブ面チンブジュンアンロ27

    電話番号:

    +82-33-335-8244

    営業時間:

    08:00~21:00

    駐車情報:

    専用駐車場あり

    ポンピョン(蓬坪)在来市場

    ポンピョン(蓬坪)面で5日ごとに立つ5日市で、毎月日付が2、7で終わる日に立つ 。作家イ・ヒョソク(李孝石)の小説『蕎麦の花が咲く頃』の舞台となった場所で、ピョンチャン(平昌)地域の観光地としても有名だ。ポンピョン(蓬坪)の特産品のそばはもちろん、ピョンチャン(平昌)地域で採れた山菜を買うことができる。

    住所:

    カンウォン特別自治道ピョンチャン郡ポンピョン面チャンドン里280-6

    開館時間:

    店舗によって異なる

    駐車情報:

    公営駐車場あり

    ピョンチャン(平昌)オリンピック市場

    ピョンチャン(平昌)バスターミナル付近に立つ5日市。毎月日付が0、5で終わる日に立つが、一部の店舗は随時営業してお客を迎えている。季節ごとに旬の山菜を販売していて、ピョンチャン(平昌)の郷土料理である焼ききび餅やそばチヂミなどが味わえる。

    住所:

    カンウォン特別自治道ピョンチャン郡ピョンチャン邑ハ里55-6

    開館時間:

    店舗によって異なる

    駐車情報:

    公営駐車場あり

    ホームページ:

    https://olympicmarket.modoo.at (韓国語)

    チンブ(珍富)伝統市場

    毎月日付が3、8で終わる日に立つ5日市ピョンチャン(平昌)で開かれる5日市のうち最も規模が大きく、色んな食べ物や物品が揃っている。

    住所:

    カンウォン特別自治道ピョンチャン郡チンブ面ハジンブ里140

    開館時間:

    店舗によって異なる

    駐車情報:

    公営駐車場あり

    口いっぱいに広がる独特で魅惑的な香り、ヤンヤン(襄陽)松茸

    いつ・どこで

    秋に旬を迎えるきのこ。とくに韓国の年中行事のチュソク(秋夕、旧暦8月15日)以降、二週間ほどが、きのこが最も美味しくなる時期だ。

    カンウォン(江原)道ヤンヤン(襄陽)は松茸の産地として広く知られ、松茸の競りが全国で最も盛んに行われる。

    長年の経験が蓄積され、人類が発見した食用きのこの種類は100種類にも及ぶが、中でも最高の美味は松茸だ。特に香りの良い松茸を求めて旅に出たいなら、カンウォン(江原)道ヤンヤン(襄陽)が一番おすすめだ。



    きのこの種類

    食用きのこは大きく二つに分けられる。一つは薬用、もう一つは料理用だ。霊芝とメシマコブは薬用きのこの代表格で、主に煮だして飲むか、韓方の材料として用いられる。料理用きのこは生で食べることもできるが、一般的には様々な料理用に調理されている。秋にカンウォン(江原)道の伝統市場や五日市に行くと、豊富な種類のきのこに出会える。

    ヤンヤン(襄陽)の特産品、松茸の特徴

    きのこは、有機物を無機物に分解して土壌に戻す役割を果たす。きのこが主に枯れ木に腐生するのもそのためだ。だが、松茸はそうではない。松茸は、生きている木と共生する。一般的なきのこの場合、木片やおがくずを入れた樽に種菌を接種して栽培することができるが、生きた木の根の周りに生える松茸は、今のところ人工栽培が難しい。

    松茸は樹齢20年以上の松の木の周辺でしか育たない。そして、しっかり成長するためには、適切な水分と日陰が必要だ。松茸は乾いた松葉の上にほんの少し顔を出すだけなので、慣れていない人にはなかなか見つけづらい。

    松茸は他のきのこに比べて噛みごたえがあり、独特の香りを持つ。下処理をするときは、松茸の香りを保つために水で洗い流さず布で表面の汚れだけを軽く拭き取る。輸入品の場合、土を水で洗い流した後に輸入されるので、韓国産松茸に比べると香りがやや劣る。

    松茸はチュソク(秋夕)の前に採り始め、紅葉が終わったら採取を止める。秋の中でも短い期間しか採取できないため、希少性が非常に高い食材だ。傘が完全に開いていない「中開き」のものが贈答用になり、その価格は100万ウォン以上になることもある。完全に開いた「開き」の松茸は崩れやすいという理由で贈答用として販売されないが、食べる分には問題ない。

    松茸を美味しく食べるためには?

