韓国人がこよなく愛する粉食
無性に食べたくなる思い出 のグルメ

幼少期や中学・高校時代によく食べた粉食を、思い出す時がある。美味しくリーズナブルな価格の粉食は、懐寂しい中学生や高校生にとって最高の御馳走だった。 気前の良い粉食のお店の人が溢れんばかりに盛り付けてくれた一杯のトッポッキを食べて満腹になり、友だちと長い時間おしゃべりをした。 決まった味を再現するチェーン店の粉食のお店が主流になっている今、学校前にあった小さな粉食のお店を懐かしむ人が多いのも、そんな思い出を共有しているからだろう。 長い間、思い出のグルメとして韓国人の味覚を魅了し続けた粉食をご紹介しよう。
粉食誕生秘話
韓国語の粉食(プンシク)は、小麦粉で作った料理という意味。昔韓国で小麦粉はなかなか手に入らない高級食材だったため、素麺のような粉食は上流階級の人のみ食べられるものだった。 ところが1950年代前後に韓国でも輸入品の小麦粉が大量に流通するようになり、自然と小麦粉の値段が下がった。 その過程で素麺やカルグクス、すいとんなど小麦粉で作る料理が広まり、粉食という言葉が流行り出した。 その後、トッポッキ、天ぷら、スンデのような安価で手軽に小腹を満たすいろいろな種類の粉食が登場し、これらのメニューが粉食の主流となった。
粉食の王様「トッポッキ」
粉食のお店で欠かせないメニューは何といってもトッポッキだ。トッポッキはトクと練り物、ねぎなどを味付けして炒めたり煮たりする料理で、一般的には煮汁がほとんどなくなるまで煮込む。 最もポピュラーなトッポッキは、コチュジャンを入れる赤いトッポッキで、辛味と甘味が引き立つ。トッポッキのメイン材料のトクは、成分によって小麦粉でつくる小麦粉トクと米粉でつくる米粉トクに分けられるが、どちらが美味しいかは、喧々諤々の大論争が起きるほど、好みによってその魅力ははっきりと分かれる。 小麦粉トクは味が良く染みて溶けにくく、塩気とぷりぷりの食感が特徴で、一方、米粉トクは米固有のコクともっちりとした食感が特徴だ。
トッポッキは、朝鮮時代末期の料理書『閨壺要覧』と『是議全書』にもその原形が見られる。これらの本では、炒めたトクに様々な野菜と肉を入れて醤油で味付けする宮中トッポッキについて紹介されている。 宮中トッポッキは宮廷で食べられていた高級料理で、現在の赤いトッポッキが一般に広まるようになった今ではマイナーな料理となった。宮中トッポッキは主に韓国の伝統料理の専門店で味わうことができる。
トッポッキは進化を続け、新しくなっている。ジャージャー、クリーム、ロゼなどのソースをからめた新しい味のトッポッキが人気を集めている。 それでも韓国人が最も愛するトッポッキは、やはり甘辛のコチュジャントッポッキだ。