    しゃぶしゃぶは、松茸の美味しさを最大限に引き出せる調理法といえる。松茸を提供する店でしゃぶしゃぶを注文すると、野菜と様々なきのこの入った鍋で出されるが、たくさんの野菜を入れて煮込んだ出汁に、松茸と肉を入れ、軽く湯通しするだけで食べられる。すべての具材を食べ終わったら、松茸と肉の香りが染みこんだスープで、お粥、チャーハン、カルグクスなどを作って食べると二度美味しくなる。

    松茸をしっかり味わうもう一つの方法は、鉄板で牛肉と一緒に焼く方法だ。牛肉から出た脂で松茸を焼くと、その食感と香りが倍増する。松茸を比較的リーズナブルな値段で食べたいなら、薄くスライスした松茸をご飯の上に乗せて炊いた「松茸釜飯」を食べてみよう。松茸の香りがほのかにご飯に染み込んでいて、あまりの美味しさに思わず膝を打つはずだ。

    ヤンヤン(襄陽)で出会える様々なきのこ類

    秋になると、ヤンヤン(襄陽)の市場でよく見かけるきのこはホウキタケとコウタケだ。ホウキタケは、ほうきのような形が特徴で、毒性があるので塩水に長時間浸けてからでないと食べることができない。コウタケはほのかな香りともっちりした食感が魅力的で人気が高い。コウタケも塩水で茹でた後、スープに入れて煮込んで食べる。

    お店情報

    トゥンブルガーデン

    松茸とヤンヤン(襄陽)韓牛の組み合わせを堪能でき、アメリカのポップシンガーで音楽プロデューサーのカニエ・ウェストが訪れたこともある。毎年秋になると韓牛の特殊部位や霜降りロースなどを天然松茸と一緒に焼いて食べることができる。松茸入りの韓牛プルゴギと寄せ鍋も人気メニュー。肉は常時食べられるが、松茸は天然松茸が採れる時期のみ味わえるので、訪れる際には参考にしておこう。

    住所:

    カンウォン特別自治道ヤンヤン郡ヤンヤン邑ポウォルナドゥルギル23

    電話番号:

    +82-33-671-1500

    看板メニュー:

    天然松茸の寄せ鍋60,000ウォン、
    韓牛特殊部位(150g)55,000ウォン、
    韓牛霜降りロース(180g)55,000ウォン

    アクセス:

    ソウルヤンヤン(襄陽)高速道路・ヤンヤン(襄陽)料金所から約6.5㎞ /
    ヤンヤン(襄陽)総合旅客ターミナルから約2.5㎞

    駐車場:

    あり(15台)

    席数:

    120席

    メニュー言語:

    韓国語、英語、日本語、中国語

    ソンイマウル(松茸村)

    松茸の寄せ鍋に韓牛を加えたしゃぶしゃぶなど、松茸料理をメインに提供している。しゃぶしゃぶのシメにはカルグクスの麺を追加することができ、松茸と韓牛の濃厚な出汁がカルグクスと相性抜群だ。

    住所:

    カンウォン特別自治道ヤンヤン郡ヤンヤン邑ウォル里339

    電話番号:

    +82-33-672-3145

    看板メニュー:

    松茸の寄せ鍋30,000ウォン、
    コウタケの寄せ鍋(2名様から注文可能)28,000ウォン

    アクセス:

    ソウルヤンヤン(襄陽)高速道路・ヤンヤン(襄陽)料金所から約5.8km

    駐車場:

    有(50台)

    席数:

    45席

    メニュー言語:

    韓国語、英語

    タルレチョン

    ハウォルチョン(下月川)里住民が営農組合法人を設立・運営している癒しのテーマパークで、飲食店や団体向け宿泊施設、各種体験プログラムを備えている。飲食店では、様々な韓方の材料やきのこ、山菜などが全部味わえる「名品御膳」シリーズを提供している。自然から採取した色とりどりの山菜が並び、独特の味と風味を楽しめる。フィンランド式サウナの設備があり、食事をしなくても乾式サウナ体験ができる。

    住所:

    カンウォン特別自治道ヤンヤン郡ヨンナム面ファサンチョンロ634

    電話番号:

    +82-33-673-2201

    看板メニュー:

    名品松茸の釜飯33,000ウォン

    アクセス:

    トンヘ(東海)高速道路ナムヤンヤン(南襄陽)料金所から約7.9㎞

    駐車場:

    有(20台)

    席数:

    72席

    メニュー言語:

    韓国語

    レビュー

    ヤンヤン(襄陽)松茸サケ祭り

    毎年10月、ヤンヤン(襄陽)ナムデチョン(南大川)一帯で開催。松茸とサケの試食ができる食体験プログラムや、ナムデチョン(南大川)でのウォータースポーツが楽しめる。会場では、ヤンヤン(襄陽)をテーマにした写真、絵画、詩などの展覧会が行われ、夕方には多彩な公演が行われる。

    開催時期:

    毎年10月

    開催場所:

    カンウォン特別自治道ヤンヤン郡ナムデチョン(南大川)河川敷、多目的広場、ヤンヤン(襄陽)市場など

    入場券:

    プログラム:

    松茸・サケ試食体験、ウォータースポーツ体験、写真や絵の展覧会など

    ヤンヤン(襄陽)伝統市場

    毎月4と9の付く日に立つ五日市と常設市場が併設されており、約200店が軒を連ねている。山菜ビビンバ、大根の水キムチ入り混ぜそばなど様々な郷土料理を販売しており、秋には野生きのこも味わうことができる。

    住所:

    カンウォン特別自治道ヤンヤン郡ヤンヤン邑ナンムン5ギル9

    開館時間:

    09:00~18:00(店舗ごとに異なる)

    駐車情報:

    ヤンヤン(襄陽)伝統市場公営駐車場を利用

    6年の歳月を経てようやく出会える貴重な食材、クムサン(錦山)高麗人蔘

    いつ・どこで

    秋(9月~11月)は、高麗人蔘の収穫時期だ。この時期にクムサン(錦山)国際高麗人蔘市場を訪れると、業者や一般客たちで非常に賑わっている。

    チュンチョンナム(忠清南)道クムサン(錦山)地域は高麗人蔘の韓国最大の生産地として知られている。この地域にはクムサン(錦山)国際高麗人蔘市場、クムサン(錦山)生高麗人蔘センターなど、高麗人蔘や紅参、様々な韓方材料を扱う大規模な市場がある。市場周辺には高麗人蔘天ぷら、サムゲタン、韓定食などを専門とする飲食店が集まっている。

    韓国で栽培される作物の中には、食材よりも薬の材料としての価値が高いものがある。高麗人蔘、ツルニンジン、桔梗の根などが代表的なものだ。これらは他の作物に比べて栽培期間がかなり長いという特徴を持つ。特に高麗人蔘は、6年以上育てなければ薬用としての価値が低い。丹精込めて収穫された高麗人参は、薬用または食用として広く利用される。



    野生の高麗人蔘を栽培するまで

    韓国では野生の高麗人蔘を「山蔘」と呼ぶ。高麗人参の栽培が本格的に行われる前の「高麗人蔘」は、つまり野生の状態の高麗人蔘だった。野生の高麗人参は希少で値段が高く、自然の状態で長年生育する必要があるため薬効が栽培の高麗人蔘より良いと言われている。

    韓半島の高麗人蔘は、三国時代から周辺諸国に輸出されていた。百済人蔘、新羅人蔘という名前で呼ばれ、贈答品や交易品として人気が高かったという記事が『三国史記』、『買新羅物解』などに記されている。高麗時代になると、その交易量が飛躍的に増え、高麗人蔘の栽培を始めるに至った。山に高麗人参の種を蒔いて「山養蔘」を栽培したのだ。

    朝鮮時代になると、畑で高麗人蔘を栽培するようになった。野生の高麗人蔘と山養蔘だけではまったく需要に追い付けなかったからだ。1541年(中宗36年)、プンギ(豊基)郡守に任命されたチュ・セブン(周世鵬)がヨンジュ(栄州)市プンギ(豊基)邑イムシル村の畑で高麗人蔘を試験的に栽培したのが高麗人蔘の畑栽培の始まりと言われている。

    高麗人参を栽培するには、可能な限り自然での生育条件を再現することが重要なカギとなる。高麗人参は日陰でしか育たないので、日差しをしっかり遮る必要がある。昔は木の枝を編んで日陰を作ったが、現在は黒い布をかぶせて遮っている。韓国の田舎を通るとき、高さ約1mのところに黒い布が畑を覆っている場所を見かけたら、高麗人蔘を栽培していると考えてもほぼ間違いない。

    韓国の高麗人蔘の中心地、クムサン(錦山)

    高麗人参は北緯36~38度の地域でよく育ち、韓国の中部地域をはじめ、中国、日本、アメリカ、カナダ、ネパールなどで主に生産される。中でも韓国で栽培される高麗人蔘は、薬効が優れていることで知られている。高麗人参の薬効を測定する際に主要指標となるのが、サポニン類の含有量だが、これが他の地域のものに比べて2~3倍多い。

    韓国の高麗人参の主産地は、キョンギ(京畿)道パジュ(坡州)、インチョン(仁川)カンファ(江華)、キョンサンブク(慶尚北)道プンギ(豊基)、そしてチュンチョンナム(忠清南)道クムサン(錦山)だ。中でもクムサン(錦山)は、高麗人蔘の流通の中心地でもあり、韓国における高麗人参の最大産地として知られている。全国最大規模の高麗人蔘卸売市場があり、市場周辺には高麗人蔘をはじめとする韓方薬特有の匂いが漂ってくるほどだ。市場の周りには高麗人蔘や紅蔘、各種薬材を扱う店が軒を連ねている。高麗人蔘卸売業者が集まるクムサン(錦山)生高麗人蔘センターを訪れると、4年根から6年根まで様々な高麗人蔘を購入することができる。

    国連の食糧農業機関(FAO)は、2018年にクムサン(錦山)の伝統的な高麗人蔘栽培農業を世界重要農業遺産システム(通称、世界農業遺産)に登録した。世界農業遺産に認定されるには、食料安全及び生計保障、農業生物の多様性、地域的かつ伝統的な知識体系、文化・価値体系、社会組織、景観特性などを綿密に検討されるが、クムサン(錦山)高麗人蔘は、特に伝統性と環境にやさしい農法面で国際的に認められた。

    高麗人蔘の種類

    上質な高麗人蔘を上手に選ぶためには、各商品の名称を正しく知る必要がある。生高麗人蔘は未加工の高麗人蔘で、白蔘は生高麗人蔘を乾燥させた後、体積を減らして保存期間を増やしたものをいう。白蔘は、曲がり具合によって直蔘、曲蔘、半曲蔘などに分けられる(味や栄養素の違いはない)。生高麗人蔘を蒸した後に乾燥させて赤くしたものが紅蔘であり、紅蔘を何度も蒸して乾燥させる過程を繰り返したものが黒蔘だ。

    韓国の中であれば高麗人蔘の種類を自由に選んで消費することができるが、海外に持ち出す場合は加工品である紅蔘を購入する必要がある。紅蔘を選ぶときは、紅蔘以外の成分が少ないものを選ぶと良い。紅蔘成分が100%に近いほど価格が高く、効能にも優れている。

    高麗人蔘を使った様々な料理

    高麗人蔘を使った料理の中で最もポピュラーで万人受けする料理はサムゲタンだ。サムゲタンは鶏肉にもち米、高麗人蔘、ナツメ、栗、キバナオウギなど様々な薬材を入れてじっくり煮込む料理で、料理名の「サム」は高麗人蔘の「蔘」に由来する。クムサン(錦山)のサムゲタンには他の地域のサムゲタンに比べて高麗人参がたっぷり入っており、高麗人蔘の苦味が強くないので食べやすい。

    サムゲタンの作り方

    - 材料:サムゲタン用の鶏1羽(500g前後)、もち米(100g)、高麗人蔘(1本)、ニンニク(6~8片)、長ネギ(少し)、サムゲタン用の韓方材料

    ①もち米は1時間ほど水に浸ける。

    ②きれいに洗った鶏のお腹に水に浸けたもち米を入れる。

    ③水1.5Lを沸騰させる。この時、サムゲタン用や鶏肉の水炊き用の韓方材料があれば一緒に入れて煮る。

    ④沸騰したらニンニクと鶏肉を入れて1時間30分弱火でじっくり煮込む。

    ⑤最後に長ネギを刻んで入れると完成。


    クムサン(錦山)の伝統市場や高麗人蔘通り、高麗人蔘を扱う飲食店であればどこでも高麗人蔘天ぷらを味わうことができる。韓方材料を揚げて食べるという発想が奇抜だと思われるかもしれないが、高麗人参の風味をうまく生かしたレシピの一つといえる。揚げる前の高麗人蔘は苦味が強いが、揚げた後は甘味が増すからだ。チュンチョン(忠清)道地域の郷土料理の一つである魚粥には、高麗人蔘をすりおろして調味料のように使うこともある。高麗人蔘を抽出してつくった紅蔘キャンディーや紅蔘ラテなど、高麗人蔘のおやつも人気が高い。

    クムサン(錦山)高麗人蔘をもっと多彩に楽しむ方法

    クムサン(錦山)高麗人蔘館では、高麗人蔘栽培の歴史、高麗人蔘の主成分に関する説明、そして高麗人蔘料理に関する情報などを得ることができる。そしてクムサン(錦山)郡が運営するホームページ「高麗人参(https://www.geumsan.go.kr/jp/)※日本語、韓国語、英語、中国語、ベトナム語」にアクセスすると、高麗人蔘のその日の相場や情報について知ることができる。

    クムサン(錦山)では、高麗人蔘をテーマにした2つの祭りが開かれている。7月開催のクムサン(錦山)サムゲタン祭りと10月開催のクムサン(錦山)世界高麗人蔘祭りだ。クムサン(錦山)サムゲタン祭りは、最も暑い「三伏」の時期に開催される。初伏、中伏、末伏が含まれる約20日間は暑さのピークで、韓国では夏の疲労回復のために強壮食品を食べる習慣があるが、サムゲタンは滋養強壮食品の代表格だ。高麗人蔘は、サムゲタンに欠かせない材料なので、高麗人蔘の主産地であるクムサン(錦山)では、2021年からこの祭りを開催している。

    また毎年10月初旬、高麗人蔘の新芽が出る時期に開かれるクムサン(錦山)世界高麗人参祭りでは、クムサン(錦山)で高麗人参を栽培できるようにしてくれた山の神に感謝をささげ、豊作を祈願するための祭祀を行う。さらに高麗人蔘掘り体験、各種伝統遊戯など、様々なプログラムも用意されており、高麗人蔘直売所、国際高麗人蔘交易展、輸出商談会なども開催される。

    お店情報

    クムサン(錦山)元祖キムジョンイサムゲタン

    クムサン(錦山)高麗人蔘市場で購入した高麗人蔘を煮込んだサムゲタンを味わえる。ナツメ、川芎(せんきゅう)など様々な食材と鶏肉を一緒に入れて1時間かけて煮込んだサムゲタンは、地元民はもちろん、クムサン(錦山)高麗人蔘市場を訪れる人々にも長年愛されてきた。アワビ、コウタケ、冬虫夏草など様々な材料が入ったサムゲタンも味わえる。

    住所:

    チュンチョンナム道クムサン郡クムサン邑インサムヤクチョロ33 テウォン商店街2階

    電話番号:

    +82-41-752-2678

    看板メニュー:

    特上アワビ入りサムゲタン26,000ウォン、
    冬虫夏草入りサムゲタン21,000ウォン、
    コウタケ入りサムゲタン19,000ウォン、
    特上サムゲタン19,000ウォン、
    元祖サムゲタン15,000ウォン

    アクセス:

    トンヨン(統営)・テジョン(大田)高速道路・クムサン(錦山)
    料金所から約4㎞ /クムサン(錦山)ターミナルから約1.7㎞

    駐車場:

    無し(道の反対側にわたってクムサン(錦山)水産センター無料公共駐車場を利用)

    席数:

    140席

    メニュー言語:

    韓国語、英語、日本語、中国語

    チョゴク食堂

    クムサン(錦山)高麗人蔘入り魚粥村の入り口にある。クムガン(錦江)流域の郷土料理の一つである魚粥にクムサン(錦山)の特産品の高麗人蔘が入っており、独特の風味が楽しめる。高麗人蔘天ぷらとともにクムガン(錦江)流域でよく食べられる「揚げ出しオイカワの煮物」(淡水魚をフライパンに沿って丸く並べて煮込んだ料理)、淡水魚の辛味スープも味わえる。

    住所:

    チュンチョンナム道クムサン郡チェウォン面クムガンロ286

    電話番号:

    +82-41-752-7350

    看板メニュー:

    高麗人蔘入り魚粥9,000ウォン、
    高麗人蔘天ぷら15,000ウォン

    アクセス:

    トンヨン(統営)・テジョン(大田)高速道路・クムサン(錦山)
    料金所から約4.2㎞ /クムサン(錦山)ターミナルから約7.7㎞

    駐車場:

    有(10台)

    席数:

    40席

    メニュー言語:

    韓国語、英語、日本語、中国語

    レビュー

    クムサン(錦山)サムゲタン祭り

    夏の強壮食品として親しまれているサムゲタンをテーマに、クムサン(錦山)高麗人蔘入りサムゲタンをはじめ、薬草体験や暑さを吹き飛ばす水遊び場など様々なプログラムが運営されている。

    開催時期:

    毎年7月末

    開催場所:

    チュンチョンナム道クムサン郡クムサン邑インサムグァンジョンロ30

    入場券:

    体験・展示館:

    クムサン(錦山)サムゲタン販売コーナー、クムサン(錦山)薬膳料理コーナー、クムサン(錦山)薬草体験館、大型水遊び場

    体験プログラム:

    家族連れで夏文化体験(夏の扇子作り、花茶作り、リサイクル手芸教室など)、料理教室、公演など

    クムサン(錦山)高麗人蔘館

    高麗人蔘の歴史、効能、栽培過程、高麗人蔘が使われる料理、高麗人参の加工品などを紹介する展示館だ。

    住所:

    チュンチョンナム道クムサン郡クムサン邑インサムグァンジョンロ30

    電話番号:

    +82-41-750-2934

    開館時間:

    09:00~18:00(1月1日、ソルナル(旧暦1月1日)・秋夕(旧暦8月15日)当日は休館日)

    入場券:

    無料

    プログラム:

    高麗人蔘産業、高麗人蔘料理、高麗人蔘の歴史などについて展示

    駐車情報:

    あり(40台)

    クムサン(錦山)国際高麗人蔘市場

    1986年から運営されている高麗人蔘などの薬材市場だ。高麗人蔘のみならず、高麗人蔘シロップや高麗人蔘ゼリーなど、高麗人蔘を使った加工品も販売している。様々な韓方材料を扱うお店も多い。毎月2と7の付く日に市場が立つが、一部のお店はそれ以外の日にも営業している。

    住所:

    チュンチョンナム道クムサン郡クムサン邑インサムヤクチョロ45

    開館時間:

    9:00~19:00(店舗ごとに異なる)

    駐車情報:

    市場駐車場を利用(60台)

    クムサン(錦山)世界高麗人蔘祭り

    1,500年前、山の神のおかげで高麗人蔘の栽培に成功したという伝説を祝うため、行われている。山の神に感謝し、高麗人蔘の豊作を祈願する祭祀を行うなど、高麗人蔘関連の様々な体験プログラムが行われる。

    開催時期:

    毎年10月

    開催場所:

    チュンチョンナム道クムサン郡クムサン邑インサムグァンジョンロ30

    入場券:

    プログラム:

    高麗人蔘掘り体験、高麗人蔘アート体験、健康講座、家族向け伝統遊戯体験、高麗人蔘商店街、ロボット公演、韓服体験、国際高麗人蔘交易展及び輸出商談会など

    ホームページ:

    www.insamfestival.co.kr (韓国語、英語、日本語、中国語)

    冬の味覚を味わう、トリガイ

    いつ・どこで

    12月から5月にしか食べられないトリガイは、西海岸の水温が最も低い12~3月が一番美味しい。

    チュンチョンナム(忠清南)道ホンソン(洪城)郡のナムダンハン(南塘港)の前にあるナムダンハン海洋水産複合空間には60店舗以上のトリガイ専門店が集まっている。またナムダンハンの向こう側にも大型トリガイ専門店が立ち並んでいる。

    東、西、南の三面が海で囲われている韓国は、東海岸には砂干潟が、南海岸には細砂または泥干潟が、西海岸には砂と泥が混ざった干潟が広がるなど、それぞれ異なる生態系で成り立っている。


    韓国の干潟には多種多様な貝が生息しているが、干潟の環境によって生息する貝の種類も異なる。チョンラナム(全羅南)道ヨス(麗水)市とスンチョン(順天)市でとれるハイガイはきめ細かい泥干潟で生息し、韓国各地でとれるアサリは、粒子の細かい泥干潟や小さな石や砂が混ざった砂干潟が主な生息地だ。トリガイは砂と泥が混ざっていて、なかでも泥の割合がやや高い環境で生息する。



    チュンチョンナム(忠清南)道のトリガイが有名になった理由

    毎年、冬になるとトリガイ祭りが開かれるチョンスマン(浅水湾)一帯は本来トリガイの主産地ではなかった。粒子の細かい泥干潟ではなく、砂が多い砂干潟だったためだ。しかしチョンスマン一帯の開発によって、干潟環境にも変化が生じた。ソサン(瑞山)市に建設されたソサンA地区防潮堤、ソサンB地区防潮堤で潮の流れが変わったのだ。

    防潮堤の建設工事によって潮の流れが寸断され干潟には徐々に泥が堆積されるようになり、それに伴う生息環境の変化は生態系にも影響を及ぼした。防潮堤が建設される前まで生息していたカキは徐々に姿を消し、トリガイがその代わりとなった。このような変化によってチョンスマンはトリガイの主産地となった。(東亜日報『西海岸の生態系に変化』1988年1月19日、11面)

    *チョンスマン(浅水湾):チュンチョンナム(忠清南)道にある南北に長い湾で、東はソサン(瑞山)市、ホンソン(洪城)郡、ポリョン(保寧)市に、北と西はテアン(泰安)郡のテアンバンド(泰安半島)/アンミョンド(安眠島)に面している。

    トリガイの食べ方

    活けトリガイの殻を開けると鳥のくちばしのような形状をした身が見えることから「トリガイ」という名前が付けられた。身を取り出し砂泥が入っている内臓を取り外せば、下ごしらえは完了。トリガイのむき身で甘辛いトリガイの刺身の和え物にするのも良いが、最も美味しい食べ方はやはりしゃぶしゃぶだ。

    チュンチョンナム(忠清南)道ホンソン(洪城)郡 ナムダンハン(南塘港)一帯にはトリガイ専門店が多い。そこでトリガイしゃぶしゃぶを注文すると(通常、1㎏単位で販売)色んなおかずがついてくる。具材を食べ終わってから、スープにカルグクス麺を入れたり、チャーハンにして食べるシメも欠かせない。

    トリガイしゃぶしゃぶのだし汁には色んな野菜とカタクチイワシ、昆布が凝縮されている。だし汁にコクを出すだめにシオフキガイやアサリなどを加えることもある。スープが沸騰したら、次はトリガイの番だ。一度に全部入れるより、一つずつ軽く火を通して食べるとさらに美味しく味わえる。10秒以上火を通すと食感が固くなり、甘味が汁に抜けてしまうため、8秒ほどで湯引くとぷりぷりな食感が楽しめるだろう。

    はじめはソースを付けずにトリガイ本来の味を楽しんでから、チョジャンにつけて食べるのがおすすめ。トリガイを頼むとホタテガイやアカガイなど、おまけがついてくることも。店によってはイイダコを出すところもあるが、イイダコもまた冬を代表する味覚で、トリガイのようにさっと茹でて食べると柔らかい食感が楽しめる。

    トリガイを食べ終わったら、シメにはカルグクス、うどん、ラーメンなどの麺を入れてみよう。トリガイのスープにはカルグクス麺が好相性。2人なら1玉、3人以上なら2玉もあれば十分だ。トリガイの風味がしっかり染みついたスープで、贅沢なカルグクスが楽しめる。

    レビュー

    ホンソン(洪城)ナムダンハン(南塘港)トリガイ祭り

    トリガイが旬を迎える1~2月に開催され、開幕式、公演、トリガイ体験など、 多様な見どころや楽しみ方が用意されている。全店舗一律料金なのが特徴。

    開催時期:

    毎年1月中旬~2月初旬

    開催場所:

    チュンチョンナム道ホンソン郡ソブ面ナムダンハンロ213ボンギル1-1(ナムダンハン一帯)

    入場券:

    プログラム:

    開幕式、イベント公演、トリガイ殻むき体験

    ナムダンハン(南塘港)海洋水産複合空間

    トリガイをはじめ、ナムダンハン(南塘港)でとれた新鮮な海鮮をその場で味わえる店が集まっている。

    住所:

    チュンチョンナム道ホンソン郡ソブ面ナムダンハンロ213ボンギル1

    開館時間:

    店によって異なる

    駐車情報:

    ナムダンハン(南塘港)公営駐車場(200台、無料)

    プサン(釜山)で楽しむ美食ツアー、ふぐ

    いつ・どこで

    ふぐは一年中とれる食材だが、旬を迎えるのは冬だ。産卵期の春と夏に備えて、産卵期前の冬に栄養を蓄えるからだ。ふぐスープに入れる具材の代表格 、セリの旬も11~3月なので、この時期のふぐスープが一番美味しいと言われる。

    以前のプサン(釜山)では、ふぐは魚市場があるナムポ(南浦)洞やチャガルチ市場一帯でしか買えなかった。しかし今はプサン(釜山)各地に色んなふぐ料理専門店がある。

    ふぐは気軽に味わえる食材ではない。正確に言うと誰にでも料理できる食材ではない。致命的な毒がある魚だからだ。ふぐは内臓と肝、卵、血液などに「テトロドトキシン」という猛毒を持つ魚で、間違って摂取すると深刻な状況に至ることもあるため、さばくには「ふぐ調理機能師」の免許が必要だ。


    美味しいふぐを食べるにはプサンを訪れるのがおすすめ。プサン(釜山)は日本の影響を受けた漁師と調理師が昔からふぐを取り扱っていた地域で、他の地域に比べてふぐ料理専門店が多い。またプサン(釜山)や南海岸でとれたふぐが、需要が多いプサン(釜山)に集まるため新鮮なふぐが手に入りやすいという長所もある。



    ふぐの種類

    色んな種類のふぐの中で、韓国で高級食材とされるのはカラスフグ、トラフグ、メフグだ。カラスフグとトラフグは見た目が類似しているため、種の同一性をめぐる様々な議論があったが、最近の研究結果により同種であることが明らかになった。

    カラスフグの成魚は体長50㎝位で、背面は黒く、腹面は白い。体は丸みを帯び、臀ビレになるほど細い。また全てのひれが黒いのが特徴だ。トラフグの体長は40㎝前後でカラスフグより小さい。背面に多数の黒い斑点があるのが特徴だ。メフグは回遊性魚類(産卵場と生息地を往復する魚種)で主に河口でとれる。腹側に黄色のラインがあるのが特徴。

    カラスフグより大きいシマフグもよく見かける。背側は青黒く、白い帯が走っているが、その様子がカササギに似ていることから韓国では「カチ(カササギ)ボク」と呼ばれている。シマフグは主に養殖ものが流通されていて、輸入量が多い魚種でもある。シマフグの評価がカラスフグやトラフグより低いのは、比較的に手に入りやすいためだが、その味は劣らない。シマフグも高級魚の一つと言える。

    ナシフグ、ヒガンフグもプサン(釜山)やキョンサンナム(慶尚南)道地域でよく食べる魚種だ。カラスフグとトラフグに比べ小さく、漁獲量が多い。プサン(釜山)ではナシフグのことを「ミルボク」と呼んでいて、主にふぐスープの食材として使っている(本来のミルボクは別の種類)。体長は30㎝程度で、背面と腹面の間には黄色のラインがあり、背面の褐色の部分には白い斑点が数多く入っている。ヒガンフグは成魚で35㎝程度になる魚で、褐色の背面には多数の黒褐色の斑点が散らばっている。白い腹面には黄褐色の縦線がある。

    よくチョルボクと呼ばれる「クサフグ」は、食用としているふぐの中では最も小さい魚種で、数匹を入れてスープにすることが多い。

    ふぐ料理の楽しみ方

    ふぐは主にスープとお粥にすることが多いが、刺身や揚げ物にして食べても美味しい。店や調理師、メニューによって使うふぐの種類も異なってくる。

    ふぐ料理で最も大衆的なものは「ふぐスープ」で、店によってだし汁のとり方はそれぞれ異なる。ベースとなる昆布だしにふぐと豆もやし、セリなどを入れて煮込むのが一般的だが、一部の店では白菜を入れるところもある。ふぐスープは澄まし汁で楽しむことが多いが、辛いものが好みなら辛味スープを頼むこともできる。

    ふぐスープを食べるときには、お酢を2~3滴加えてみよう。お酢を加えるとふぐの生臭さを抑え、味のバランスを整えてくれる。ふぐスープは主に土鍋に出てくるのでかなり熱いが、スープを口に入れた瞬間、なぜか 「シウォナダ」と感じることが多い。「シウォナダ」という言葉には色んな意味があるが、この場合には物理的な温度を表す「涼しい」という意味ではなく、さっぱりしたスープを飲んで感じる「爽快感」に近い。韓国人が熱いものを食べて「シウォナダ(시원하다)」と言うのは、そういうわけだ。

    ふぐスープを頼むと色んなおかずがついてくるが、その中で特に面白いのはふぐの皮だ。ふぐの皮は表と裏が異なり、表には派手な柄と小さな突起があり、裏にはコラーゲンでできた層がある。ふぐの皮を食材として使う場合には、皮の内側を剥いて使用するが、冷やして調理するとコリコリとした歯ごたえが感じられる。一部の店ではふぐの皮のコラーゲンを使って煮こごりを作るところもあるが、これもまた魅力的な逸品だ。ご飯を大きな器に入れて提供する店もあり、その場合にはふぐスープから具材の豆もやしとセリを取り出してご飯と一緒にビビンバにして食べればよい。

    お店情報

    クムスポックク ヘウンデ(海雲台)本店

    『ミシュランガイドソウル&釜山2024』の「セレクテッドレストラン(良い料理を提供するレストラン)」に選ばれた食堂。1970年に開業し、50年以上の歴史を持つ老舗だ。4種類のふぐから一種類選び、ふぐスープを注文することができる。ふぐの種類によって異なる味と食感を楽しめる。

    住所:

    プサン広域市ヘウンデ区チュンドン1ロ43ボンギル23

    電話番号:

    +82-51-742-3600

    看板メニュー:

    活けカラスフグスープ50,000ウォン(特上65,000ウォン)、
    活けカラスフグの辛味スープ51,000ウォン(特上66,000ウォン)、